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現地でカンパイ! これぞ飲むべき 全国 美酒の旅|徳島県三好市「四国酒まつり」ほか|Vol.10「四国の灘」とも称される阿波池田の山峡に隠れたこだわりの日本酒

阿波池田は、北は阿讃の山々、南は剣山山系に抱かれた盆地。冬は新潟並みの寒冷地となり、盆地特有の気候が酒造りを支えている。

地元では母なる水と呼ばれる、日本三大暴れ川のひとつ、吉野川。山紫水明の清らかな水を求めて、上流地区に酒造が集まった。

山間の阿波池田とは異なり、徳島県下は一般的に温暖な気候。粘土質の山沿いの水田で栽培される阿波町の「阿波山田錦」や、「佐那河内(さなごうち)米」など、県産の酒造好適米を用いた地酒もある。

三好市の酒造4蔵自慢の銘酒。右から「三芳菊」純米吟醸、「芳水」特別仕込大吟醸、「中和商店」『今小町』大吟醸、「矢川酒造」『笹緑』吟醸酒

四国4県から銘酒が集結する「四国酒まつり」。全種制覇はとてもできないので、「大吟醸のみ」「純米酒のみ」などテーマを決め、自分のペースで飲み比べたい。

明治・大正期より酒造りが始まった厳冬の阿波池田

 四国のほぼ中心部に位置する徳島県三好市は、四国山地を貫く吉野川の激流が造り出した大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)や、山肌に張り付いた民家の風景が美しい落合集落など、自然とともに息づく地。
 そのなか、阿波池田と呼ばれる池田町周辺エリアは、知る人ぞ知る酒どころだ。四国といえば温暖なイメージがあるが、周辺は剣山山系や阿讃山脈などに囲まれた盆地で、冬季の平均気温は新潟と同じ2度。厳しい冷え込みと、仕込みに欠かせない米、豊かな水があり、「四国の灘」と呼ばれていたこともあった。

 この地方で酒造りが盛んになったのは、大正期。もともとは江戸時代より“阿波葉(あわば)”という葉たばこの名産地であった。阿波池田の葉たばこは日本各地で絶大な人気を得て、富の象徴でもある“うだつ”の家が次々と造られた。しかし、明治時代のたばこ専売制に伴い、たばこ製造業者は続々と酒造業に転身。最盛期には10蔵が立ち並んだという。

 そもそも、日本三大暴れ川のひとつ、吉野川の伏流水がこんこんと湧き出る地。さらに、徳島県は酒造好適米「阿波山田錦」の産地でもあり、酒米と仕込み水には事欠かない。米作りから手がけ、銘酒『今小町』で名を馳せる「中和(なかわ)商店」、小さな蔵だからこその少量多品種で勝負する「三芳菊(みよしきく)酒造」、吉野川の清流南岸に蔵を構える「芳水酒造」、淡麗辛口の『笹緑』を手がける「矢川酒造」という4蔵が今も健在で、地酒ファンを唸らせている。

四国じゅうの酒が一堂に会するのん兵衛垂涎の「四国酒まつり」

 三好市の地酒4蔵はもちろんのこと、徳島、香川、愛媛、高知と、四国じゅうから銘酒40種をどどーんと揃えて飲み比べできるのが、1年に1度、三好市で催される「四国酒まつり」の地酒試飲会だ。まつり当日、会場内には蔵を開放する3蔵の仕込み水が一升瓶で置かれ、和らぎ水として自由に飲めるのも嬉しい。また利き酒大会も開催され、全問正解すると「利き酒名人認定証」の授与もある。

 さらに三好市内では、魅力あふれるイベントも同時開催。地元3蔵が見学無料で開放されるほか、地元農家や手作り作家が出店する「うだつマルシェ」、四国4県の産地米を用いた地酒をベースにした地カクテルの味を競う「四国地カクテルバトルロイヤル」など多彩だ。うだつの町並みが見られる池田町本町通りでは、刻みたばこ実演とともにキセルで一服する体験も行なわれる。さらに、三好市産そばや、地酒を用いた新名物・お美姫(みき)鍋、おつまみ販売もあるので、試飲会会場を飛び出して、地酒片手にほろ酔い散歩も楽しみたい。

 また、大歩危祖谷(いや)温泉郷にある湯宿「大歩危峡まんなか」では「四国酒まつりの夕べ」(前売り券2000円、当日券2300円)も開催。単純硫黄泉の湯に浸かって、酒と料理で「四国酒まつり」を締めくくる、ってのもオツなものだ。

