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後世に伝え、残したい 名駅舎コレクション PART2

観光駅舎のさきがけ

川湯温泉駅 かわゆおんせんえき[釧網本線/北海道弟子屈町]

 北国の山間にたたずむ川湯温泉の駅舎は、昭和11年(1936)に竣工した2代目の駅舎です。建物の下部はイチイの丸太を組み、上部は樺の木をそのまま装飾に用いたハーフティンバーで構成され、どこか懐かしい高原の山小屋を思わせます。峠越えを控えた麓の駅にぴったりマッチしたデザインで、リゾート地の玄関駅としての存在感を示しています。観光客なども多く利用する昭和初期の駅舎は、画一性を避けて地方色や特徴を出したようです。駅名は開業時から長年「川湯駅」だったのですが、平成元年に「川湯温泉駅」に改称されています。

 駅事務室と貴賓室スペースを改造した喫茶店「オーチャードグラス」が営業、平成15年には足湯(無料)も設置され、旅人に親しまれています。

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住所
北海道川上郡弟子屈町川湯駅前1丁目
開業年月日
昭和5年(1930)8月20日

※喫茶店「オーチャードグラス」の営業時間は10:00〜17:30(ラストオーダー)、火曜休。足湯は始発列車から最終列車まで利用可、不定休(メンテナンス時)、無料。

イチイの丸太や樺の柱など木材をふんだんに使った駅舎は高原の山小屋を思わせる

駅舎内部は改装され、喫茶店「オーチャードグラス」として営業している

日本を代表する中央停車場

東京駅 とうきょうえき[東海道本線など/東京都千代田区]

 東京駅は言わずと知れた日本を代表する駅です。すでに開業していた東海道本線・新橋駅と東北本線・上野駅を結ぶ新規路線の途中に各線を統合する「中央停車場」として計画され、「東京駅」として大正3年(1914)12月20日に開業しました。同時に建設され12月14日に竣工した赤レンガ造りの駅舎は全長335mで日本最大級の3階建てレンガ建造物。両翼にはドームを備え、左右それぞれで乗降が分離されていたといいます。設計したのは「明治の建築王」と呼ばれた建築家の辰野金吾。当時は鉄筋コンクリートが最先端の建材でしたが、あえてレンガと大理石を用いることで威厳と格調を保ち続け、平成15年には国の重要文化財に指定されました。

 建設当時の駅舎は昭和20年5月25日の大空襲で甚大な被害を受け、シンボルのドームも焼失。終戦を迎えた昭和22年、3階建てを2階建てに改めた上で修復されました。以後はこの姿で長い間親しまれてきましたが、誕生時の姿に戻すべく平成19年より工事が行なわれています。いにしえの姿と再会できる日が楽しみです。

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住所
東京都千代田区丸の内一丁目
開業年月日
大正3年(1914)12月20日

丸の内ビルディング(丸ビル)から望む復元工事前の東京駅の姿。平成18年撮影

開業時の姿を復元した模型が「東京ステーションホテル」のロビーに展示されていた

御嶽山登山口にある元祖ログハウス風駅舎

飛騨小坂駅 ひだおさかえき[高山本線/岐阜県下呂市]

 岐阜から工事がスタートした国鉄高山線が、下呂を経て昭和8年に飛騨小坂に到達、当時は珍しかった丸太造りの山小屋風駅舎が同時に竣工しました。木材の産地として知られる小坂町の特徴を表現するように、建材には杉の丸太が使用され、丸太を斜めに組み上げることで、全体的に小気味よいリズムを生み出しています。

 駅舎正面のエントランス屋根中央には神社建築に見られるような「千木(ちぎ)」が設けられ、民謡『木曽節』にも歌われる霊峰・御嶽山登山口の玄関駅であることを表現。昭和3年に建てられた中央本線大月駅(JR東日本)とも酷似した外観で、「中部の駅百選」に選定されています。また、小坂町(下呂市)は日本一滝の多い町としても知られ、大小合わせてその数200余り。シーズンには秘境滝めぐりが楽しめます。

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住所
岐阜県下呂市小坂町大島
開業年月日
昭和8年(1933)8月25日

山間の風景に良く似合うログハウス風の駅舎は昭和8年の竣工

標高3067mの霊峰・木曽御嶽山。夏場は登山客でにぎわう

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