道南観光の拠点として便利な函館・湯の川温泉は、350余年の歴史を持つ北海道屈指の温泉街。夜にはイカ釣り漁船の漁火が連なる海沿いに位置し、寒さが身に染みるこの季節には、またいっそう恋しくなる北の名湯だ。
ここに2010年9月、これまで函館にはなかったタイプのホテル、「望楼NOGUCHI函館」がオープンした。日常を遮断する重厚なコンクリートブロックのエントランスには水盤を配するなど、「幽玄」をコンセプトに独特の演出が施されている。空間デザインは懐かしさと新しさ、和と洋が入り交じる函館の街並みを反映させたような和モダンテイスト。そのくつろぎに満ちたムードに、連泊を希望する客も多いという。
部屋は大正浪漫をモチーフにしつらえた「WAMODERN(ワモダン)」、一人旅専用の「OHITORISAMA(オヒトリサマ)」、120㎡のメゾネットルーム「SUITE(スイート)」の3タイプがある。なかでも「SUITE」は部屋の両側に窓があり、どちらの景観も楽しめる。セミダブルのベッドやフランスの化粧品メーカー「ロクシタン」社製のアメニティなど、ワンランク上のくつろぎを味わえる。また、この「SUITE」と「WAMODERN」には客室展望風呂も完備されており、浴槽にあふれる湯はもちろん湯の川の名湯。24時間誰に気兼ねすることもなく、のんびりと入浴することができる。
朝夕の食事は、霧に包まれた竹林が出迎えてくれる「CHIKURIN」など、個性豊かな3カ所の食事処で供される。夕食は和食を中心に、フレンチやイタリアンを組み合わせた創作懐石。箸の進み具合に合わせて、ひと品ずつできたてが運ばれる。年4回、季節ごとに変わる献立は、松前産のアワビや隣町・大沼の黒牛、七飯の野菜など道南産の食材にこだわり抜いた品々。特に魚介類の鮮度には配慮し、専用の生(い)け簀(す)が設けられている。旅の楽しみのひとつである地元の旬の味覚が、1泊の食事でくまなく網羅されているのもうれしい限りだ。
館内にはカフェやバー、ライブラリー、ビリヤード、大浴場、そしてハーブオイルを使用したエステや女性専用の岩盤浴もあり、パブリックスペースも充実している。
いっそ周辺観光はやめにして、ホテルで贅沢なひとときを過ごしていたい……。事実、そんな声も聞こえてくる居心地のよさこそ、まさに“極上ホテル”と呼ぶにふさわしい。