北海道の滝川市と根室市を結ぶＪＲ根室本線。そのほぼ中間辺りに上厚内（かみあつない）駅はあります。小高い所にある木造駅舎は、青空を背景に朝日を浴びて建っていました。駅は明治43年（1910）に開業し、現在の駅舎は昭和28年に建てられたもの。正面のホーローの駅名板が特徴です。厳しい気象条件の中で使われてきましたが、駅舎の窓枠やドアは木製のままで趣があります。1960年代には、駅の周辺には民家が60軒ほどあったそうです。駅を清掃している女性は「国鉄の保線区の官舎や小学校もあり賑やかでしたが、今では数軒の民家しかありません。寂しくなりました」と話してくれました。かつての校庭の片隅には上厚内小学校の閉校記念碑があります。校舎はありませんが、体育館が今も残っています。地元の利用者は少なくなったものの、かつて住んでいた人が訪れたり、昔と変わらない木造駅舎を見たりするために鉄道ファンが降りる駅です。

　ＪＲ根室本線の新狩勝トンネルを抜けると落合駅に到着します。そこから富良野方面に進むと幾寅（いくとら）駅はあります。映画『鉄道員（ぽっぽや）』のロケに使われた駅として知られ、多くの映画ファンが訪れます。駅舎正面の駅名板は映画の「幌舞（ほろまい）駅」のままで、駅前にはロケに使われた食堂や気動車の一部などが残されています。今でも駅から高倉健さん演じる駅長が現れそうな雰囲気があります。夕暮れ時、列車を見送る人や待合室で列車の到着を待つ人を見かけました。木造駅舎はその情景にぴったりで、まるで映画のワンシーンを見ているようでした。

　ＪＲ函館本線の砂原支線に渡島沼尻（おしまぬまじり）駅はあります。当初、駅は信号場として開設されました。そのため長大編成の列車が交換できるようになっています。しかし、ホームは車両が1両止まれる程度の長さしかありません。駅舎は保線小屋のような小さな建物で、側面は2本の棒で支えられています。そして狭いながらも待合室があります。補修されながら使われてきた駅舎は、今日も北の大地にしっかりと建っています。