調製元の柳屋は、明治44年(1911)に和歌山線吉野口駅で「鮎ずし」の販売を開始した老舗。近年は「柿の葉寿し」のヒットで全国にその名が知られるようになった。「きぬ巻時雨寿司」は、具材をおぼろ昆布で巻いた寿司がメーンの弁当で、おぼろ昆布が絹のように見えることから命名されたという。
紙製の長方形容器に、おぼろ昆布に包まれた10カンの寿司が整然と並ぶ。酢飯は、滋賀県産のコシヒカリを使用して炊いたもので、中央にはアサリの時雨煮が入っている。この酢飯を包むのが、カンナで薄く削った北海道産の真昆布だ。海苔でなく昆布を使ったのがこの寿司の特徴で、ショウガを入れて煮込んだアサリの甘辛い味覚と、薄口に仕上げたおぼろ昆布の風味が見事にマッチして、濃厚だが上品な味わいが口中いっぱいに広がる。10カンとも内容は同じだが、飽きずに完食できる。
滋賀県産の米、小豆島の醸造元がつくった醤油、そして北海道産の真昆布と、厳選した素材による組み合わせの妙を楽しめる一品。このボリュームで500円以内に収まる値段設定にも拍手を送りたい。