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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

100%純系の名古屋コーチン肉を使用したヒット商品 純系名古屋コーチンとりめし 名古屋駅

 名古屋メシといえば、味噌カツ、エビフライ、天むす、そして名古屋コーチン。この有名な名古屋地鶏を使った弁当はたくさんあるけれど、さすがに「純系」と銘打ったものは多くない。ここでいう純系とは、愛知県畜産総合センター種鶏場で生産・管理された、100%純血の名古屋種の鶏。駅弁の名前は、これを使っていることの証明である。

 創業半世紀以上の老舗「名古屋だるま」が15年前に発売。競争の激しい名古屋駅でロングセラーを続け、現在では1日平均400個を売り上げるヒット商品に成長している。竹皮を編んだ細長い器に、朱色の掛け紙を巻く。中身は、鶏飯の上に純系名古屋コーチン3切れと山菜、椎茸、沢庵をのせた鶏肉弁当。ご飯は、鶏のダシがしっかりとしみ込んで濃厚な味わい。その上に照り焼きにした100%純系の名古屋コーチン肉がごろりとのる。鶏肉には、適度にのった脂と弾力性に富んだ肉質、そしてコクのある味わいが生きており、旨味を存分に味わうことができる。

 付け合わせとのバランスもよく、車窓風景を楽しむ間もなく完食へと導く。カロリーを気にする女性に人気が高い駅弁だが、腹まわりが気になる男性にも、もちろんお勧めだ。

全国の駅弁から選りすぐりの「とりめし」を紹介!

味わいが深まって復活した大阪の名物駅弁 八角弁当 新大阪駅

 35年にわたり親しまれた大阪の名物駅弁は、調製元・水了軒の廃業により歴史をいったん閉じたが、駅弁づくりに熱意を燃やす人たちの努力に支えられて今年2月に復活した。

 旧水了軒を工場ごと買い取ったのは総菜製造販売の「デリカスイト」。駅弁復活の動きに伴い旧水了軒のスタッフを同社に迎え入れ、内容の検討を行なったという。水了軒が調製する八角弁当は、赤魚味噌祐庵焼や穴子鳴門巻、 烏賊雲丹焼、煮物など手の込んだ17種類のおかずをぎっしりと詰め合わせた幕の内弁当。復活バージョンでは、当時の内容を再現しながら、これまで一部に使われていた冷凍野菜を生鮮品に変えるなどの変更を行ない、よりグレードアップされた。これにより、関西風のあっさりとした味つけに加え、煮物や卵焼きといった幕の内弁当に欠かせないおかずの味わいが深まり、完成度の高い一品に仕上がっている。大阪にはやはり「八角」がないと収まらない。

 あえて難点をあげるなら調製個数が少ないことで、確実に入手するには事前に予約するのがお勧めだ。

低価格・カロリー控えめがうれしい東京駅の人気駅弁 深川めし 東京駅

 東京駅では2種類の「深川めし」が販売されている。ひとつはジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP)、もうひとつが今回紹介する日本レストランエンタプライズ(NRE)製である。

 掛け紙は『東海道五十三次』の版画を思わせるレトロタッチで、漁船の向こうに夕日に輝く富士山を望む。千社札風にアレンジされた「深川めし」の文字も情緒たっぷりだ。

 かつての深川めしは、アサリ汁をご飯にかけて食べる「ぶっかけめし」風だったというが、現代版の弁当は、アサリの炊き込みご飯の上に海苔を敷き、ふっくらと焼き上げたアナゴの切り身とハゼの甘露煮をのせたもの。付け合わせはあっさり味の煮物で、タケノコ、ニンジン、レンコンなどが盛られている。見た目は地味だが、千円札1枚でおつりがくる低価格が根強く支持されており、旅行や出張に行く時は必ずこの駅弁を買うという人も多い。揚げ物が入っていないため、残さず平らげても521キロカロリーというヘルシーさも、体型が気になる人に好評だ。

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東京駅をはじめとした“後世に残したい名駅舎”をご紹介

無法松の豪快な生き様をイメージした駅弁 無法松べんとう 小倉駅

 “小倉生まれで玄海育ち”という歌で有名な富島松五郎(無法松)をモチーフにした駅弁。明治24年(1891)創業の北九州駅弁当が調製している。

 パッケージのデザインは個性的だ。容器は竹を半分に割ったような形状のプラスチック製で、これは松五郎の竹を割ったような性格を表したもの。この容器を細長い紙袋を入れ、両端を紐で結んで持ち手を作っている。これは車夫をしていた松五郎にちなんだもので、車夫が腰に弁当を結びつけていたスタイルを再現しているという。

 中身は、山菜おこわの上に、焼鳥やサワラの味噌焼、子持ちイカ、椎茸煮、酢ごぼう、奈良漬といったおかずを盛り付けたもの。ギンナンやキクラゲ入りのおこわは歯ごたえがあって飽きずに食べられ、バラエティに富んだ副菜も素朴でやさしい味わいに仕上がっている。紅白のかまぼこは太鼓、ごぼうはバチをイメージしており、無法松による祇園太鼓の乱れ打ちをイメージさせるなど芸が細かい。多彩なおかずを肴にしたたかに酔いしれれば、義理と人情に生きた松五郎の豪快な一生が脳裏に浮かぶだろう。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

小倉駅~大分駅間の美しい車窓を満喫
  • 価格:920円
  • 種類:キャラクター
  • 調製元:北九州駅弁当
  • 電話:093-531-0036
※掲載されているデータは平成24年3月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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