長万部名物といえば由利徹のギャグと、かなやのかにめし。ここで取り上げるのは、もちろん後者である。
終戦直後の北海道は食料基地として注目を集め、鉄道分岐点の長万部駅でも列車を待つ人が長い列を作った。米はなかったが、当時の内浦湾では毛ガニが大量に獲れた。獲れすぎる毛ガニは商品価値が低く、むしろやっかいな存在だったという。調製元の創業者、初代・金谷勝次郎はこのカニに着目し、50種類以上もの試作品をつくった後、現在の「かにめし」を完成させた。駅弁は昭和25年に発売され、大ヒットを記録した。
ふっくら炊いた北海道米「ほしのゆめ」の上にカニのほぐし身を敷き詰め、酢漬けカニ身、錦糸玉子、梅干、椎茸、グリーンピースで彩りを添えている。カニのほぐし身を釜で炒り、水分を飛ばすことで旨みを凝縮したのがこの駅弁の神髄で、ひと噛みごとに旨味が広がる。カニ身には隠し味として刻んだタケノコがブレンドされており、キレのある食感と、ほどよい甘さを引き出している。予約すると時間に合わせて調製してくれるため、温かい状態で食べることができる。