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米を蒸す時に使っていた赤レンガ煙突は西条の象徴的存在。現在は13本の煙突が残るが、西條鶴醸造の1本のみが現役で稼働している。
醸華町(じょうかまち)まつりのオープニングを飾るのは西条酒造り保存会による「西条酒造り唄」。各酒蔵で受け継がれてきた伝統の唄を披露する。
醸華町まつり当日は各酒蔵で試飲販売を実施。8蔵すべてを巡ると各酒蔵提供の完歩賞を抽選でゲットできるスタンプラリーも行う。
蔵人の郷である東広島市安芸津町が近く、酒造技術に長けた人材に恵まれていたことも、西条の酒を有名にしたと考えられる。
JR西条駅の周辺には、酒蔵が密集する約1㎞の通りがある。通称「酒蔵通り」。この辺りは江戸時代に栄えた宿場町で、酒造業が最盛期だった大正時代には、12~13社もの造り酒屋がしのぎを削っていたという。赤レンガ造りの煙突やなまこ壁といった歴史ある風景は往時の名残。現在は、8つの酒蔵が建ち並ぶ。
特定の地区にこれだけの数の酒蔵が密集しているのは諸説あるが、一番は、仕込み水である龍王山の伏流水が関係している。龍王山は西条の北部に位置する山で、ここに降った雨が数十年ほどの年月をかけて西条地区の地下水として湧く。良質な水をたくさん汲み上げることができたのが、西条駅周辺のこのエリアだったというわけだ。
また、明治時代に山陽鉄道(1888~1906、現在のJR山陽本線などを建設)が開通したことで、物流が発達。西条駅前の酒造業を盛んにした要因のひとつだといわれている。
西条盆地で酒造りが始まったのは江戸時代(1650年頃)だが、その名を一躍有名にしたのが、明治中頃の酒造家・三浦仙三郎だ。東広島市(安芸津町)出身の彼が生み出した、軟水で仕込む「軟水醸造法」と呼ばれる醸造技術がブランドの強化に大きく寄与。この「軟水醸造法」と、西条の水質を生かした醸造法を組み合わせて開発されたのが西条独自の「中硬水醸造法」という手法だ。
龍王山の伏流水は、爽やかで甘みのある中硬水。中硬水は、硬水に比べて発酵力が弱かったため、日本酒の仕込みにはそれまで不向きとされていたが、これにより、まろやかで旨味のある独特の味わいの日本酒を作り出すことに成功した。硬水で仕込むキレのある「男酒」に対して、甘口でふくよかな味わいの西条酒は「女酒」と呼ばれ、たちどころに評判となった。
また、西条が「酒都(しゅと)」として名を馳せた要因として、酒造用精米機を開発した佐竹製作所(現在の株式会社サタケ)が同じ町内にあったことも大きい。最先端の精米技術をいち早く取り入れることができた恵まれた環境もまた、西条を銘醸地として更なるものへと押し上げたといえよう。
毎年、新酒が香る3月に行われる「春の西条 醸華町まつり」では、各酒蔵で試飲販売が行われるほか、「酒蔵のまちスタンプラリー」や「西条酒の利き酒大会」といったさまざまなイベントが開催される。
『賀茂泉』が手掛ける「お酒喫茶 酒泉館」では、美酒鍋や粕汁などが付く当日限定のランチを提供予定。『福美人』では、酒粕甘酒のふるまいや、酒粕入り「びじんせっけん」の実演販売なども行う予定だ。特設会場には、当日限りの居酒屋が出現。酒蔵地区周辺の飲食店が自慢の酒の友(肴)をアテに、西条酒や酒カクテルを満喫できる「酒がーでん」も実施する。
ボランティアガイドの案内による酒蔵通り巡りも行っているので、興味のある方はぜひ申し込みを。各酒蔵の利き酒や西条の日本酒ガイドなどが楽しめるほか、普段は見ることのできない蔵内の見学もできる。
兵庫の灘、京都の伏見と並び称される銘醸地として知られる広島県・西条。日本酒としては全国で初めて、「JAPANブランド育成支援事業」に採択され、2008年より、世界に向けて酒文化の発信も行っている。
日本を代表する銘酒のひとつ、西条酒。日本人ならば、この機会に、ぜひともその味を知っておきたいところだ。
