『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

多くの旅人が往来した街道・中山道。明治26年(1893)、難所で知られる碓氷(うすい)峠にアプト式鉄道が生まれました。後に、日本で初めて幹線電化された旧碓氷線。日本の近代化を支えた鉄道遺産に会いに、群馬県の安中・横川エリアを訪ねます。

機関車、廃線跡、「ハンサムウーマン」……
日本の近代化を感じる安中・横川の旅

例えばこんなめぐり方|【1日目】東京駅⇒高崎駅⇒少林山達磨寺&達磨絵付体験⇒高崎駅⇒安中駅⇒新島襄・安中城址ヒストリート・ウォーク⇒安中駅⇒磯部駅⇒磯部温泉泊
例えばこんなめぐり方|【2日目】磯部駅⇒横川駅⇒東京屋 CAFEろくさん⇒【アプトの道 遊歩道を歩く】 碓氷峠鉄道文化むら⇒碓氷関所跡⇒旧丸山変電所⇒めがね橋⇒熊ノ平⇒峠の湯⇒横川駅⇒高崎駅⇒東京駅
1 だるまと機関車とパスタの街、高崎 少林寺達磨寺、まちなかスタンプラリー、パスタ

 高崎の名物と言えば、縁起だるま。「七転び八起き」の言葉のとおり、ころんとしたフォルムがカワイイ☆ だるま発祥の地と言われている少林寺達磨寺は、緑があふれる気持ちのいい禅寺で、パワースポットとしても知られています。オリジナルのだるまが作れる老舗「大門屋」の絵付け体験もおすすめ。
 だるまは真っ赤な色が定番だけど、「機関車の街 高崎 まちなかスタンプラリー」に参加すると黒い「機関車だるま」がもらえちゃいます。限定品なので見逃せない!!
 おなかがすいたら、ランチはパスタ。高崎は「パスタの街」としても有名です。そのワケは、「市内にパスタ店が多いから」「小麦の産地で昔から麺を食べる習慣があったから」など、諸説あるそう。リーズナブルなのに量が多いのが特徴だよ。

少林山達磨寺

交通:高崎駅からバスで20分。TEL.027-322-8800

だるまのふるさと「大門屋」

交通:高崎駅からバスで20分。TEL.027-323-5223

機関車の街 高崎 まちなかスタンプラリー

実施期間:平成24年7月1日~9月30日。高崎駅周辺の飲食店やお土産物店など3店舗で、関連グッズを購入すると「機関車だるま」がもらえるイベント。高崎市観光課TEL.027-321-1257

一服満腹 たかさきパスタ探検隊

「パスタ探検隊」おすすめのお店を掲載したマップ。

2 蒸気機関車でレトロな旅 蒸気機関車&ディーゼル機関車

 現代では、滅多に乗る機会のない蒸気機関車。明治期に登場し日本の近代化を支え、昭和40年代まで日本全国を走り続けました。
 この夏、「デゴイチ」と「シロクイチ」の2台の蒸気機関車が群馬県内を走ります。大きな車体が客車をけん引して力強く走る雄姿と、レトロな客車の雰囲気に、「鉄子」ならずとも感動すること間違いなし!
 信越本線の高崎~横川間は、主に蒸気機関車「D51 498」とディーゼル機関車「DD51」が運行。乗車記念証のポストカードが配布されたり、オリジナルの駅弁が登場したりと、特別な旅気分を盛り上げます。ロマンに満ちた歴史に想いをはせつつ、乗車したいものですね。

