『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
達人の鉄道利用術
ちょっとした達人テクであなたも快適&ラクラク鉄旅しよう!
山奥から市街地まで全国各地に点在する日本の温泉ですが、
駅ナカや駅近くにあるものも少なくありません。
温泉に浸かり、駅弁やお酒も味わうなど、駅の温泉に立ち寄れば鉄道の旅がより楽しくなります。
旅の疲れも和らげる「駅と温泉」をマスターしましょう。
全国各地に温泉が湧く日本。鉄道でもアクセスしやすい温泉地も数多くある。なかでも鉄道ファンにおすすめなのが、駅構内や駅近くにあり、気軽に立ち寄れる温泉だ。うまく活用すれば、移動の途中で心身ともにリフレッシュできるうえ、沿線グルメなど鉄道の旅をより楽しめるだろう。
「駅ナカ温泉」の代表格といえば、上越新幹線・上越線越後湯沢駅(新潟県湯沢町)だ。駅構内にある商業施設「ぽんしゅ館」には、日帰り入浴できる天然温泉がある。酒処の新潟だけあって、なんと日本酒が投入された「酒風呂」が用意されている。また越後湯沢駅は、温泉やスキーの旅行客が多く、グルメやみやげ物店が充実した造りとなっている。風呂上がりには、飲食店で新潟産の米や「へぎそば」、日本酒の利き酒を嗜(たしな)むなど、駅ナカとは思えない充実した時間を過ごせそうだ。
賑やかさとは対照的な「駅ナカ温泉」もある。秘境駅が並ぶ路線として知られる飯田線の平岡駅(長野県天龍村)だ。天竜川沿いにあるこの駅には、村の観光拠点として「ふれあいステーション龍泉閣」が併設されており、日帰り入浴できる「龍泉の湯」がある。食事や宿泊もOKなので、秘境駅めぐりの合間に立ち寄るのもいいだろう。
こうした「駅ナカ温泉」や駅に隣接する温泉は日本各地に存在する。岩手県の北上線ほっとゆだ駅、宮城県の石巻線女川(おながわ)駅、山形県の奥羽(おうう)本線高畠駅、新潟県の飯山線津南(つなん)駅、兵庫県の山陰本線城崎(きのさき)温泉駅、和歌山県の紀勢(きせい)本線那智(なち)駅、愛媛県の予土(よど)線松丸駅などだ。
また短時間で気軽に温泉浴を楽しめる足湯がある駅も多い。北海道の釧網(せんもう)本線摩周(ましゅう)駅、鹿児島県の指宿枕崎(いぶすきまくらざき)線指宿駅など。なかでも長野県の中央本線上諏訪駅、大分県の久大(きゅうだい)本線由布院駅は、駅のホームに足湯がある。
上諏訪駅の足湯はかつて、露天風呂だった。長野で展開された「一駅一名物」運動の一環として昭和61年(1986)、1番線ホームに露天の岩風呂が造られた。現在は列車を待ちながら浸かれる足湯となり、有効な乗車券または入場券があれば誰でも利用できる。
さらに時間に余裕がある場合、駅から歩いて行ける「駅近温泉」へも出かけてみたい。たとえば日本有数の温泉地として知られる大分県別府市。日豊(にっぽう)本線別府駅から徒歩圏内には、数百円で入浴できる共同浴場が複数ある。なかでも目をひく洋館風の個性的な建物は、その名も「駅前高等温泉」だ。別府駅前の通りを歩いて3分ほどの場所にあり、休憩や宿泊(要予約)もできる。また別府大学駅近くにある「別府海浜砂湯」では、海を眺めながら、温泉熱で温められた砂に包まれる「砂湯」を体験できる。
「駅近温泉」と地元グルメをセットで楽しむのもいい。北海道の函館本線長万部(おしゃまんべ)駅から徒歩10分の「長万部温泉ホテル」は、日帰り入浴で気軽に立ち寄れるのでおすすめだ。湯上がりには駅前の「カネカツかなや食堂」で、長万部駅の有名駅弁「かにめし」の作りたてを味わうのも乙だろう。特急「スーパー北斗」車内でも販売される「折詰もりそば」の実店舗「そばの合田(ごうだ)」も長万部駅前で営業しており、茹でたてのそばをすするのもいい。
こうした「駅と温泉」を活用すれば、鉄道の旅がより楽しくなり、乗車時間の長い旅の疲れも和らぐだろう。湯上がりにお酒を楽しめるのも、鉄道旅の魅力のひとつかもしれない。
文・写真 / 恵 知仁 ● Megumi Tomohito
1975年東京都生まれ。鉄道ライター、イラストレーター、WEBメディア「乗りものニュース」編集長。
小学生の頃から鉄道旅行記を読みあさり、カメラを持って子どもだけでブルートレインの旅へ出かけていた「旅鉄」兼「撮り鉄」。
日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済みで、完乗駅はJRが稚内駅、私鉄がわたらせ渓谷鐵道の間藤(まとう)駅。