JR化後の東海道・山陽新幹線は、開業以来の0系と2階建て車両を連結した100系の2タイプの車両で運転されていました。日本の大動脈として旅客輸送量は増加し、1時間当たりの最高運転本数は11本と限界まで達していました。このため、スピードアップ以外に輸送量を増加させる手段がありませんでした。
そこで、JR東海では最高速度270km/h、東京~新大阪間を2時間30分で結ぶことを目標に新型車両の開発に取り組むことになり、まずは平成2年3月に300系の先行試作車が登場しました。
先行試作車は平成2年12月の速度向上試験で303.1km/h、さらに平成3年3月には米原~京都間において当時の国内最高速度になる325.7km/hを記録しました。これらの試験データを元にして量産車が製造されることになり、平成4年3月に流れるような美しいボディラインが魅力の300系車両が姿を現わしました。
平成4年3月14日、東海道新幹線東京~新大阪間を2時間30分で結ぶ「のぞみ」がデビューを飾りました。当時の東海道新幹線の最高速度は220km/hでしたが、一気に50km/hアップの最高速度270km/hとなって人気の的となりました。
また、途中の名古屋駅と京都駅にはすべての列車が停車していましたが、東京駅発6時の「のぞみ301号」は新横浜駅から新大阪駅までノンストップ運転となり、新聞紙上では「名古屋飛ばし」として話題となりました。
この300系車両には高速運転対応の新技術が採用されており、空気抵抗の減少を図った車体形状や車両の軽量化、騒音・振動に対する環境対策などが盛り込まれています。車体は軽量化を図るためにアルミ合金製となり、軽量で出力の高い三相交流誘導電動機(モーター)や新幹線初となるVVVFインバータ制御の採用など、新幹線高速化の新世代にふさわしい車両となっています。
0系や100系新幹線では、食堂車やビュッフェ車が連結されていましたが、300系では食堂車やビュッフェ車が製造されませんでした。ビジネスユースを中心とした機能優先というコンセプトによるもので、東京~新大阪間を2時間30分で結ぶ列車は車内販売・売店で対応することになりました。
16両編成の列車は1~7・11~16号車が普通車指定席、8~10号車がグリーン車指定席で、7・11号車のグリーン車寄りに「サービスカウンター」(売店)を配置しています。当初はグリーン車のシートサービスも行なわれ、300系「のぞみ」ならでは車内サービスが好評を博しました。
グリーン車はゆったりと座れる大型リクライニングシート、普通車は3列中央席の幅を広げた新型リクライニングシートが採用されました。その後に登場する700系やN700系では各車両の座席配置を踏襲しており、300系が東海道・山陽新幹線の16両編成の基本スタイルとなっています。
営業開始当初は東京~新大阪間で運転されていましたが、平成5年3月18日改正から東京~博多間の運転が開始されました。東海道・山陽新幹線の速達列車「のぞみ」としての地位を確保し、東京~博多間は最速5時間4分で結ばれるようになりました。
この改正からJR西日本の300系車両が登場しましたが、基本スタイルは同じものの細かい部分が異なっていました。JR東海のJ編成の内装がブラウン系であるのに対し、JR西日本のF編成はグレー系となり、それぞれのオリジナリティが生かされていました。
最終的にJR東海のJ編成61本、JR西日本のF編成9本の計70本が製造され、JR西日本の500系とともに「のぞみ」を中心に活躍を続けてきました。しかし、平成11年から700系の量産車が登場すると「のぞみ」運用から順次撤退し、「ひかり」「こだま」を中心に最後の活躍をするようになりました。
平成24年3月改正で東海道・山陽新幹線から全車両が引退する300系は、東海道・山陽新幹線「ひかり」および東海道区間の「こだま」で最後の活躍中です。
平成23年12月現在では、JR東海の東京交番検査車両所にJ編成が5本、JR西日本の博多総合車両所にF編成5本の計10本が在籍しています。
「ひかり」は東京~岡山間の「ひかり477・482号」、東京~新大阪間の「ひかり501・509・511・512・520・522号」の計8本、「こだま」は東京~名古屋間の「こだま659・675・636・680号」、東京~新大阪間の「こだま650号」、三島~新大阪間の「こだま697号」、岡山~博多間の「こだま727・734号」の計8本に運用されています。
300系は順次700系やN700系への置き換えが行なわれており、平成24年2月2日以降も300系で運転されるのは「ひかり477・482号」「こだま697・727・650・734号」および東京~三島間の「こだま807号」の計7本となる予定です。
※運用列車が変更になる場合もあります。