「青春18きっぷ」とは?
年齢制限なし。全国のJR線普通・快速列車の普通車自由席が一日乗り放題のきっぷ。1券5回(日)分セットで、ねだんは1万1850円。同一行程であれば、最大5人まで同時に利用できる。春の利用期間は4月10日までだが、発売期間は3月31日までなので、ご注意を。
青春18きっぷ 1日目
1日目午前
現地までは往復新幹線で移動し、途中ショートカットで特急にも乗車する、時短と旅情の青春18オトナ旅! 今回は岡山から四国入りする1泊2日。のどかな四国をぐるっとめぐり、おだやかな春を謳歌しよう。まずは岡山駅で買ったお花見駅弁を手にして乗り込んだのは、快速「マリンライナー21号」(写真1)だ。瀬戸大橋からの眺望を楽しめるので、今回の四国「青春18きっぷ旅」の始まりにぴったり。10時23分、岡山駅を出発。
快速「マリンライナー」の普通車自由席には「青春18きっぷ」で乗車できるが、おすすめの特等席は、車窓からの眺めをよりワイドに楽しめるパノラマシートだ(ただしグリーン車指定席のため、グリーン券のほか、別途乗車券の購入が必要)。児島駅を過ぎ、瀬戸大橋線に入れば、春うららかな瀬戸内の多島美が。高速道路と鉄道が併用された全長9368メートルの瀬戸大橋を渡りながら、目の前に広がる青い海と島々に夢中になっていると、11時2分、坂出(さかいで)駅に到着。坂出は昭和30年代まで塩田開発が盛んで、全国屈指の「塩のまち」として栄えた場所。塩を原料とする醤油の蔵があったり、駄菓子屋など懐かしい商店があったりと、路地の散策が楽しいところ。坂出市観光協会では、ガイドと町を歩き、地元のスイーツを味わう「坂出あまからめぐり」を毎月第3土曜に開催中だ。
「春はやっぱり花見!」という人には、坂出駅からタクシーで約15分の聖通寺山(しょうつうじさん)の「常盤(ときわ)公園」(写真3)がおすすめ。展望台からは桜と瀬戸内海の競演を一望できる。ただし、坂出での滞在は1時間強なので、町歩きか同園での花見か、どちらかに絞ったほうが賢明だ。
- 高松寄りの1号車が2階建ての快速「マリンライナー」。とくに眺望がよいパノラマシートを狙いたい。
- 瀬戸大橋線からの多島美は初日の絶景ハイライトのひとつ。列車は児島駅から瀬戸大橋を経て坂出駅まで、22.7キロメートルをノンストップ!
- 春にはソメイヨシノ約500本がトンネル状に咲き乱れる「常盤公園」。瀬戸内海に浮かぶ塩飽(しわく)諸島も一望。
1日目午後
坂出駅を出発したら、宇多津(うたづ)駅からは「青春18きっぷ」適用外となるが、12時41分発の特急「南風9号」にライドオン。土讃(どさん)線阿波池田(あわいけだ)駅を過ぎたあたりから吉野川に沿って進むと、山あいのローカル線風情が色濃くなっていく。つづら折りの線路は、四国山地を縦断するために高度を上げている証で、峡谷沿いを疾走する特急は、なかなかにスリリング。小歩危(こぼけ)駅、大歩危(おおぼけ)駅の両駅を過ぎると、全国にも珍しい鉄橋の上にホームがある「土佐北川駅」(写真5)を通過。さらに2駅南下し、JR四国の駅で最も標高の高い駅・繁藤(しげとう)駅を通れば、この後は高知平野まで、くねくねと下っていく。
14時34分、土讃線後免(ごめん)駅で下車したら、今年は酉年ということで、優雅なトリに会いに行こう。駅からタクシーに乗り、特別天然記念物のオナガドリを観覧できる「長尾鶏(おながどり)センター」(写真6)へ。通常のニワトリとまったく違うその長い尾は、どこか気品を感じさせる。オナガドリとのツーショット撮影もOK!
戻って土讃線に乗車し、後免駅から高知駅へ。駅前からはタクシー約20分で、めざすは絶景名所「五台山(ごだいさん)公園」(写真4)だ。山頂の展望台からは高知市街や浦戸湾を一望!
