『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

名駅舎コレクション PART1
小樽を愛した裕ちゃんゆかりのホームがある駅

小樽駅 おたるえき[函館本線/北海道小樽市]

 現在の小樽駅舎は昭和9年に竣工した3代目です。大正12年(1923)9月に発生した関東大震災で多くの建物が被災したのを契機に、日本では世界に先駆けて耐震設計が法規上に採り入れられました。駅舎も例外ではありません。それまでのレンガや石に替わって、耐震に優れた「鉄筋コンクリート」が多用されるようになったのです。そんな時代に建設された小樽駅も重厚な鉄筋コンクリート造り。正面から見て凸型の外観は、上野駅や岡山駅(2代目)、中国の大連駅など、同時期に建設された駅舎とも似たデザインになっています。

駅舎正面部分の窓や、ホームの柱には「ランプ」が吊り下げられ、小樽らしさを演出。また、古レールで組まれた屋根に覆われた4番線ホームは「裕次郎ホーム」と名付けられ、小樽を愛した石原裕次郎の等身大パネルが設置されるなど、観光客を楽しませています。

data

住所

北海道小樽市稲穂2丁目

開業年月日

明治36年(1903)6月28日

上野駅にも似た外観。正面の窓に吊り下げられたランプの灯が旅情を誘う

「裕次郎ホーム」と命名された4番線ホーム。屋根は古レールで組まれている

皇族やVIP専用の貴賓室もある瀟洒な洋館

日光駅 にっこうえき[日光線/栃木県日光市]

 国際観光都市・日光の玄関口にふさわしく、日光駅は気品漂う洋風建築の駅舎です。

 日光線は民営の「日本鉄道」が、東北本線の支線として明治23年(1890)に開業させました。開業当初の日光駅舎は平屋建ての木造駅舎でしたが、鉄道国有化後の大正元年(1912)に現在の2代目駅舎が竣工しました。

 日光駅舎は木造2階建て。外観は中央部分の上方に半月形の小窓を配したデザイン。柱を外部に出した「ハーフティンバー」の壁面と格子の窓が瀟洒な洋館のイメージを印象づけます。駅舎の1階部分には、皇族やVIP専用の「貴賓室」が設けられています。また、2階部分は「1等専用待合室」が設置されていましたが、現在はギャラリーとして使用されています。ギャラリー開館時には、シャンデリアの下がる室内を見学することができます。

data

住所

栃木県日光市相生町

開業年月日

明治23年(1890)8月1日

瀟洒な洋館の姿を保つ日光駅舎。正面の車寄せの天井には鳴龍が描かれている

シャンデリアが下がる2階の部屋は旧1等専用待合室。現在はホワイトルームと呼ばれるギャラリーに

雄大な富士山と三嶋大社の姿をデザインに

三島駅 みしまえき[東海道本線/静岡県三島市]

 富士山の優美な山裾を思わせる三島駅舎の外観は、緩やかな曲線を描く、美しい切妻タイプの大屋根が特徴的です。神保忠良により設計されたこの駅舎は、富士山と三嶋大社の社の姿がデザインに採り入れられています。

 三島駅が現在の場所に設置されたのは丹那トンネルが開通した昭和9年。東海道本線はそれまでの御殿場線廻りから、現在の熱海経由に短縮されました。これと同時に竣工したのが現在の三島駅舎。大正時代後期から昭和初期の間には、日本文化の再認識が重視され、この時代の駅舎には地方色が豊かに盛り込まれたといいます。三島駅も75年もの歳月を経ていながら、全く古さを感じさせない秀逸のデザインといえるでしょう。

data

住所

静岡県三島市一番町

開業年月日

昭和9年(1934)12月1日

富士山の雄大な姿を思わせるような優美な曲線の屋根が魅力的

三島周辺には富士山の清らかな伏流水が湧き出し、市内を流れている

次のページへ

バックナンバー

このページのトップへ