【四国酒まつり】
日時:2015年2月21日(土) 10:00~16:00
●地酒試飲会
会場:サンライズ3F(三好市池田町マチ2183)
入場料:前売り券1600円、当日券1800円(たばこ資料館入場無料の特典付)

●酒蔵開放
日時:2015年2月21日(土)11:00~15:00
場所: 中和商店(三好市池田町サラダ1756)
三芳菊酒造(三好市池田町サラダ1661)
芳水酒造(三好市井川町辻231-2)   
入場無料
問合せ: 阿波池田商工会議所 TEL. 0883-72-0143   
これぞ「四国酒まつり」の3大ポイント
酒蔵開放

明治、大正期より営む三好市内3蔵が、まつりに合わせて酒蔵を開放。普段、なかなか見られない酒蔵の内部や酒造りの工程を、杜氏をはじめとする蔵人から説明を受けながら見学できる絶好の機会だ。また、蔵人しか味わえない搾りたて新酒の試飲もある。

うだつマルシェ

池田町本町通りにある、うだつ通り一帯で行なわれるマルシェ。三好市近隣の作り手たちが広げる店は約100店! 手作り作家の一点もの雑貨や、地元農家の自慢の美味しい野菜などが勢揃い。作り手との会話を楽しみながら、うだつの町並みをゆるゆるとめぐり歩いて。

ボンネットバス

普段は、かずら橋や祖谷渓谷をめぐるレトロな観光用ボンネットバスだが、酒まつり当日は阿波池田バスターミナルから「芳水酒造」までの無料シャトルバスとして運転。ただし人気のため、乗れないことも。その場合は定期路線バス(有料)を利用して。

地酒と楽しむ! 特選ご当地自慢
うだつの町並み|繁栄を象徴する歴史的町並み

「うだつが上がる」という言葉の“うだつ”とは、梁と屋根の骨組みの一番高いところに使う棟木(むなぎ)の間に建てる柱。四国の交通の要所であり、江戸時代にたばこで栄えた商家が今も旧街道に連なり、風情ある町並みを醸す。毎週土曜にガイドツアーあり。

■うだつの町並み

住所:三好市池田町マチ
時間:ガイドは土曜10:30~、3日前までに2名以上で要予約
料金:500円
交通:JR土讃線阿波池田駅から徒歩約10分
TEL. 0883-76-0877(三好市観光協会)
詳細はコチラ

うだつの家 たばこ資料館|阿波池田の町を支えた葉たばこ

三好市の山間部で盛んに栽培されていた葉たばこの“阿波葉”。最盛期は刻みたばこ業者が100軒以上もあったという。建物は明治期の業者の家屋で、繁栄の印“うだつ”がある。館内では刻みたばこの製造工程や器具類を展示し、カンナで葉を削る姿も再現されている。

■うだつの家 たばこ資料館

時間:9:00~17:00
休み:水曜、年末年始
料金:大人310円、高校・大学生210円、小・中学生100円
住所:三好市池田町マチ2465?1
交通:JR土讃線阿波池田駅から徒歩約10分
TEL. 0883-72-3450
詳細はコチラ

お美姫(みき)鍋|地酒を用いた新ご当地グルメ

地酒と味噌を用いた特製ダシに、阿波ポーク、生しいたけ、祖谷の石豆腐、そば米入り巾着など地元名物をふんだんに。大歩危祖谷温泉郷の宿で味わえる新ご当地鍋は、寒い冬に腹の底から温まって滋味豊か。締めは阿波特産の半田そうめんをつるり。

■渓谷の湯宿 大歩危峡まんなか

入浴付き大鍋昼食プラン:3600円~
お美姫鍋プラン1泊2食付き:1人1万2000円~
時間:チェックイン15:00~、チェックアウト~10:00
住所:三好市山城町西宇1644-1
交通:JR土讃線大歩危駅から車で約5分(無料送迎バスあり)
TEL.0883-84-1216
詳細はコチラ



取材・執筆:佐藤さゆり(teamまめ) イラスト=オギリマサホ
協力:阿波池田商工会議所、三好市役所
※掲載されているデータは2015年1月現在のものです。
※イベント内容は変更される場合があります。事前にご確認のうえおでかけください。
※本事業は、酒蔵ツーリズム推進協議会に協力しております。本連載により生じる直接または間接の損害等については、酒蔵ツーリズム推進協議会(またはそのメンバー)では何ら責任を負うものではありません。

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