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全国各地にそばの里が散在するが、山形県にはそば街道なるものがある。発祥は村山市の「最上川三難所そば街道」で、県内随一のソバ生産量を誇る尾花沢市「おくの細道尾花沢そば街道」も人気だ。そして、現地に足を運ばないと味わえないそばがあるのが大石田町の「大石田そば街道」だ。
昔から、人が集うと手打ちそばでお客をもてなすという文化が根付いている地域。そばの味は母から娘や嫁へと受け継がれ、「あそこのうちはうまい」という近隣の評判が高まり、軒先にのれんを掲げた店が少なくない。それゆえ、現在も女性が手打ちする店が少なくなく、仏壇や床の間のある居間にテーブルを並べた昔ながらの農家や民家にお邪魔する風情が魅力だ。街道筋にはそんなそば名人の店が点在する。
風情ばかりじゃない。大石田町は地そばも自慢だ。次年子(じねんご)地区在来の「次年子そば」に加え、現在、町が力を入れているのが「来迎寺(らいこうじ)在来」。香り高く、そば通が新そばを心待ちにしている品種で、明治以降に来迎寺地区で代々守り続けられてきた。
界隈はもともと最上川の舟運で栄え、舟乗りが多く住んでいたという。しかし明治以降、舟運は衰退の一途。そこで当時、郡役所に勤めていた来迎寺出身の阿部与佐エ門(あべ よざえもん)氏が「やせて水稲には向かない原野でも作付けできるソバ栽培を」と、九州より新品種を導入したと伝わる。
山形の一般的な栽培品種である「でわかおり」「最上早生」に比べると、粒が大きく、挽くと香り高い。ならばもっと出回ってもおかしくなさそうだが、「よその土地だと根付かないんです」と話すのは、大石田町役場 産業振興課の佐々木洋平さん。昼夜の寒暖差が大きく、朝晩に立ちこめる最上川の川霧が、「来迎寺在来」をふくよかな香りと味わいをもつ玄そばへと育て上げている。
新そばが出回るのは毎年11月上旬からだが、ひと足先の10月下旬に催される「新そばまつり」にも注目だ。そばは一般に「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」の三たてがよしとされているが、そこに「採れたて」を加えた“四たて”の二八そばは、このイベントでしか味わえないプレミアムなそば。県外からもこの祭りを目指して訪れるファンも少なくない。
【第18回大石田町 新そばまつり】
日時:2014年10月25日(土)・26日(日)11:00~13:30
料金:当日券1200円、前売り券1000円(券1枚にはそば引換券2枚が付きます)
開催場所:クロスカルチャープラザ「桂桜会館」特設会場(北村山郡大石田町緑町8)
問合せ:かおり風景100選「大石田町そばの里」推進協議会 新そばまつり事務局(大石田町役場 産業振興課)TEL. 0237-35-2111
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「大石田そば街道」には、地元産のソバと水で手打ちする、太めで黒っぽい田舎そばの名店が点在。木製の箱形の器で供する板そばは、かつては農作業などの共同作業や集会時にみんながつつけるよう、板戸など大きな長い板の上に盛り付けたことが起源とか。農家風情の店、女性が手打ちする店、自家栽培の「来迎寺在来」を用いたそばなど、店ごとに趣向が異なるので、そば三昧を思う存分、楽しみたい。
民家そのままの店構えで、のどかな座敷が広がる店内。ここでは、コシと風味が強い次年子そばの板そばを、名物のきじ汁に付けて味わいたい。先代から受け継いだきじ汁は、旨みとコクがしっかり汁に染み出しながらも、辛味大根のみぞれが、風味をキュッと引き締める。
板そば:700円 きじ汁:350円
営業時間:11:00~17:00、第2・4木曜休
住所:大石田町次年子149
交通:JR奥羽本線大石田駅から車で約25分
TEL.0237-35-6307
初代の女将・きよさんが始めた店を現在切り盛りするのは、二代目の女将。自家製の漬物を食みながら座敷で待つと、供されるのが板そばだ。「来迎寺在来」の十割そばで、噛むほどにみずみずしい香りが鼻孔を抜けていく。甘いごまだれで食べるそばがきの「かいもず」も柔らかな食感が名物!
板そば:800円 かいもず:850円
営業時間:11:00~16:00(売り切れ次第終了)、木曜休
住所:大石田町横山736
交通:JR奥羽本線大石田駅から車で約8分
TEL.0237-35-4245
目の前に広がるソバ畑で採れた大石田自慢の「来迎寺在来」の実を、石臼で挽き、打ち、一気に茹で上げる。しなやかでみずみずしい二八そばは、昆布やカツオ節などのダシ汁を効かせた甘辛い汁にくぐらせてずずっとすするべし。弾力のある食感は、噛むほどに口中で香りが広がっていく。
板そば:780円
営業時間:11:00~15:00・17:00?20:00(夜は要予約)、火曜休
住所:大石田町豊田855-1
交通:JR奥羽本線大石田駅から車で約5分
TEL.0237-35-3620
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