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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

仲よし夫婦のように並んだ2本のアナゴが絶品|夫婦あなごめし|広島駅

 夫婦と書いて「みょうと」と読むのだそう。今回は、厳選したアナゴを使用した広島駅弁当の駅弁を紹介する。

 弁当名を大きく描いたパッケージを開けると、白いご飯を覆い隠すように横たわる2本のアナゴが現れる。オス・メスの違いは不明だが、2本のアナゴが並ぶ様子は仲のよい夫婦のように見えて、温かい気持ちにさせてくれる。箸で持ち上げると、尾のほうには折り返しがあり、ボリュームも申し分なしだ。秘伝のタレでじっくりと煮詰めたというアナゴは、ふっくらとやわらかく仕上がっており、上品な味わいの中に濃厚な旨みが詰まっている。濃口にしたいという場合は、添付のタレをふりかけて。アナゴの上に垂らしたタレは国産米を炊いたご飯にもほどよく染み渡り、味覚のコンビネーションはいっそう深まる。

 付け合わせは広島菜の漬物と、アナゴの中骨を素揚げしたせんべい。からりと揚がった骨せんべいは食感がよく、塩気もきいているため酒の肴にぴったり。酒は進むしアナゴは上出来と、まったく文句なしの駅弁である。

廿日市・宮島でも穴子料理が味わえる!

地鶏肉の照り焼きとかしわめしのコラボ駅弁|佐賀みつせ鶏とりトロ弁当|佐賀駅

 九州名物の「かしわめし」と「鶏の照り焼き」を一度に味わえる欲張り弁当。2008年に発表された「第4回九州駅弁ランキング」で3位に入賞したこともあるなど、人気・実力ともにトップクラスの駅弁だ。

 みつせ鶏は、佐賀県と福岡県の県境にある三瀬峠で育てられている外国産の品種。その鶏から少量しか取れない胸と手羽の間の肉を照り焼きにしたのが“とりトロ”である。食感はどうかと口に含めば、肉質は柔らかく、肉とタレが混ぜ合わさった旨味が口中を満たす。見た目はごく普通の鶏肉の照り焼きなので、極上ともいえる味覚とのギャップに強いインパクトがある。

 かしわめしは淡白な仕上がりで、衝撃度は薄い。しかし個性を抑えたぶん、とりトロのおいしさを見事に引き立てている。ご飯に鶏の旨味がしっかり染み込んでいるため、とりトロとの相性は抜群で、1個といわずダブルで食べたくなる仕上がり。

 容器はいまどき珍しい竹皮製。車内で開くと懐かしい竹の香りがふわりと立ち昇り、条件反射のようにお腹がぐうと鳴った。

「トレたび」おすすめプレイバック

佐賀駅近辺で食べられるご当地B級洋食を紹介!
  • 価格:730円
  • 種類:肉系
  • 調製元:(有)新玉
  • 電話:0952-31-1212

県産コシヒカリのご飯とおかずの相性がぴったり|ほくほく弁当|越後湯沢駅

 米どころ新潟の実力を改めて確認できる駅弁だ。「ほくほく弁当」という名称は、六日町駅と犀潟(さいがた)駅を結ぶ北越急行「ほくほく線」に由来するという。調製元は魚沼市の川岳軒。

 農家のお母さんといった風情の女性がほほ笑むイラスト付きのパッケージにプラスチック製のトレーを収める。中身は、炊き込みご飯のほか、焼き鮭やチキンナゲット、ぜんまい、こんにゃくの煮物、卵焼き、数の子といった多彩なおかずを盛り込んだ幕の内弁当。

 この弁当では、まずご飯から味わってほしい。魚沼産コシヒカリを使った醤油風味の炊き込みご飯に山菜やクルミなどを混ぜたもので、もちもちとした食感の中にほどよいアクセントが織り交ぜられて、しみじみとおいしい。幕の内駅弁の三種の神器の一つである焼き魚には、鮭の味噌漬け焼きが採用されており、甘さを含んだ豊潤な味わいがご飯にマッチする。おかずの中ではチキンナゲットだけが異質だが、食べてみるとジューシーで全体のバランスを崩さない。
 越後の山海の味覚を満載しながらも850円という価格にほくほく笑顔の一品だ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

越後湯沢駅には美肌効果が期待できる酒風呂が!
  • 価格:850円
  • 種類:幕の内
  • 調製元:川岳軒
  • 電話:025-783-2004

食材王国みやぎのおいしさが詰まったキャラ弁当|むすび丸おむすび弁当|仙台駅

 「むすび丸」は、宮城県の観光PRキャラクター。同県の豊かな食と文化をおむすびで表現し、伊達政宗のかぶとを飾りつけて擬人化している。このユニークなキャラクターをモチーフに企画されたのが「むすび丸おむすび弁当」だ。

 むすび丸のイラストを掲載したパッケージに発泡材容器を収めている。中身はネーミングどおりのおむすび弁当で、おかずには牛肉いため煮、サケの漬け焼き、鶏の照り焼き、気仙沼産サンマの竜田揚げ、笹かまぼこなど県内の名産品を数多く詰め合わせた。気になるおむすびは、冷めてもおいしいと評判の鳴子米「ゆきむすび」を使った白飯と雑穀の2種類で、伊達政宗のかぶとの三日月はパプリカ、目は赤えんどう豆、そして口は海苔で表現している。

 おかずの中ではサケが絶品。酒粕に漬けてから焼いているため、甘辛の味わいがビールにマッチする。薄味に仕上げられたサンマもおいしいが、これはおむすび丸の大好物だそう。山海の幸に恵まれた宮城県の“ゆるキャラ”はさすがに舌が肥えている。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

青春18きっぷで仙台発着の旅を楽しもう!
  • 価格:840円
  • 種類:キャラクター
  • 調製元:(株)こばやし
  • 電話:022-293-1661
※掲載されているデータは平成25年3月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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