秋田県と青森県を結び、美しい日本海沿いを走るJR五能（ごのう）線。なかでも驫木（とどろき）駅は、ホームのすぐ前が海で、絶景の駅として知られ多くの鉄道ファンが訪れます。駅前には民家が1軒あるのみです。待合室とトイレだけの、小屋のような駅舎です。静かな待合室のベンチに座っていると波の音や風の音が聞こえ、大変くつろげます。また、雄大な日本海に沈む美しい夕日も見ることができます。オレンジ色に染まり刻々と変化する風景は見ていて飽きません。時間の経つのを忘れてしまうほどで、何度でも訪れたくなる駅です。

　由利高原鉄道は、秋田県の鳥海山（ちょうかいさん）ろくを走ります。以前、この鉄道には多くの木造駅舎がありましたが、老朽化が進み次々と建て替えられました。そして、最後に残ったのが子吉（こよし）駅です。ここは駅のほかにもうひとつの顔を持っています。事務室が玉ノ池簡易郵便局として使われているのです。「以前は乗車券やパンやお菓子も売っていました。年金の支給日には、お年寄りで待合室はいっぱいだったこともありました」と郵便局員さんは語ります。最近では鉄道ファンに知られ、全国から訪れた人が記念に貯金をしていくそうです。

　奥羽本線の神町（じんまち）駅は、サクランボで知られている山形県東根市にあります。戦時中、神町駅の近くには、海軍航空隊の基地があり、戦後進駐軍により接収され、駅にはRTO（鉄道運輸司令部）が置かれました。巨大な倉庫のような駅舎は、進駐軍が昭和22年に建てたものです。

　当時、駅の正面には、駅と同じ明治34年（1901）に開業した和泉屋旅館がありました。旅館の5代目の高橋敏晴さんは、「駅舎の建設のため、強制的に駅の北側に移されたと先代から聞きました。また、駅前には進駐軍相手の旅館が3軒くらいあったことを覚えています」と話してくれました。現在、駅は無人となっていますが、駅舎正面の壁面には、「JIMMACHI STATION」と表記され、また進駐軍専用の入口の扉などもあります。占領当時の面影が今でも残る、貴重な駅舎のひとつです。