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文=屋敷直子
2日目。6時35分宮古発の山田線で、再び岩泉線へ向かう。朝の岩泉線を味わうのだ。夕暮れ岩泉も良かったが、また別の空気があるはずだ。
7時1分茂市発の岩泉線は、清々しい。疲れとか淀みとか濁りとか、そういったものとはまるで無縁で、すみずみまで晴れ渡っている。これほど澄んだ日の光を見たのは、いつ以来か。ものすごく眠いけど、気分は爽快だ。
途中、その秘境ぶりで名を馳せた押角(おしかど)駅では、チーム岩泉、いっせいに窓の外を見てざわつく。これがあの! なるほどほんとにホームだけしかない。ぜひ写真におさめて
おかなくては。誰も声には出さないけれど、各々の心の叫びで車内は騒然となる。
7時53分、岩泉着。昨日と、とくに変わりはない。たぶん10年前とも、とくに変わりはないのだろう。そこがまたいい。
今日はここからバスに乗って龍泉洞という洞窟へ行ってみる。日本三大鍾乳洞のひとつで、国の天然記念物。洞窟は2500mほどまでは解明されているが、その2倍は続いていると推定される壮大なものだ。洞内にはいくつか地底湖があり、最深部の第三地底湖は水深98m、とある。そうはいっても、のぞきこんですぐに深いとはわからない。暗くて果てしなくて、時折したたり落ちる水滴が音もなく吸い込まれていく。しばらくして目が慣れてくると実感がわいてきて、足下がおぼつかない、腰のあたりがムズがゆいなど、地底なのに高所恐怖症的おそろしさを感じ始めるのだ。
龍泉洞から小本(おもと)までのバスは11時過ぎまで来ないので、あらゆるヒマつぶし手段を駆使して時間をつぶす。
待ちわびたバスに乗って、三陸鉄道の小本駅へ向かう。三陸鉄道は久慈(くじ)~宮古、釜石~盛(さかり)の区間に分断されていて、JRのおトクきっぷが使えない。なんとも悔しい思いをして宮古までの750円を払う。駅舎はスーパーも兼ねていて、レジのおばあちゃんから切符を買う。しかも硬券。ちょっとなごむ。
さらに小本駅が高架の眺めが良い駅で、集落を一望できて気持ちがよい。加えて反対方向に来た車両が、青×赤のファンキーなヤツだったので、750円の価値があったと喜んでいたら、やってきたのはエセヴィクトリア調のおしゃれ車両だった。こういう狙いすました感じは、なんというか、すごく困る。どちらかといえば、あのファンキー野郎に乗りたかった。
12時46分、宮古に戻り、名勝・浄土ヶ浜を見て、夕食は宮古魚菜市場で購入。牛乳ビンにぎっしり詰まった生ウニや、ホタテやアジの刺し身とビールを買い込み、鉄(テツ)の定宿でむさぼり食う。ちなみにこのホテルでは、アダルトチャンネルが無料で視聴できます。