『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。
正式線名は東海道本線。通称・美濃赤坂線と呼ばれる。大垣駅から美濃赤坂駅(ともに岐阜県大垣市)までの5.0km、3駅。石灰石などの積み出しのため、大正8年(1919)に開通した。
上ってきた石の階段を下りようとしたら、眼下に大垣の町が広がっているのが見えた。目を凝らすと、昨夜自分が泊まったホテルの横にあった、建築中の青ビニールに覆われた建物が見えた。おお、今日はあそこから歩いてきたのか。こう見るとずいぶん歩いてきたと思う。いつもはこの倍は歩いているのだが。
線路に戻ると、引き込み線が何本もあって、濃紺とグレーに塗り分けられた電気機関車が1両、ポツンと停まっている。ガッシリとしたその重厚な体躯。目のような2つの四角い窓。頼もしい武骨な力持ちという感じだ。「EF64 1005」と入っている。鉄チャンでなくとも、愛おしくなる。
引き込み線の方には古い木造の大きな駅舎のようなものがあり、木の立て看板にペンキで「今日も無事故で」と書いてあるのが消えかかっている。貨物列車用駅舎だろうか。この建屋もなんとも味がある。あんな建物を安く譲ってもらって、自分のアトリエや音楽スタジオにしたらかっこいいなぁ、と夢想する。今日はいろいろ夢想しているが、たぶん距離が短く、心にいつも以上に余裕があるということだろう。
時計を見ると11時58分。お昼か、と思ったら目の前に「昼飯大塚古墳1km」という立て看板が立っていて、思わず笑う。昼飯の古墳って。戻って調べたら「ひるいおおつか」と読むのだそうだ。東海地方最大級の前方後円墳で、国の史跡に指定されているとあった。当時の古墳を復元した部分もあったりして、結構面白そうだ。行けばよかったかな。なんて、後の祭りだ。
そこからすぐに西濃鉄道の建物があった。調べたら貨物専業鉄道の会社だった。美濃赤坂駅を起点に市橋線という貨物線がその先に続いているようだ。