『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

鉄道が嫌いじゃない貴女におくる、女子力アップのヒント集『鉄子の部屋』 近頃認知度急上昇中なのが、女性鉄道ファン・通称“鉄子”。男性鉄道ファンに比べると、マニア度や緻密度においてはひけを取るかもしれませんが、情熱や遊び心は全く負けてない! 『鉄子の部屋』は全く新しい、女子のための楽しく明るい鉄道エッセイです。(注)鉄道が好きな女性を愛称で“鉄子”と呼びます。

*第4鉄* 駅そば食べて駅弁食べて、それからそれから『立ち売りの駅弁屋さんから駅弁を買いたい、私プロデュースの旅がはじまっ……た? Part1』

含まれる鉄分
★青春18きっぷ ★山下清が働いていた駅弁屋さん ★足湯のある駅 ★立ち売りの駅弁屋さん など

文=H岩美香(編集部)

 湯本駅から、当初乗る予定だった、普通列車に乗り換え、今日の旅の最大の山場、原ノ町駅へ向かう。一度特急列車の味を知ってしまった私は、座席の座り心地や、テーブルに置いてゆっくり食べられた水戸駅名物「印籠弁当」の思い出をつい懐かしんでしまう。が、いけない、いけない。
 たくさんの長距離列車が走る常磐線のホームには、かつて大勢の立ち売りが出ていたという。なかでも原ノ町駅は、機関車の給水などをするため列車の停車時間が長く、駅弁もよく売れた。今の時代は、停車時間が短いし、コンビニでSuicaをピッでおにぎりが買える。でも、私は駅弁派だ。おなかがすいていなくっても駅弁が食べたい。駅弁屋さん、しかも、立ち売りは大変でしょうけれど、私が買います、買わせていただきます。

 果たして、家を出て約7時間、ついにたどり着いた原ノ町駅には、いました、『丸屋』さんの立ち売り駅弁屋さんが。しかも、女性……じゃない、男性じゃん! 夫を見る。夫はそ知らぬふうだ。

立ち売り駅弁屋さんはやんややんやで大人気

 とにかく、売り切れちゃいけないので、駅弁屋さんのところに走っていく。今日は女性じゃないんですか? 駅弁を立って売られるご苦労はありますか? いろいろ聞きたいことはあったけれど、まずは、どのお弁当がおすすめですか? という、自分の欲望に直結した質問をなげ、「どれもおいしいよ」ななかから、「人気がある」かにめし720円を買った。写真撮っていいですか? と2回目の質問を使い、写真を撮っていたら、やんややんやとお客さんが押しかけ、お弁当は売り切れて、しかも若者ご所望のお弁当を追加で取りに行くため、駅弁屋さんは消えてしまい、私がゲットできたのは、自分のためのかにめしだけで、お話はうかがえなかった。読者の皆さますみません。

 原ノ町駅を出て、常磐線普通列車のロングシートに座り、かにめしを食べた。ごま油が効いた、やさしいかにめしだ。さっきのやんややんやの興奮からか、つい、がっついてしまい、車窓を楽しみすらせず、あっという間に平らげてしまった。はて、この物足りなさは、かにめしの量ではなくて、まだお昼なのに、旅の最大の山場が嵐のように過ぎ去ってしまった、という寂寥感なのか。

私プロデュースの旅だったのに……

 そこで依然元気なのは、夫だ。「仙台は牛たん通りへ行ってみよう」「大好きな、ずんだもちのカフェがあるんだよ」「宇都宮で行く餃子のお店は、もう決めてあるんだ」「で、宇都宮駅からはグリーン車で帰ろうよ」……あんた、私プロデュースの旅をすっかりのっとろうってかい。

 ま、実際、仙台は『き(漢字の「七」三つ)助』で食べた、牛たんつくねや牛たん炭火焼はおいしゅうございました。『ずんだ茶寮』で食べた、ずんだ餅プチ、ずんだシェイクともにおいしゅうございました。宇都宮で並んでまで食べた『宇都宮みんみん』のヤキ(焼餃子。これは、まじで、値段も味もびっくり)もおいしゅうございましたし、お土産用に4人前テイクアウト事件も、もろ手を挙げて大喜びです。そして、宇都宮線のグリーン車では、はい、すぐにおち(=寝)ました。でも、なんだろう、この不完全燃焼な感じは、なんなんだろう! 私、もっとできるんだよ!

主な“鉄子”

神田ぱん
1963年生まれ。おひつじ座のO型。茨城県日立市出身。三児の母。ミニコミ『車掌』(内容は非鉄)の営業部員という顔も持つ。「ケータイ国盗り合戦」ではまだ武将止まり、目指せ太閤。文筆業。
屋敷直子
1971年生まれ。おとめ座のO型。川崎市生まれ、福井市出身。故郷を愛するあまり「ふくいブランド大使」に登録。会員番号05121359。特技はピアノ。0系新幹線ラブ。文筆業。
さくらいよしえ
1973年生まれ。てんびん座のA型。大阪府交野市出身。『日刊ゲンダイ』で連載。著書に『立ち飲み天国』(ライブドアパブリッシング)『読みキャベ』(交通新聞社)。転換クロスシート愛好家。文筆業。
H岩美香
1972年生まれ。しし座のA型。東京都目黒区出身。株式会社弘済出版社(現交通新聞社)入社後、時刻表編集部、月刊『散歩の達人』を経て、月刊『旅の手帖』編集部へ異動。忘年会はお座敷列車希望。サラリーマン。

書籍紹介

鉄子の部屋
『JR時刻表』『交通新聞』『鉄道ダイヤ情報』などでおなじみの交通新聞社が、満を持してお届けする、女子による女子のための鉄道エッセイ&ガイド本。
●定 価 1,365円(税込)
●仕 様 A5版160ページ

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