【春の西条 醸華町まつり】
日時:2014年3月1日(土)10:00~15:00
料金:酒蔵のまちスタンプラリー300円、蔵見学と酒蔵通り巡り800円(お土産付き、先着順)、西条酒利き酒大会200円
問合せ:東広島市観光協会 TEL.082-420-0310
1904(明治37)年創業。約15種類の酒はどれも広島の食べ物とよく合う。看板の純米大吟醸原酒『神髄』は、香り・旨味・酸味という日本酒の醍醐味を一杯で味わえるこれぞの逸品。
明治30年代の創業以来、甘口の多い広島酒の中で“辛口ですっきりとした酒”を創業時より作り続けている。看板の大吟醸『創』は、のどごしのよさに定評がある。
西条の仕込み水は龍王山の伏流水。中硬水に適した醸造法で酒造りをするため、口当たりのやわらかな酒に仕上がる。同じ龍王山の伏流水でも汲み上げる場所によって、微妙に水の味が違うとか。各蔵では仕込み水の井戸を一般開放しているので、飲み比べるのもいい。
東広島市は、米の収穫量・作付面積ともに県内第1位を誇る穀倉地帯。「広島八反」をはじめとするさまざまな品種が作られ、現在では造賀で「山田錦」が栽培されている。旨い酒づくりには欠かせない、質のよい酒米が確保できた点も、酒どころとして発展を遂げた要因だ。
各蔵に伝わる独自の日本酒造りの技法を受け継ぎながら、日々研鑽を続けている杜氏たち。8つもの酒蔵が密集するエリアのため、互いに切磋琢磨しながら技を磨いている。現在は、西条の杜氏たちで「西醸会」を結成。交流を深めながら、互いに刺激し合っている。
塩とコショウ、日本酒だけで味付けした東広島の名物鍋。もともとは蔵人のまかない料理で、現在は市内各地の飲食店で楽しむことができる。『佛蘭西屋』は賀茂鶴酒造直営のレストラン。鶏肉や豚肉、砂肝といった素材の旨味を、日本酒のやさしい甘みが引き立てる。
■佛蘭西屋(ふらんすや)
美酒鍋御膳:1,500円 ※昼限定
元祖美酒鍋:単品1,800円(1人前)、コース4,500円(1人前) ※コースは要予約、注文は2名~
営業時間:11:30~14:00LO・17:00~21:00LO、水・第1・2月休
住所:東広島市西条本町9-11
交通:JR西条駅南口から徒歩3分
TEL.082-422-8008
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コメカラとは、東広島の特産である西条の日本酒を使って調味し、米粉を衣にまとわせた唐揚げのこと。カリッとした衣の食感と、ほんのり香る日本酒の風味が特徴だ。この2つの条件を満たせば、具材は鶏肉でなくともOK! 豚肉や豚足、カキやタコ、レンコンなど、多種多様なコメカラが、市内約25の飲食店で手軽に楽しめる。米粉の衣は油を吸収しにくく低カロリーなので、女性客からの評判も上々だ。
■コメカラ提供店
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■西條お酒とお米の会議所
(東広島商工会議所内 )
TEL. 082-420-0303(平日8:30~17:15)
赤い煙突や白壁の酒蔵など、風情ある街並みが残る酒蔵通り。この通りには2つの建物が屋根裏でつながった建物があり、「くぐり門」の名で親しまれている。写真右は観光案内&無料休憩所。左の「くぐり門珈琲店」では、仕込み水で淹れた自家焙煎コーヒーが楽しめる。
■くぐり門珈琲店
コーヒー:450円~、酒粕チーズトースト:500円(ハーフ350円)、ひじきケーキ:300円
営業時間:10:00~16:30LO、第2・4火休
住所:東広島市西条本町17-1
交通:JR西条駅南口から徒歩7分
TEL.082-426-3005
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