『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
会場ではラジオの生放送、ライブも行なわれる。平日は会社帰りのサラリーマンやOL、週末は家族連れなど幅広い客層で賑わう
明治9年、『札幌開拓使麦酒醸造所』の開業式の様子。積み上げられた樽に「麦とホップを製すればビイルとゆふ酒になる」とある
元祖・国産ビール「札幌ビール」の明治11年(1878)版ラベル。北海道開拓のシンボルマーク、赤い五稜星が描かれているのが印象的
北海道産のホップを使い、北海道で醸造した地ビール「クラシック 富良野シトラス」。ぜひ味わっておきたい
北国の短い夏を思い切り楽しもうと、昭和29年(1954)に始まった「さっぽろ夏まつり」。毎年7月中旬から約1カ月間、大通公園5~11丁目で北海盆踊り、バザール、すすきの祭りなどの協賛行事が開催される。なかでも市民が心待ちにしている企画が「さっぽろ大通ビアガーデン」だ。
開催地である札幌市内を散策してみると、北海道庁旧本庁舎(通称・赤れんが庁舎)や札幌市時計台などの名所、さらにはマンホールの蓋に至るまで、さまざまな場所に★印が描き込まれているのがわかる。これは五稜星といい、ルーツは、明治維新の最中に行なわれた北海道開拓のシンボルマークだ。さらに、「さっぽろ大通ビアガーデン」の会場にも『サッポロビール』のコーポレートマークとして★印が見られる。はたして両者にはどのようなつながりがあるのか? 乾杯する前に、そのルーツを探りたい。
明治2年(1869)に箱館戦争が終わると、蝦夷(えぞ)地は北海道と改称され、新政府による開拓が始まった。それにともない、新政府は西欧の先進技術や知識を取り入れるため、海外から各界の専門家を招へい。彼らの提言、指導のもと札幌に工業地帯ができ、明治9年(1876)、『札幌開拓使麦酒醸造所』が誕生した。
ちなみに明治2年には、既に日本初のビール醸造所が横浜に誕生している。しかし、それは外国人技師が居留地で暮らす外国人のために造ったもので、日本人にとってビールはまだ謎の多い飲み物だった。とはいえ、少しずつ認知度も高まっていたため、新政府は日本の新たな産業として、ビール醸造に可能性を見出す。こうして、日本人の、日本人による、日本人のためのビールを造るべく札幌に醸造所が造られ、その任務を開拓使たちが背負うこととなった。
『札幌開拓使麦酒醸造所』が開設された翌年には、第1号商品の冷製「札幌ビール」が完成。本場ドイツで修業した日本人初のブラウマイスター・中川清兵衛(なかがわせいべえ)が仕込みを手がけた。製品は、開拓使旗 (北辰旗) を掲げた船艦で東京に運ばれたが、この旗には、前述の五稜星が描かれていた。この★印がおなじみ、サッポロビールのコーポレートマークにつながる。つまり北海道開拓のシンボルマークだった五稜星が、札幌での国産ビール醸造のマークとなり、現在も受け継がれているのだ。
それでは、札幌とビールの歴史も学んだところで、美味しい一杯を求めていよいよ「さっぽろ大通ビアガーデン」へ向かおう。
会場は、札幌中心部にベルトのように横たわる大通公園。長さ約1.5km、面積約7.8haの緑あふれる公園に、およそ1万3000席を用意する。大きく6つに分けられたブロックには、大手ビールメーカー4社がテントを張り、さらに「世界のビール広場」、「札幌ドイツ村」と銘打ったコーナーも開設。カラッとした気候のなかで飲むビールは格別で、市民のみならず全国からビール党が集まる。
ゆっくり飲んで回りたいなら、仕事帰りのサラリーマンが集まり始める前の時間帯、平日の昼間が狙い目。日中でも気温が上がりすぎないので、ランチビールが気持ちいい。青空の下で爽やかな風を感じながら乾杯するのが醍醐味のひとつでもある。
『サッポロビール』のブロックでは、この会場でしか飲めない「クラシック 富良野シトラス」を1日100杯限定で発売。希少な富良野産ホップを用いた逸品で、柑橘系のシトラスのような香りが楽しめる。会場には北海道産の食材を使ったおつまみもずらり。気候のよさ、開放的な空間も手伝って、箸も、ジョッキを傾ける手も止まらない。