SL運行情報

群馬県内を走るSLやリゾート列車の運行情報、SLのしくみなどを紹介する。

3 新島襄&八重夫婦ゆかりのまちあるき 襄・城ヒストリート、日本キリスト教団安中教会

 幕末から明治期に、男女平等を望み果敢に生きた新島八重(にいじまやえ)。平成25年の大河ドラマ『八重の桜』の主人公・八重を「ハンサムウーマン」と呼んだ夫の新島襄(じょう)は安中市の出身です。
 新島襄は、留学先のアメリカから帰国後、同志社英学校(現・同志社大学)を創立し、日本でキリスト教の伝道に尽くしました。地元ボランティア・ガイドが案内する「襄・城ヒストリート」は、明治11年(1878)創立の「安中教会」や「お八重の碑」など、新島襄&八重ゆかりの地をめぐるツアー。周辺のグルメやスイーツも案内してくれます。
 ‘女は男に従うもの’という封建的な考えが残る時代に、奔放な行動で「天下の悪妻」と言われた妻を「ハンサムウーマン」と言いきった夫。そんなカッコイイ夫婦の生き方を学びたくなります。

大河ドラマ『八重の桜』

平成25年大河ドラマ『八重の桜』公式ホームページ。

「襄・城ヒストリートまち歩き」

時間:9:00~16:00。ガイド料無料(入館料は別途必要)。3人以上で要予約。安中市商工観光課TEL.027-382-1111

日本キリスト教団安中教会

毎週日曜10:30~主日礼拝(教会員以外の参加可)。教会の見学は要予約。TEL.027-381-0680

4 ?マーク発祥の地、磯部温泉で美肌づくり 磯部簗、磯部温泉

 磯部駅から徒歩5分。便利なロケーションにある磯部温泉は、江戸時代の文書に温泉マークが見られる「温泉記号発祥の地」と言われています。古くから中山道を行き来する旅人や湯治客でにぎわっていたそう。
 温泉に入る前に温泉街のすぐ近く、碓氷川のほとりの観光簗(やな)「磯部簗」へ。生きている鮎をその場で塩焼きや刺身にしてくれます。夏ならではの味覚に舌鼓!
 そして、温泉宿のお湯ももちろんいいけど、女性に大人気なのが、日帰り入浴施設「恵みの湯」の塩砂風呂です。塩をまぜたミネラルたっぷりの砂蒸風呂は、遠赤外線効果で新陳代謝が促進されるんだって。血行が良くなって、お肌つるつる効果も期待できそう? お土産は、小麦粉と砂糖、鉱泉水で作る銘菓「磯部せんべい」に決まり! サクサクした昔ながらの味がやみつきになります。

磯部簗

営業期間:平成24年7月1日~9月17日。営業時間:11:00~15:00(8月14~16日は~21:00)。TEL.027-385-6959

恵みの湯

開館時間:10:00~21:00。第1・3火曜休(祝日の場合は翌日)。入館料:3時間=大人500円、小人300円。6時間=大人1000円、小人500円。砂塩風呂は別途1回2500円、要予約。TEL.027-385-1126

5 鉄道史に残る旧碓氷線、廃線跡を歩く CAFEろくさん、碓氷峠鉄道文化むら、アプトの道ハイキング

 明治26年に開通した横川~軽井沢間を結ぶ旧碓氷線は、日本初のアプト式鉄道として知られ、日本の近代化や鉄道史にとって重要な路線です。平成9年の廃線後、跡地が「アプトの道」として遊歩道が整備されています。
 歩き出す前に、まずは横川駅のすぐ近くにある「CAFEろくさん」で腹ごしらえ。機関車「EF63」にちなんで名づけられた「ろくさんカレー」は、野菜たっぷり、コクのあるトマト&ココナッツミルクのルーで人気です。
 「アプトの道」は、碓氷線の歴史を伝える鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」から、江戸幕府によって置かれた碓氷関所跡、国鉄が日本で初めて造ったレンガ造りの丸山変電所、美しいアーチ橋「めがね橋」を過ぎ、さらにトンネルやホームの遺構が残る「熊ノ平」にいたる片道6kmのコース。緑のシャワーのなか、自分のペースで散策してみて。疲れたら、峠の湯で一休みするのもいいかも。

