和歌山駅では、国鉄民営化以前から阪和第一食堂と水了軒(現・和歌山水了軒)の2業者が駅弁を販売している。長い歴史の成せるワザか、きちんとすみ分けされており、前者は阪和線(2・3番線)、後者は紀勢本線(4・5番線)のホーム上に売店がある。
えびずしは、阪和第一食堂が調製する名物駅弁だ。白いプラスチック容器の中には、色鮮やかなエビをのせた握り寿司が6カン並ぶ。内容がシンプルなだけに、素材には徹底してこだわっている。シャリは秋田県産あきたこまちを炊いた酢飯、エビは大ぶりで肉厚の天然ものを使っている。つやつやと色味のよいエビをのせた寿司をつまんで口中にほうり込む。何より感嘆するのはエビの絶妙な茹で加減。天然ものならではのプリッとした食感を見事に残しており、ひと噛みごとに海の幸特有の旨味を味わえる。酢飯との相性も抜群で、少々高めに設定された値段にも納得できる。
添付されたレモンの汁を食べる前にふりかけておくと、全体の味をしゃきっと引き締めてくれる。エビ好きならずとも見逃せない逸品といえそうだ。