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『夢見る木造駅舎』なんてことないニッポンの駅。全国には9000を超える駅がある。なかでも明治、大正、昭和、そして平成と生き抜いた木造駅舎は、都会への旅立ちを見送り、帰郷を温かく迎え入れてくれた、ぬくもりの駅。そんな駅舎が消えてしまう前に……。(構成=ボス 文=萩原義弘)

第11回 下灘駅・知和駅(JR予讃線・JR因美線)

JR予讃線 下灘駅

昭和10年(1935)開業
愛媛県伊予市

穏やかな伊予灘を染める夕日を眺めていると時間が経つのを忘れてしまう
1両の列車がのんびりとホームに入ってきた
下灘駅(後方)の思い出を話してくれた西岡さん

JR因美線 知和駅

昭和6年(1931)開業
岡山県津山市

静かに佇む知和駅。いつまでも変わらないでいてほしい
どこか懐かしい、ぬくもりを感じるきっぷ売り場
昭和初期のまま、時間が止まった感じの駅舎

夢見る木造駅舎まっぷ

 東の驫木(とどろき)、西の下灘(しもなだ)。共にホームから海に沈む美しい夕日が見られる駅として知られています。愛媛県伊予市にあるJR予讃(よさん)線の下灘駅は、目前に伊予灘が広がり、青春18きっぷのポスターや映画のロケ地などにたびたび使われてきました。駅舎は切妻屋根の小さな建物で、海を背景に建っています。

 「駅ができる前は田んぼでした。昔はホームの下はすぐ海でホームから魚が釣れました」と近くに住む西岡ヤヱ子さんは話してくれました。現在は無人駅ですが、以前は5人くらいの駅員さんが勤務していたそうです。貨物として地元のミカンや木材が運ばれていき、駅前の通りは店が並び賑やかでした。しかし、今では商店はなくなり、私が訪ねた時、商店だった家屋が解体されていました。地元の乗降客は減りましたが、駅の絶景が全国に知られ、多くの人が訪れるようになりました。地域の老人会は、駅に野路菊を植えるなどして、訪れる人たちに心のこもったもてなしをしています。

 岡山県と鳥取県を結ぶJR因美(いんび)線。鳥取県の智頭(ちず)駅を出発した始発列車は、私一人を乗せ山間を縫うように走り、県境を越えて知和(ちわ)駅に到着。昭和初期の雰囲気が漂う駅舎が私を迎えてくれました。珍しくなった木製の改札口やきっぷ売り場に温もりを感じます。木のベンチに座り耳を澄ますと鶯の鳴き声が聞こえ、さわやかな風が駅舎内を通り抜けます。いつまでも変わらぬままでいてほしい、そんな木造駅舎です。

インフォメーション

BS1・NHKワンセグ2「にっぽん木造駅舎の旅」

放送は終了いたしました。
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