2002年から販売されている上野駅限定の駅弁。同駅が2008年に開業125周年を迎えたのを機に内容をリニューアルした。
ふだんから特色のある駅弁を見慣れているだけに、「シャケ弁ですか?」と突っ込みたくなるほどのシンプル過ぎる中身にとまどってしまう。けれどよく見るとおかずのバリエーションは多彩で、駅長が推薦する焼たらこ、高菜炒め、うずらの卵のほか、一口ヒレカツ(上野はトンカツの発祥地といわれる)、蓮根金平(不忍池の蓮池に掛けて)、ごま昆布佃煮(上野の漬物店「酒悦」製)など、上野にゆかりのある料理まで盛り込まれている。
肝心の味覚は、白米の上で存在感を主張するサーモントラウトの塩焼がとにかくうまい。適度に脂ののった身は厚みがあり、塩辛さを抑えた上品な味わいを堪能できる。筑前煮やヒレカツの味付けもあっさりしており、見た目以上に健康志向なのもうれしい。母親の手作り弁当を思い起こさせる素朴な味わいに、旅情というより人情の温かさを感じた一品である。