四国の雄大な海絶景を堪能し、高知の中心街に戻ったら、おきゃく(土佐弁で「宴会」のこと)文化の根づく高知で酒宴へとなだれ込もう。春はカツオやマダイなどが旬を迎える季節。それらをつまみに、「司牡丹(つかさぼたん)」や「酔鯨(すいげい)」など高知の地酒をキュッとやれば、旅酒の幸せ、ここに極まれり。
- 標高146メートルの五台山山頂一帯にある「五台山公園」。夜景も素晴らしいので、夜の観賞もおすすめ。
- 「土佐北川駅」は、吉野川の支流である穴内川(あなないがわ)にまたがる鉄橋の上にある。訪れる鉄道ファンも多い。
- 「長尾鶏センター」で南国市篠原を原産地とするオナガドリを観覧。カメラ撮影時は尾に触れられる。
青春18きっぷ 2日目
2日目午前
2日目は8時24分、高知駅発。土讃線でおよそ1時間40分、須崎(すさき)駅で降りて朝ラーメンはいかが? 須崎は土鍋などで出されるユニークな「鍋焼きラーメン」(写真2)が有名。かつて市街路地裏にあった「谷口食堂」が、出前で冷めないようにとホーロー鍋を使うようになったことがルーツだとか。鶏がら醤油ベースの熱々のつゆと麺をズズッとやれば、体が芯から温まり、飲み過ぎの二日酔いでもシャキッと目が覚めそう。「喫茶みつや」など、朝からラーメンを提供している店もあるので、須崎市観光協会の提供店舗一覧ページなどから探してみて。
お腹を満たしたら、11時11分発の土讃線でさらに西へ。途中、「安和(あわ)駅」(写真1)では列車と須崎湾がグッと近づき、南国気分も高まる。やがて、窪川駅に到着。腕時計を見れば、ちょうどお昼どき……ということで、窪川駅下車徒歩10分の「うなきち」(写真3)で四万十うなぎを堪能することに。この店、ウナギの養殖会社直営だけあり、清らかな地下水で育てた新鮮なウナギが自慢だ。うな重の蓋をパカッと開けると、無添加の自家製だれで焼いたウナギがドーンと鎮座。ご飯ごと口にかっこめば、4回もたれ付けして焼いて出る香ばしさ、やわらかな食感に思わず目尻が垂れてしまう。
- 安和海岸が目の前に広がり、車窓から大海原を望める安和駅。駅前には桜の木があり、春にはピンクの彩りを添える。
- スープは親鳥の鶏がら醤油ベース、具は親鳥の肉・ねぎ・生卵・ちくわなど、7つの定義がある須崎の「鍋焼きラーメン」。
- 「うなきち」のうな重(上)2780円。身がやわらかく、ほどよくのった脂がうまい。わさび醤油でいただく白焼きも絶品。
2日目午後
窪川駅からはこの旅、二つめの観光列車「海洋堂ホビートレインかっぱうようよ号」(写真4)に乗り、予土(よど)線の鉄道旅行を楽しもう。沿線の四万十町にフィギュアメーカー「海洋堂」のミュージアムが平成23年に開館したのをきっかけに運行が始まった列車で、3代目となる車両のコンセプトは「かっぱの世界」。車内の座席は赤と緑の2色で塗り分けられ、座席には親子カッパの姿も! 13時24分、列車が窪川駅を進みだすと、江川崎(えかわさき)駅までは四万十川の絶景の連続だ。鉄橋を走れば眼下に清流や沈下橋、トンネルを抜ければまた清らかな大河が! 「日本最後の清流」ともいわれる美しい川を、いつまでも眺めていたい。
西ケ方(にしがほう)駅を過ぎると愛媛県に突入。くねくねと曲がりながら列車は西へと進み、南予の中心都市である宇和島駅にたどり着く。伊達10万石の城下町として栄えた宇和島は、歴史散策が楽しい町。なかでも「宇和島城」(写真5)は全国に12しか現存しない天守のひとつなので、必ず足を運びたい。例年4月に見頃を迎える桜のやわらかなピンクと、唐破風(からはふ)の屋根や白壁が凛々しい天守閣との対比は、これぞ日本の春ともいえる美しさ。
宇和島城のお次は、城から北へ約1.5キロメートル離れた「和霊神社」(写真6)へ参拝。四国でも指折りの大社といわれ、スケールの大きい社殿は荘厳だ。川に架かった太鼓橋の先には、石造りでは日本随一といわれる大きさの鳥居が、参拝者を出迎える。
帰路は「青春18きっぷ」適用外となるが、特急「宇和海」と特急「いしづち」に乗り、坂出駅までびゅーんと北上。乗り込む前にじゃこ天やかまぼこなど、飲み鉄のおともを買うのを忘れずに!
- 「海洋堂ホビートレインかっぱうようよ号」の車内にはかっぱの親子が!
- 「鶴島城」の異名をもつ宇和島城天守閣。宇和島伊達家2代宗利(むねとし)が寛文11年(1671)頃に再建。
- 和霊神社の鳥居は御影石造りで、その高さは13メートル以上!
この春、「青春18きっぷ」で旅せよオトナ。
桜に清流にパノラマビューも! 春うららの四国絶景探し(1泊2日)
「青春18きっぷ」でのJR線乗車区間
- 1日目
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- 宇野線岡山駅〜予讃線坂出駅
- 予讃線坂出駅〜宇多津駅
- 土讃線後免駅〜高知駅
- 2日目
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- 土讃線高知駅〜須崎駅
- 土讃線須崎駅〜窪川駅
- 予土線若井駅〜予讃線宇和島駅
- 予讃線坂出駅〜山陽本線岡山駅