紅葉の名所・紅葉谷公園へはフェリー乗り場から徒歩約20分。秋には紅葉が燃えるように色づく
古来、「神をいつきまつる島」と崇められてきた宮島。その玄関口に鎮座する厳島神社は、海に浮かぶ朱塗りの大鳥居と国宝「平家納経」によって余りにも有名だ。創建は推古元年(593)。イチキシマヒメノミコト、タゴリヒメノミコト、タギツヒメノミコトが祀られ、1400年以上の歴史を誇る。
仁安3年(1168)に平清盛によって造営された海上社殿は、平安朝貴族の優雅な建築様式・神殿造で、その美しいたたずまいは前面に広がる紺碧の海と背後の霊峰・弥山(みせん)とともに平成8年、ユネスコの世界文化遺産に登録された。
本殿のみならず、舞楽が奉納される高舞台や国内で唯一海に浮かぶ能舞台、長橋や反橋(そりばし)など見所が多く、厳島神社だけでもあっという間に時間が過ぎてしまう。夕暮れ時に居合わせれば大小の灯籠に灯りが点り、実にロマンチック。ライトアップされた海上の神社は水面に灯りを映し、昼とは違った幻想的な眺めで迫ってくるだろう。
また、「神の島」と呼ばれる宮島で、大切にされてきたのが神の使いといわれる野生の鹿。宮島桟橋付近などには鹿が群れて、観光客の人気の的になっている。
碧い海と緑の山、そびえ立つ朱の鳥居とのコントラスト。宮島航路で訪れる観光客の目を楽しませる
朱塗りの柱で構成される廻廊。東廻廊と西廻廊の総延長は約280mにも及ぶ
宮島の中央に位置する弥山。信仰の対象でもあるその山の名の由来は、「形が須弥山(しゅみせん)に似ていたから」とか「元々、御山(みせん)と呼んでいたから」などの説がある。北側斜面には、天然記念物に指定される原始林が広がり、山頂から望む瀬戸内海や四国連山は雄大かつ絶景だ。山頂に御山神社、山腹に大聖院の堂宇、山麓に厳島神社があり、年中参拝客で賑わいをみせている。
原始林の麓には、紅葉の名所として有名な「紅葉谷公園」が広がっている。巨石や谷川にかかる橋を巧みに配した渓谷美。秋には燃え立つような紅葉が加わり、思わず息を呑む。さらに、そこから足を伸ばし「宮島ロープウエー」の空中散歩も人気の経路だ。
谷川が流れる紅葉谷公園内には、朱塗りの橋が架かる。巨石と相まって華麗で神秘的な雰囲気に包まれる
晴れた日には山頂から瀬戸内海や四国連山が望める霊峰・弥山。原始林は天然記念物に指定されている
宮島といえば、自然に溶け込む趣ある町家や小路、宮島焼や宮島細工といった伝統工芸も欠かせない。「宮島伝統産業会館(みやじまん工房)」では、杓子作りやもみじ饅頭手焼き体験が登場し、人気を集めている。
カキ、アナゴなどの美食もそろっているし、対岸にはゆったりとリラックスできる宮浜温泉もある。世界遺産と紅葉ダブルで味わい、美味なるグルメと温泉に浸る。満足感200%の“駅からはじまる旅”に、さあ出発進行!
- 大野瀬戸で獲れる小ぶりで味のいいアナゴ。その地アナゴの蒲焼きを、アナゴのダシで炊き込んだご飯の上に敷き詰めたのが宮島名物「あなご飯」。今や全国区の知名度を誇り、甘辛いタレが食欲をそそる。
- カキ生産量が国内全体の半分以上を占める広島県のカキ。中でも宮島産のカキは味、香り、歯ごたえが極上なブランドガキとして名高い。フライ、焼きガキなど料理の種類も豊富。
- 広島を代表する銘菓。その発祥は約100年前の明治40年頃で、紅葉谷にちなんで紅葉の形になった。定番の餡をはじめ、チョコやジャム、チーズなど様々なテイストがあって不動の人気。油で揚げた「揚げもみじ」もある。
山陽本線の宮島口駅から徒歩6分の宮島口桟橋と宮島とを結ぶ宮島航路。約10分のミニクルーズだが、神の島へと近づくひとときは感動モノ
宮島へと渡る宮島航路には2種類の航路が存在する。JR西日本宮島フェリーと、宮島松大汽船が運営する宮島口~宮島桟橋を運航する航路だ。JR西日本宮島フェリーは「青春18きっぷ」で乗船可能で、みせん丸、ななうら丸、みやじま丸の3隻運航。前方を望める「みせん丸」が特に人気だ。通常便のほか、大鳥居に接近する「大鳥居便」(宮島口発)もある。