昭和30年代から販売されているロングセラー駅弁。掛け紙には、松山の方言が相撲の番付表のように書かれている。横綱は「よもだ」(おとぼけ)、前頭は「まがる」(さわる)とある。へぇーっと感心しながら駅弁をつまめる。ためになる掛け紙だ。
フタを開けると、醤油の香ばしさが鼻をかすめる。名前の印象から塩辛い味を想像するが、実際はマイルドな醤油風味のご飯。古くから伊予地方では、米とゴボウ、ニンジン、松山揚げと呼ばれる油揚げといった具材を濃口醤油で炊き込んだご飯を「醤油めし」と呼び、ハレの席に欠かさずに出していたという。
ご飯は冷めてもふっくらとしており、一粒ひと粒に醤油の風味が染み込んでいる。豊かなコクと奥行きのある上品な味わいに感心しきり。これだけでも十分に食べ進むことができるが、ご飯の上には鶏肉、シイタケ、タケノコ、キヌサヤなどを配し、さらにデザートにサクランボを添えるという贅沢仕様。春の里山のような彩りに食欲がもりもりわいてくるので、完食するのは間違いなし。