アナゴの産地は瀬戸内海と江戸前が二大勢力だが、数的には瀬戸内海産が圧倒する。今回紹介するのは、瀬戸内海産の良質アナゴを使った、高松駅を代表する駅弁だ。
金比羅さんの帆掛け船を連想させる舟形の八角形容器を厚紙のパッケージで包み、ヒモで十字にしばった。中身は、香川産のヒノヒカリをイリコのダシ汁と薄口醤油で炊いたご飯の上に、アナゴの蒲焼や刻みアナゴ、アナゴの八幡巻、錦糸卵、煮エビ、醤油豆、銀杏を散らしたアナゴ尽くし弁当。アナゴの蒲焼は、脂が十分にのっており、歯ごたえもよい。ほどよい甘さのタレが冷めてもおいしいと評判の炊き込みご飯にぴったりで、両方を一気にほお張るとおいしさも倍増する。アナゴを主役にした駅弁は、宮島口駅(広島駅)や徳山駅(山口県)などでも販売されているが、いずれも甲乙つけがたい名作揃いなので、機会があればぜひ食べ比べてほしい。
脇役で光るのは醤油豆。ソラマメを醤油で甘辛く煮た香川県の郷土料理で、香ばしい味わいが田舎料理の風情を漂わす。駅構内には宇高連絡船で出されていた連絡船うどんを提供する店がある。時間に余裕があれば立ち寄りたい。