東京屋 CAFEろくさん

営業時間:11:30~14:30。TEL.027-395-2157

碓氷峠鉄道文化むら

営業時間:9:00~17:00(11月1日~2月末日は~16:30)。火曜休(祝日の場合は翌日)。入園料:中学生以上500円、小学生300円。TEL.027-380-4163

アプトの道ハイキングコース

安中市商工観光課TEL.027-382-1111。

峠の湯

営業時間:10:00~21:00。第2・4火曜休(祝日の場合は翌日)。入館料:3時間=大人500円、小人400円、6時間=大人1000円、小人800円。TEL.027-380-4000

「知って得する、美味しい話」  上州「からっ風」が育んだ小麦食文化 一風変わったご当地うどんも続々、登場!

 本文でも紹介しましたが「高崎パスタ」「磯部せんべい」など、群馬県内には小麦を使った料理やお菓子がとっても多いんです。これは、日照時間が長くて、上州「からっ風」と言われる冬の乾いた空気が小麦の栽培にぴったりだから。むかしから各地で食べられてきた小麦料理にあわせて、最近は小麦を使ったご当地グルメも人気です。
 県内の小麦生産量は全国トップクラス。古くから作られてきた軟質小麦のほかにも、「つるぴかり」「きぬの波」「ダブル8号」など、米と二毛作がしやすく、パンや中華麺を作るのにも合う硬質小麦も開発されています。県をあげて、小麦食文化の応援をしているんですね。
 代表は、なんといっても焼きまんじゅう。「ええ!? おまんじゅうを焼いちゃうの?」とびっくりしますが、江戸時代から親しまれている郷土食です。餡が入らないまんじゅうを竹串に刺して、砂糖を混ぜた味噌をぬってこんがりと焼きます。じゅうじゅうと味噌が焦げる香りがたまりません。
 うどんも有名です。400年の歴史を持つ水沢うどんをはじめ、もっちりシコシコした中細麺の館林うどん、桐生うどんなどがあります。「うどん」の名前こそついていませんが、太めに切った麺と里芋、大根、人参などの野菜を一緒に煮こんだ「おきりこみ」は、郷土料理百選にも選ばれた小麦料理です。うどんを切っては入れ、切って入れて食べる様子から名づけられたそう。さらに、幅が3,4cm~10cmもある幅広の「ひもかわ」は、つるんとした喉ごしが特徴。織物業で栄えた桐生市で立ったまま食べるうどんとしてよく食されました。
 近年は、ご当地グルメとしてのうどんも続々と、登場しています。
 例えば、館林市にある茂林寺が童話「分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」の舞台であることにちなんで生まれた「分福茶釜の釜玉うどん」。たぬき(揚げ玉)と地場産の醤油の味付けが自慢です。藤岡市では、地元で作ったトマトとキムチを使った「キムトマ焼きうどん」を開発しました。トマトの酸味とキムチの辛み、卵がからんだ平打ちのうどんが絶妙なハーモニーを醸します。
 工業のまち太田市で、忙しい工員たちが手軽に食べられると人気になった「上州太田焼きそば」も、麦の香ばしい香りとほのかな甘みがホッとするお菓子、麦落雁(むぎらくがん)も小麦が原材料。
 上州・群馬の人々の生活にがっちりと根付いている小麦食文化。各地の小麦料理を食べ歩くのも楽しいですね。


祭りや草競馬などの行事に欠かせない郷土食、焼きまんじゅう


日本三大うどんとして
人気の水沢うどん

上州の冬を代表するおきりこみ。
とろんとした汁もおいしい

大麦を炒って粉にし、
砂糖と片栗粉をまぜて固めた麦落雁

磯辺温泉の炭酸水で
焼き上げた磯辺せんべい
文=本間朋子 写真協力=群馬県、群馬県観光物産国際協会「ビジュアル群馬」
※掲載されているデータは平成24年7月現在のものです。

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