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交流電化区間専用の電車[北海道・九州の交流近郊形電車]交流電化区間専用車両として開発された交流電車。今回は北海道と九州の交流近郊形電車にスポットを当てて紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

What's 国鉄色の電車?

 昭和37年に横須賀線用として登場した111系電車の分類において、はじめて「近郊形電車」という表現が使用されるようになりました。大都市近郊の通勤・観光輸送の両面の輸送に適した3扉・セミクロスシート(ボックスシートとロングシートの組み合わせ)で、2扉の急行形電車と4扉の通勤形電車のまさに中間スタイルといえるものです。車両の正面デザインは153系で、側面は通勤用の両開きドアを3カ所に設置し、ドア間および車端にボックスシート、ドア横に2・3人掛けのロングシートを配置するスタイルは、昭和36年に常磐線・鹿児島本線に登場した401・421系交直流電車が元祖になります。

 国鉄時代の近郊形電車は401・421系電車の基本スタイルを継承し、直流近郊形の111・113・115系電車交直流近郊形の403・423・415系電車が登場しました。大都市近郊の通勤・観光輸送に最適な両開き3扉・セミクロスシート構造ですが、昭和42年に試作車が登場した北海道向けの711系では、寒冷地での使用を考慮してデッキを設置したため、急行形電車と同様の片開き2扉となるなど、使用地域の特性に合わせた近郊形電車のスタイルが確立されていきました。

 地方都市のローカル運用では両開き2扉・セミクロスシートが輸送の実態に合っているため、昭和53年には東北エリア用として同スタイルの417系が登場。さらに九州エリア用の713系電車、東北・九州エリア用の717系電車が登場するなど、地方都市の近郊形電車は2扉・セミクロスシートが基本スタイルとなっています。

 また、昭和54年に登場した関西エリアの新快速用117系電車では、大都市圏でありながら2扉・転換クロスシートを採用。京阪神間で競合する私鉄各社の特急電車に対抗するためで、戦前から繰り広げられてきた京阪神間の旅客争奪戦が引き継がれています。なお、国鉄末期に登場した211系415系では、編成中にロングシート車を組み込むなど、近郊形電車の基本スタイルも進化するようになっています。

北海道用・九州用の711・713系交流近郊形電車

 昭和43年8月28日の函館本線小樽〜滝川間の交流電化の完成に合わせて登場したのが、日本初の交流専用電車となる711系です。寒冷地を走ることから客室と出入口ドアを仕切るデッキが必要不可欠となり、車体は急行形電車と同様の片開き2扉・ボックスシート配置となっています。昭和44年10月の滝川〜旭川間電化後は、札幌〜旭川間の急行「かむい」や急行「さちかぜ」にも運用。特に昭和46年7月から運転を開始した急行「さちかぜ」は、札幌〜旭川間をノンストップ・1時間36分で結ぶ韋駄天(いだてん)急行として活躍しました。

 その後は千歳線・室蘭本線の電化に合わせて711系が増備され、北海道の電化区間のローカル列車や快速列車に活躍。平成4年7月の新千歳空港駅の開業では快速「エアポート」の一部列車にも運用されましたが、その後の721系の増備によりローカル列車を中心に使用されています。なお、2扉では乗降時に時間がかかって遅延の要因となるため、一部車両は3扉化・ロングシート化・デッキの廃止などが実施されました。

 北海道用の711系は急行形電車スタイルでしたが、昭和58年7月に九州エリア用として交直流の417系と同様の両開き2扉・セミクロスシートで登場したのが713系です。地方路線の運用に適した2両編成で試作車8両が製造されましたが、国鉄の財政悪化に伴い量産車は製造されませんでした。現在は宮崎空港のアクセス列車を中心に活躍しています。

日本初の交流近郊形電車として登場した711系。北海道向けの耐寒耐雪構造を採用している

九州エリアの客車列車の電車化を目的として登場した713系。試作車4編成8両のみが在籍する

特急形・急行形電車が変身715・717系交流近郊形電車

 世界初の電車寝台特急列車として登場した581・583系ですが、新幹線の延伸に伴う寝台特急列車の廃止に伴い余剰が発生していました。当時の国鉄は財政事情の悪化が問題となっており、最新の交流電車713系も試作車のみで終わってしまいました。そこで、581・583系をローカル転用して使用することになり、出入口ドアを2カ所に増設し、一部にロングシートを配置した715系が誕生しました。

 元は12・13両編成の581・583系を4両編成にするため、中間車両に運転台を取り付けた独特なスタイルの車両も登場。特急時代の外観スタイルを保ったまま使用されることになり、最初のうちは特急列車が来たと思って乗車をためらう人がいたということです。長崎本線・佐世保線のローカル列車用として4両編成12本の48両が活躍していましたが、現在は全車両が廃車となっています。

 また、急行列車の削減で余剰となった交直流急行形電車475系の電気機器や台車などを流用し、新しい車体を載せ替えて誕生したのが717系です。車体は713系と同様の両開き2扉・セミクロスシートで、東北エリア用が717系0・100番台、九州エリア用は717系200・900番台となっています。九州エリア用の900番台は種車の475系の車体も流用し、中央に両開きドアを増設した独特なスタイルでしたが、すでに運用を離脱して廃車となっています。なお、200番台は鹿児島中央駅発着の鹿児島・日豊本線のローカル列車で活躍しています。

交直流特急形寝台電車の581・583系を九州エリアのローカル列車用に改造した715系

交直流急行形電車の475系の電気機器・台車を再利用して登場した九州エリア用の717系200番台

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