一方、ここ数年で札幌近郊に小規模ながらこだわりの強いブルワリーが増えている。開拓時代、ビール造りを手探りで始めたパイオニア精神は、現在の職人たちへも確実に継承。市内に複数あるビアバーでは、個性豊かなクラフトビールを楽しむことができる。
この夏は札幌のビールで、北国の風土と開拓使の挑戦から生まれた芳醇な味を存分に味わいたい。
【さっぽろ大通ビアガーデン】
日時:2014年7月18日(金)~8月15日(金)
入場料:無料(ドリンク、料理は別料金)
問合せ:さっぽろ夏まつり実行委員会 TEL.011-281-6400
国内で初めて野生ホップが発見されたのは、明治5年(1872)、場所は北海道岩内町だ。研究の結果、冷涼な気候であれば栽培も可能とされ、明治10年(1877)に『札幌ホップ園』が開設。その4年後、『札幌開拓使麦酒醸造所』で使うホップはすべて自給できるようになった。
北海道の夏は湿気が少なく、気温が上がっても空気がカラッとしているのが特長だ。澄んだ空気は、ビールをより味わい深いものにしてくれる。札幌でビールが造られるようになった明治初期には、ビールを低温で発酵させるための氷が手に入りやすいのも有利だった。
小規模なブルワリーのクラフトビールも楽しみたい。カナダで修業した職人が造る「ノースアイランドビール(写真)」は、軽快な飲み口としっかりした麦芽の風味、アロマホップが爽やかに香るピルスナーが人気。直営バーでは定番の全6種類と期間限定ビールを用意。
■Beer Bar NORTH ISLAND
(ビアバー ノースアイランド)
営業時間:18時~24時
住所:札幌市中央区南2条東1-1-6 M’s二条横丁2F
休み:月曜
交通:札幌市営地下鉄大通駅から徒歩7分
TEL.011-303-7558
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北海道といえば、ジンギスカン。創業60年を迎えた「札幌成吉思汗(ジンギスカン)だるま」は、新鮮なマトンを毎日仕入れる。焼く際は、鍋のてっぺんに肉を載せ、周囲に野菜を並べよう。溢れ出た肉汁を野菜が吸収し、旨みを逃がさない。ビールとの相性もバッチリだ。
■札幌成吉思汗だるま 本店
ジンギスカン:1人前793円、野菜おかわり:216円、ビール:540円
営業時間:17時~翌3時(L.O.翌2時30分)
住所:札幌市中央区南五条西4 クリスタルビル1F
休み:年末年始
交通:札幌市営地下鉄すすきの駅から徒歩2分
TEL.011-552-6013
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緑豊かな環境で、北海道産の原料を用い、厳しい品質管理のもとビールができるまでの過程を学べる。約40分間の見学ツアーではガイドスタッフからクイズが出題され、大人も子どもも楽しめることうけあい。ラストは試飲コーナーで、できたてのビールを堪能して。
■サッポロビール 北海道工場
住所: 恵庭市戸磯542-1
見学受付時間:10時~11時、12時45分~16時
見学スタート時間:10時、11時、13時、14時、15時、16時
休み:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始、特別休館日
見学所要時間:約40分+試飲20分(2杯まで)
料金:無料
交通:JRサッポロビール庭園駅から徒歩10分
TEL.011-748-1876
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「さっぽろ夏まつり」の一環で、祭りのラスト7日間を飾る。浴衣姿の大人や子どもが大通公園に設置された櫓(やぐら)を囲み、ときに観光客をも巻き込んで盛り上がる。例年、お盆明けから徐々に涼しくなる北海道。残り少ない夏を楽しむ人々でいっぱいだ。
■北海盆踊り
日程:2014年8月14日(木)~20日(水)
時間:18時~19時(子供盆踊り)、19時~21時(北海盆踊り)
会場:札幌市中央区大通西2
交通:札幌市営地下鉄大通駅から徒歩4分
TEL.011-281-6400(さっぽろ夏まつり実行委員会)
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