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神楽どころとして、全国的に名高い広島県。特に、安芸高田市、安芸太田町、北広島町を中心に、時代の流れに沿って進化しながら今日まで伝承されてきた“芸北(げいほく)神楽”の人気は高い。現在、約150もの神楽団が活動している。
「芸北神楽」と呼ばれるこの神楽は、伝統の神楽が分かりやすくテンポの早い形式に整えられ、“伝統芸能の新たな潮流”として地元広島で人気沸騰。『紅葉狩(もみじがり)』や『八岐大蛇(やまたのおろち)』など多彩な演目と、舞台演出などに派手な趣向を凝らしたこの“スーパー神楽”は多くのファンを虜にしているという。
そんな人気の神楽を一目見てみたいと今回訪ねたのは、安芸高田市の「神楽門前湯治村」。ここではほぼ毎週末、神楽の公演や公開練習が行なわれている。
目の前で繰り広げられる迫真の演技。演者の息遣いまでもが間近に感じられる、ライブならではの臨場感や緊張感。その迫力はTVやDVDなどでは到底味わい尽くせない感動だ。激しい動きの中で一瞬のうちに衣装が変わったり、美女が段々と恐ろしい鬼女に変わっていったり……。とにかく舞台から目が離せないシーンが連続し、息をつくのも忘れてしまいそうだ。
「神楽」と聞くとお堅いイメージだが、客席を見回すと幼い子ども連れのファミリーや若い女性グループ、カップルなどの姿が目立つ。みんなお菓子やお弁当をほおばったり、お酒やジュースを飲んだりしながら、思い思いに楽しんでいる。伝統芸能ながら、なんと大らかな! この雰囲気も神楽人気の秘密なのだ。熱を帯びた舞台の下では、子どもたちが嬉しそうに踊っていた。ニッポン人のDNAが自然とうずいてしまうのだろう。
また、客席にはお目当ての役者を追いかける熱心なファンもいた。
さて、そんな多彩なファンをもつ神楽団の人達の仕事は多岐にわたる。共通しているのは、みんな神楽がたまらなく大好きで、1回1回の上演に全力投球していることだ。化粧ひとつにしても、役者同士や自分ですることもあるが、大抵は役者の身内が行なう。普段は茶髪のお兄さんも、化粧であっという間に大変身。役者として拍手喝采を浴びていた。
神楽の衣装も見どころの一つだ。絢爛豪華な刺繍を施された衣装は、数百万円するものも多いという。また、クルクル舞って軽そうに見える衣装は、物によってはフル装備で20kgもあるそうだ。「女性の役者さんは大丈夫?」と心配になってしまったが、団員のほとんどは男なので心配ないらしい。
“一度観ると7割の人がハマる!”といわれるひろしま神楽。芸術の秋、ほとばしるような大迫力の伝統芸能を、本場で、“生”で体験してみては。
開催日:平成22年1月9日(土)~11日(月・祝)
場所:ALSOKホール(広島県立文化芸術ホール)
入場料:S席3000円、A席2000円、学生席(小・中・高校生)1000円
※入場料は税込価格。当日券は500円増し。
■チケットに関する問合せ TEL.082-222-0044(RCC文化センター内)