最新の走行装置やセミアクティブサスペンションの全車両への装備など、高速運転時の乗り心地を向上させたN700系。その静粛性を感じる車内は、ホテルのロビーのような明るくて落ち着いた空間に仕上がっています。洗面所や喫煙ルーム(3・7・10・15号車)が設置されたデッキ部分は、木目調を施したインテリアを採用。電話室(4・9・12・15号車)も設置されており、携帯電話による通話も普段と同じように行なえるようになっています。
16両編成の8・9・10号車に連結されるグリーン車には、座面と背もたれが連動してスライドし、いちばん快適な体勢のまま身体を傾けることができる「シンクロナイズド・コンフォートシート」を設置。長時間の乗車にも快適な座り心地を提供する複合バネ構造のクッションを採用し、上質かつやすらぎの空間を演出しています。
また、いつものオフィス環境を提供するため、各座席前面にA4サイズのノートパソコンを置けるテーブルを配置。グリーン車の全座席と普通車の窓側A・E席および車端席には、パソコン用のコンセントが設置されています。さらに東海道区間では無線LAN接続(公衆無線LANサービスを提供する業者との契約が必要)が可能で、メールの確認や送信、滞在先のホテル予約などができます。走るオフィスとしても使えるのが、N700系の魅力のひとつになっています。
N700系の普通車車内。3+2席配置のリクライニングシートが並ぶ静かな空間を実現
N700系の普通車のリクライニングシート。A4サイズのノートパソコンを置けるテーブルがある
平成16年3月13日の九州新幹線新八代〜鹿児島中央間の開業に合わせ、JR九州で初となる新幹線車両として登場したのが800系です。東海道・山陽新幹線の車両開発や保守などで高い技術力を持つJR東海およびJR西日本の支援を受け、JR西日本の「ひかりレールスター」用の700系7000番台をベースとして開発されました。
先頭車のスタイルは700系がキャノピータイプの運転台を装備したトンネル微気圧波対策のロングノーズであるに対し、JR九州初の新幹線車両として独自の顔を持たせるため、700系開発時に日立製作所で設計された車両デザイン案をベースとしたシャープなスタイルとなっています。また、日本の「和」をコンセプトにした車内デザインが採用され、九州エリアの地場産業の特産品がブラインドや洗面所の簾、電話室ののれんなどに生かされているのが最大の特徴です。
全車両が普通車で、ゆったりとした2+2席配置のリクライニングシートを装備。U001〜U006編成は木材を使用した座席に西陣織のシートモケットが採用され、木の色とモケット色は3タイプの組み合わせです。1・4号車は「桜色+緑青」、2・6号車は「柿渋色+瑠璃」、3・5号車は「楠色+古代漆」で、車両ごとに異なる雰囲気の車内空間となっています。
700系をベースとしてJR九州オリジナルのデザインを採用した九州新幹線用の800系
日本の「和」をコンセプトにした800系。車内は2+2席配置のリクライニングシートが並ぶ
平成21年度の増備車として登場したのが、先頭車両のライトカバーが三次曲面で凸形のかわいい目をした新800系です。先頭部に「つばめマーク」の象嵌(ぞうがん)を施しているほか、側面に配置した帯を「つばめの飛行軌跡」をイメージした形状にデザインしており、初期の車両とは一目瞭然で区別が付くようになっています。また、増備されたU007〜U009編成は、車両ごとに座席の織物色と妻面の壁のデザインが異なっており、初期の車両とは一味違う「和」のイメージを演出しています。特に2〜5号車の妻面にデザインされた金箔はゴージャスな雰囲気で、鉄道車両の内装に金箔を使用する大胆さが話題となった車両です。
これまでの鹿児島産樟(くすのき)の壁や宮崎産山桜の木部、八代い草の縄のれんに加えて、鹿児島・川辺仏壇の木彫・蒔絵・彫金、博多織や久留米絣など九州の素材・工芸品を使用しています。客室の妻面は、金箔と樟・ハードメープル・ペアウッドで構成されており、シートのモケット地は市松柄・ワインレッドの本革・カーマイン無地・アイビー柄ゴブラン織・オレンジ系ツイード・アイビー柄西陣織の6種類が使用されています。金箔張りの額縁の中には木彫・蒔絵・彫金の技や博多織を展示しており、各車両で異なる車内空間を楽しむことができます。
先頭車両のライトカバーに世界初となる三次曲面のデザインを採用した新800系
車内インテリアは鹿児島・川辺仏壇の木彫・蒔絵・彫金、博多織や久留米絣などを採用
写真協力:交通新聞サービス
※掲載されているデータは平成22年12月現在のものです。