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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

縄文土器型の容器でタイめしを味わう 縄文まほろば弁当 土器 八戸駅

 2010年12月4日に全線開通した東北新幹線。今後、新青森駅にも続々と新駅弁が登場するそうで、実に楽しみだ。青森県内での“駅弁王国”といえば八戸駅。この駅弁は、八戸市で「サリーズ ダイニング」などを経営する「ハートボックス」が調製している。

 高さのある巨大なパッケージは手提げ付きで重量感たっぷり。中には、三内丸山遺跡から出土した土器をモチーフに、外周に板状土偶をあしらった器が入っている。芸術性を感じさせる容器には、縄文時代から食べられ、現在も陸奥湾やその近海で獲れるマダイのだしで炊いたタイめしの上にタイの漬やそぼろ、身欠きニシンの醤油漬、陸奥湾産のホタテといった海の幸を豪快に盛り込んだ。副菜には季節の素材を取り入れるなど、まさにまほろば(古語=素晴らしい場所)の豊かさを実感できる内容に仕上がっている。

 中でもタイめしは絶品。焼いたアラからだしを取って炊き上げているため香ばしさの中にほのかな甘さがあり、食べはじめると箸が止まらなくなる。器が深いためボリュームもある。食べ切れなかったぶんは家に持ち帰り、熱いほうじ茶をかけてタイ茶漬けとして味わうのもおすすめだ。



今が旬、東北新幹線で行こう
  • 価格:1680円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:ハートボックス
  • 電話:0178-38-9297

地場産のうまいものを一堂に集めた大宮駅の名物 黒豚みそだれ弁当 大宮駅

 埼玉県が力を入れて生産しているブランド豚「彩の国黒豚」をメーン食材にした駅弁。開発したのは埼玉県内にやきトンや焼き鳥店を展開する「ひびき」。カリスマ販売員として知られるNRE大宮営業所の三浦由紀江所長が監修役として参加した。

 「彩の国黒豚」は肉質がやわらかいバークシャー種で、さらに味を良くするため芋類を飼料にしているそう。上等な豚肉である。それをしょうが焼きにして、「ひびき」秘伝のみそだれをまぶした。豚肉とピリ辛のみそだれとが口の中で交わって、うまさ爆発!ご飯は、県産のブランド米「彩のかがやき」。

 自慢のたれがしみ込んだご飯は、これだけでも十分に食べられる。が、付け合せに添えてある秩父名物のしゃくし菜がよいおかずになる。ほんのり香るしそがより一層食欲をそそる。そのほか、地場産の野菜を使用したきんぴら、デザートとして芋ようかんを盛り込んでいる。地産地消に徹底してこだわった新しい埼玉名物。1日20~30個の限定販売なので大宮駅に行ったらわき目もふらず手に入れよう。早い者勝ちだ。

「トレたび」おすすめ情報

大宮といえば「てっぱく」!
  • 価格:980円
  • 種類:肉系
  • 調製元:ひびき
  • 電話:0120-22-9646

郷土料理をアレンジしたグラタンが珍しい 甲府駅のおべんとう 甲府駅

 早朝の甲府駅は、初夏の到来をいまや遅しと待ちかねたハイカーでいっぱい。新緑の野山を歩く喜びが笑顔となってあふれ出ている。「甲府駅のおべんとう」は、そんなハイキングシーズンにぴったりの駅弁だ。

 容器には、青梅入りのご飯、幕の内弁当に欠かせない三種の神器(カマボコ、焼き魚、卵焼き)のほか、山梨の郷土料理ほうとうのグラタンが存在感たっぷりに並ぶ。

 グラタンは、味噌を練り合わせたほうとうを根気よくかき混ぜ、カップに入れた後でカボチャをトッピングし、パン粉をふりかけてオーブンで焼いたもの。味噌風味を加えてあるのでコクがあり、カボチャの旨味も見事に生かされている。幕の内弁当に欠かせない伝統的なおかずに、ほうとうのグラタンという珍味を交えた大胆な発想が見事だ。

 食事の締めは巨峰寒天餅のデザート。まろやかな味わいが、おいしい食事の余韻を長持ちさせる。最後まで緊張感を保つこの駅弁には、値段以上の価値がある。人気も上々で早々に売り切れることが多いため、確実に入手したいなら予約がお勧めだ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

今年は中央本線でゆったり避暑の旅
  • 価格:900円
  • 種類:幕の内
  • 調製元:(株)丸政
  • 電話:0551-36-2521

味付けの異なる2種類の肉を味わえる欲張り駅弁 対決駅弁 飛騨牛VS味噌焼ポーク 高山駅

 JR東海の「冬の飛騨路キャンペーン」に連動して企画された駅弁。当初は期間限定で売り出されたが、好評により定番駅弁に切り換えられた。

 内容は、ふっくらと炊き上げたご飯の上に飛騨牛のしぐれ煮と豚肉の味噌焼きをのせた肉系弁当。容器の下部に発熱体が仕込まれており、ヒモを引いて6分ほど待つと熱々の弁当が完成する。

 対決駅弁と銘打つだけに、おいしさを比較しながら食べるとよいだろう。しぐれ煮は、長時間かけて甘辛く煮込んでいるが、飛騨牛の持ち味をこわさず、甘みのある脂身は絶品。しかも肉汁たっぷりに仕上がっているため、ご飯との相性は抜群だ。味噌焼きポークは、肉厚で食べ応え十分。加熱により脂が溶けて、肉の旨みとまろやかさが一体となったおいしさを堪能できる。個人的にはポークに軍配を上げたい。どちらも濃いめの味付けなのでビールにぴったり。飛騨の地酒を用意してもよいだろう。

 加熱式の駅弁は、容器こそ大きいけれど中身の少ないケースが散見される。けれどこの駅弁はご飯、おかずともにボリュームたっぷり。百貨店の駅弁大会でも売り切れが続出したという人気ぶりにも納得である。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

ワイドビューで高山へ、夏の奥飛騨も美しい!
  • 価格:1000円
  • 種類:肉系
  • 調製元:金亀館
  • 電話:0577-32-0184
※掲載されているデータは平成23年6月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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