『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
達人の鉄道利用術
ちょっとした達人テクであなたも快適&ラクラク鉄旅しよう!
鉄道旅行に出発する前、持ち物で悩んだ人は少なくないでしょう。
旅がもっとおもしろくなるようなグッズや便利な品など、
事前準備の工夫でより楽しく快適な鉄道旅になるはずです。
今回は「鉄道旅行の必需品」をマスターしましょう。
鉄道旅行をより楽しむならば、出発前に持ち物に気を配ることは重要である。着替えやカメラといった旅の必需品のほかに、何を持っていくといいのだろうか。
ここ10年足らずの間で、鉄道旅行の必需品は大きく変化した。スマートフォンの普及によるためだ。かつては「時刻表を持っていくと便利だけども、荷物を少しでも軽くするため必要なページだけ出発前にコピーして……」といったことがよく行なわれていた。また「大判の時刻表はかさばるが、夜行列車では枕代わりになるから便利」と言う人もいた(夜行列車のボックスシートで横になる際、丸めて枕にしたのである)。しかし現在は、スマートフォンやタブレット端末に「デジタルJR時刻表」アプリをインストールしておけば済んでしまう。地図やガイドブックなども同様だ。
そのため、現代の鉄道旅行の必需品は、スマートフォンを充電するための「モバイルバッテリー」といえるのかもしれない。新幹線や特急列車には電源用コンセントを備えた車両もあるので、移動の合間に利用したい。
スマートフォン以外でも、私には鉄道旅行に必ず持参する電子機器がある。現在位置や速度がリアルタイムで表示される「GPSの受信機(GPSロガー、GPSレシーバー、ハンディGPS)」だ。
たとえば東北新幹線「はやぶさ」は、大宮駅~宇都宮駅間で時速275キロメートル、宇都宮駅~盛岡駅間で時速320キロメートルを記録する。下り列車に乗った場合、宇都宮駅を通過して時速300キロメートルの大台を越えていく瞬間を、GPS受信機があれば数値を見ながら実感できる。かつては新幹線のビュッフェ車両などに設置されていた速度計が人気を集めたが、それが自分の座席で見られるようなものである。そうしたGPSデータを記録して、いつ、どこにいたかといった「旅の足跡」を作ることもできる。
こうした速度計測はスマートフォンアプリでも可能だが、専用の受信機なら、朝から夜までスマートフォンのバッテリーを気にせず使えるのでおすすめだ。速度を文字情報で表示するもの、地図とあわせて表示するものなど、さまざまなGPS受信機が発売されている。
また、鉄道旅に欠かせないのが時計だが、私は「電波式」の腕時計を愛用している。自動で時刻合わせをしてくれるので列車の発着時刻を安心して確認できるからだ。鉄道旅行は時間に余裕を持って行動するのがベストなのはいうまでもないが、自前の時計が遅れていて実は余裕がなかった……、ということも防げるだろう。
電子機器と真逆のアナログ的な持ち物として、私は「割り箸」を欠かさず持っていく。かつてこんなことがあった。駅弁を買って乗車。包み紙を開いて、さあ食べようとしたそのとき、誤って割り箸を床に落としてしまった。そのときの悲しみは語るまでもないだろう。それ以来、マイ「割り箸」を持っていくようにしている。
「醤油の小袋」も持参する。旅先のスーパーで出合う食材には地域色があり、旅情を感じることができる。なかでもおすすめが鮮魚コーナーだ。聞いたこともない地魚の刺身が売られていることがある。だが、買って食べたいと思っても、スーパーによっては醤油の用意がないことも少なくない。
「ウェットティッシュ」も必需品である。食事の際はもちろん、車窓の景色をより一層楽しみたいとき、さっと窓を拭くのに便利である。気に入った駅弁の容器を拭いて持ち帰る、という使い方もできる。そうした際には「レジ袋」もあると助かる。
旅の思い出をきれいに保存して持ち帰るため、「クリアファイル」も欠かさず持参する。駅弁の掛け紙や旅先で入手したパンフレットなど、家に帰ったらぐちゃぐちゃ……、では悲しい。折り曲げずに収納しやすいA4サイズがいいだろう。
きっぷもきれいなままで保存したい。折り曲げないよう、私はB7サイズの「カードケース」を使う。パンフレットなどと一緒にクリアファイルに入れると、取り出しにくかったり、出し入れする際に落として紛失したりと不便なので、きっぷ専用の「カードケース」を持ち歩いている。
鉄道旅には「スタンプ帳」も持参すると、さらに思い出が増えるだろう。定番はやはり、交通新聞社刊の「わたしの旅 スタンプノート」だ。昭和46年発売以来のロングセラーで、記録を書き込めるメモ欄と全国の鉄道路線図が付いている。
また、折りたたんで小さくなる「リュック」や「トートバッグ」も便利だ。荷物が多いと、せっかく空いた時間になかなか散策する気にならないだろう。そんなとき携帯用リュックなどがあれば、不要なものをコインロッカーに預け、最低限の荷物で出かけやすくなる。旅時間を増やせば、新たな発見や出会いがあるかもしれない。
いろいろ述べてきたが、鉄道旅行の持ち物はやはり、少ないに越したことはない。旅先ですぐ入手できるものは持っていかないなど取捨選択しながら、鉄道旅をより楽しくサポートする持ち物をそろえたい。もっとも、駅弁を食べようとして落とした割り箸など、旅が終わればそれもまた、よい思い出だが。
文・写真 / 恵 知仁 ● Megumi Tomohito
1975年東京都生まれ。鉄道ライター、イラストレーター、WEBメディア「乗りものニュース」編集長。
小学生の頃から鉄道旅行記を読みあさり、カメラを持って子どもだけでブルートレインの旅へ出かけていた「旅鉄」兼「撮り鉄」。
日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済みで、完乗駅はJRが稚内駅、私鉄がわたらせ渓谷鐵道の間藤(まとう)駅。