山陰地方に伝わる神話をモチーフにした駅弁。素材や製法にこだわる米吾が調製する隠れた名品だ。
正方形のプラスチック容器に厚紙のフタをのせ、四隅をひもで固定した。中身は、炊き込みご飯の上に20~30個の赤貝(サルボウ貝)をのせた貝弁当で、おかずとして昆布巻き、玉子焼き、ちくわの磯部揚げなどを添える。メーンとなる炊き込みご飯は、出雲神話で大国主命(おおくにぬしのみこと)を助けた赤貝姫にちなみ、大粒の赤貝のむき身を混ぜ合わせた鳥取県産の米を地伝酒で炊いたもの。地伝酒は、醸造したもろみに灰を混入した日本酒の一種で、ヤマタノオロチを酔わせた酒といわれる。
甘く煮付けた赤貝は、噛むほどに磯の香りが立ち昇り、その旨みは伝説の酒で炊いたご飯のほんのりとした甘さと絶妙に溶け合う。まさに天にも昇るような極上の味覚。炊き込み飯に振り掛けられたゴマや青海苔がアクセントになっており、飽きずに一気に平らげられる。
手間と技巧を存分に使ったこの駅弁は米子駅でしか購入できないので、事前に予約を入れてから訪れたい。