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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

釜炒りのカニ身がうまいロングセラー駅弁 かなやのかにめし 長万部駅

 長万部名物といえば由利徹のギャグと、かなやのかにめし。ここで取り上げるのは、もちろん後者である。

 終戦直後の北海道は食料基地として注目を集め、鉄道分岐点の長万部駅でも列車を待つ人が長い列を作った。米はなかったが、当時の内浦湾では毛ガニが大量に獲れた。獲れすぎる毛ガニは商品価値が低く、むしろやっかいな存在だったという。調製元の創業者、初代・金谷勝次郎はこのカニに着目し、50種類以上もの試作品をつくった後、現在の「かにめし」を完成させた。駅弁は昭和25年に発売され、大ヒットを記録した。

 ふっくら炊いた北海道米「ほしのゆめ」の上にカニのほぐし身を敷き詰め、酢漬けカニ身、錦糸玉子、梅干、椎茸、グリーンピースで彩りを添えている。カニのほぐし身を釜で炒り、水分を飛ばすことで旨みを凝縮したのがこの駅弁の神髄で、ひと噛みごとに旨味が広がる。カニ身には隠し味として刻んだタケノコがブレンドされており、キレのある食感と、ほどよい甘さを引き出している。予約すると時間に合わせて調製してくれるため、温かい状態で食べることができる。

甘エビから桜エビ、ゆでエビからエビフライ!

武将ゆかりのおかずから仙台の食材の豊かさを実感 伊達武将隊弁当 仙台駅

 伊達武将隊は、仙台の観光PRを目的に発足した集団で、戦国武将などの衣装に身を包み、仙台城跡を拠点にPR活動を展開している。この駅弁は、伊達武将隊を軸に仙台の食文化を広めたいというコンセプトで企画され、平成22年9月に発売された。しかし東日本大震災の影響で入手の難しい素材が出てきたため、平成23年7月には内容の一部をリニューアルしている。

 パッケージには、2人の伊達政宗を含む伊達武将隊11人の画像を掲載した。内容は、中央に亘理(わたり)町名産の鮭はらこめし、その周りに仙台名産の笹かまぼこ、白石市名産の白石温麺(うーめん)の特製サラダ、三陸名産の白身魚の香味揚げなど、伊達政宗を中心とする武将たちゆかりの地にちなんだ料理や特産品を詰め合わせた弁当。山海の幸が彩りよく並べられており、宮城県の食材の豊かさを実感できる。中でもメインとなる鮭はらこめしは宮城県の郷土めしでもあり、味わい深さは秀逸。県産のひとめぼれを使用したご飯はふっくらと炊き上がり、おかずの味を引き立てる上品で淡白な味わいの中で、イクラの食感が巧みなアクセントになっている。おまけとして付いている武将隊シールも楽しい。

「トレたび」おすすめプレイバック

全国各地の戦国武将ゆかりの駅弁が登場
  • 価格:1000円
  • 種類:キャラクター・幕の内
  • 調製元:(株)こばやし
  • 電話:022-293-1661

だるま型の容器に山の幸のおかずがたっぷり だるま弁当 高崎駅

 毎年1月、高崎市郊外の少林山達磨寺では「だるま市」が開催され、開運縁起の目なしだるまが売り出される。「だるま弁当」はこの行事にちなんで開発された駅弁で、“たかべん”の愛称で親しまれる高崎弁当が昭和35年に発売した。だるまをかたどった容器は当初、瀬戸焼が使われたが、現在はプラスチック製に変わっている。

 内容は、茶飯の上に、山菜きのこ煮、鶏八幡巻、タケノコ煮、コールドチキン、コンニャクなどのおかずを豪快に盛り付け、普茶料理風に調理したお弁当。フタを開けて真っ先に目に飛び込むのが紅玉と黒玉の2種類のコンニャク。弾力に富んだぷるんとした食感が思いのほか楽しく、これから数々の山の幸を味わうという期待感を膨らませる。おかずでは山菜きのこ煮が絶品。醤油味で炊いた香り高い茶飯との取り合わせが抜群で、箸を動かすスピードがいやが上にも加速する。

 だるま型の容器は捨てるにしのびなく、小物入れやレシートボックスとして再利用するために毎度持ち帰っている。そういうわけでわが家には、ありがたい達磨大師のお顔がどんどん増えていくのだった。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

見て楽しい、食べておいしい
  • 価格:900円
  • 種類:炊き込み
  • 調製元:高崎弁当(株)
  • 電話:027-346-2571

水揚げ高日本一、苫小牧漁港名産のホッキ貝を堪能 ほっきめし 苫小牧駅

 ホッキ貝(北寄貝)は、ウバガイ(姥貝)を正式名称とする二枚貝。ホッキ貝の水揚げ高が日本一の苫小牧漁港では、昨年秋から「苫小牧漁港ホッキまつり」を開催してこの貝の特長を広くアピールしている。

 ホッキ貝をメインにした駅弁を調製するのは明治43年(1910)に苫小牧市で創業したまるい弁当。「ほっきめし」の販売を開始したのは平成9年で、現在では同社の看板駅弁の一つに成長している。

 内容は、炊き込みご飯の上に肉厚のホッキ貝をのせたシンプルな貝弁当。ホッキ貝のダシ汁を使って上品に仕上げた炊き込みご飯には、貝柱やヒモ、姫竹、ワラビ、シイタケ、ニンジンなど山海の具が混ぜ込まれており、薄口でとても豊かな味がする。醤油ベースで煮込まれたホッキ貝は、やわらかい身の中にコリッとした食感が同居しており、噛むほどに旨みがじわりと内側からしみ出してくる。貝の煮ダシを使った炊き込みご飯との相性も抜群で、食べはじめると箸が止まらなくなる。全体にやさしい味わいなので、ホッキ貝を食べず嫌いの人にもお勧めできる。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

苫小牧駅から日高本線で勇払(ゆうふつ)原野をひた走る
※掲載されているデータは平成24年4月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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