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弘法大師空海が真言密教の根本道場として開山した高野山は、2015年に開創1200年を迎えます。和歌山・参拝めぐりの旅は、標高約900mの天空の聖地からスタート。
まずは入り口にそびえる大門。山火事や落雷で焼失し、現在の建物は1705年に再建されました。次は高野山の中心に位置する壇上伽藍(だんじょうがらん)へ。弘法大師が一番はじめに整備に着手した場所で、密教思想に基づく胎蔵曼荼羅(たいぞうまんだら)の世界を具現化しています。高さ48.5mの朱塗りの根本(こんぽん)大塔が目をひきます。宇治平等院を模して造られた高野山霊宝館は、高野山に伝えられている貴重な仏画や仏像を保存公開しています。
同じく世界遺産に登録されている金剛峯寺(こんごうぶじ)は、高野山真言宗の総本山。金剛峯寺とは元々は高野山全体の名前でしたが、現在は座主の住まいであるこの寺だけの名称。豊臣秀吉が亡き母を弔うために建立しました。
そして、高野山の信仰の中心であり、弘法大師の御廟があるのが奥之院。樹齢1000年を超える杉木立の中に、20万基を超える諸大名や著名人の墓石・碑が並ぶ神秘的な場所です。
むかし、高野山では諸国大名と寺の檀縁関係により、阿波国は○○院、越後国は○○院……と「お国」によって決まった宿坊があったそうです。現在、高野山内の117の寺のうち、宿坊がある寺院は52カ所。ひとことで宿坊と言っても、温泉があったり、瞑想体験ができたり、アートセラピーを受けられたりと、いろいろな特色があります。自由に選べる現代だから、自分に合った宿坊を探してみて★
宿坊の楽しみのひとつが精進料理。季節感を大切にし、5つの調理法(五法)、5つの味(五味)、色(五色)のバランスの良い組み合わせで作られます。江戸時代にさかのぼる高野山みやげとして知られた高野豆腐やごま豆腐など、ヘルシーで味わい深い精進料理はランチなどでも食べられます。
また、女子的おみやげにおすすめなのが「塗香(ずこう)」。御経や写経の前にお清めや精神を落ち着けるために、手などに塗り込む粉末状のお香です。天然の香料で気分もすっきり!
古より、熊野詣での旅人が、身を清めたり、疲れた体を癒したりするために浸かった温泉。それが山の温泉・熊野本宮温泉郷(川湯温泉、湯の峰温泉、渡瀬温泉)です。
川湯温泉は、大塔川の川底を掘って湧き出た湯をせき止めた露天風呂「仙人風呂」が有名。12月~2月限定の野趣あふれる冬の風物詩です。日に7回も湯の色が変化するといわれる、湯の峰温泉の岩風呂「つぼ湯」は、参詣道の一部として世界遺産に登録。渡瀬温泉には、クアハウスやバンガローがありリゾート感覚で温泉を楽しむことができます。
一方、県内随一の多種多様な源泉を誇るのが、海の温泉・南紀勝浦温泉。生マグロ水揚げ日本一の那智勝浦町にある温泉です。海底が隆起してできた岬が荒波で削られ天然の洞窟になり、そこに温泉が湧出した洞窟風呂や、海と一体になったかのような開放的な露天風呂、さらにJR那智駅に併設されたオーシャンビューの浴場などもあり、どこも魅力的です。
平安時代に浄土信仰の聖地として貴族や上皇の参拝がはじまり、江戸時代には「伊勢に七度、熊野へ三度」と言われるほど、多くの人に広がった熊野詣で。
もっとも多くの参拝者が歩いたとされる中辺路(なかへち)を行き、最初にたどり着くのが熊野本宮大社です。熊野三山の中でもとりわけ古式ゆかしい檜皮葺(ひわだぶき)の社殿は、樹木と食べ物の守護神・家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)をおまつりしています。大斎原(おおゆのはら)は、現在の場所に移転する前の旧社地。神が三体の月となって舞い降りた聖地と言われています。
熊野本宮大社と、川の参詣道として世界遺産登録された熊野川の河口に建つ熊野速玉(はやたま)大社、日本一の落差を誇る那智の滝そのものをご神体とした飛瀧(ひろう)神社などを擁する熊野那智大社の3社を合わせて「熊野三山」と呼ばれ、いまも昔も変わらず多くの人が参詣に訪れています。
交通:JR新宮駅からバス約1時間20分、JR紀伊田辺駅からバス約1時間40分。TEL.0735-42-0009
主祭神は、水しぶきを神格化した速玉大神(はやたまのおおかみ)。交通:JR新宮駅から徒歩約15分。TEL.0735-22-2533
主祭神は、森羅万象の根元の力を与える夫須美大神(ふすみのおおかみ)。交通:JR紀伊勝浦駅からバス約30分。TEL.0735-55-0321
距離約2.5㎞、約1時間のウォーキングコース。苔むした石段と杉木立が熊野古道の雰囲気を楽しめる。和歌山県観光連盟TEL.073-422-4631
熊野地方に伝わる素朴な郷土料理「めはり寿司」は、高菜漬で温かいご飯を包んだもの。ソフトボールくらいに大きく握り、目を見張るようにして口を大きく開けて食べたことから名づけられたそう。一方、「サンマ寿司」は秋から冬にかけて熊野灘に下ってきた脂の落ちたサンマを開いて塩漬けにし、ダイダイ酢でしめて押し寿司に仕上げます。両方とも山の幸、海の幸を使った紀南を代表する味なので、ぜひ試してみて下さい。
また、新たなご当地グルメも誕生! その名も、和歌山県産の梅やフルーツを使ったフルーツポンチ「わかやまポンチ」。県内飲食店で味わえるのはもちろん、この秋、小学生が開発した「わかやまポンチ」が、関西、中国、四国地方のファミリーマートで販売されるなど、じわじわとその人気が広がっています。
地元で食べられるお店や宿の紹介も。和歌山県観光連盟 TEL.073-422-4631
「わかやまポンチ食べ歩きMAP」のダウンロードはこちらから。
和歌山は、日本最大の半島の紀伊半島の中に位置し、沿岸を黒潮が流れているため、県内全域で温暖な気候に恵まれています。上記でも紹介したご当地グルメ「わかやまポンチ」ができるほど、ミカンやハッサク、ポンカン、デコポンなどの柑橘類をはじめ、柿、桃、イチゴなどの果実がたくさん採れるフルーツ王国なのです。
なかでも、和歌山の果物と言えば、誰もが思い浮かべるのがウメ。紀州を代表する農作物であるウメは、江戸時代に紀州田辺藩が、農民にやせ地を利用して栽培を奨励したのが始まり。明治時代には、上南部村(現・みなべ町)の高田貞楠(さだぐす)氏が所有する園で発見した梅の木を、自分の名前をとって「高田梅」として育てました。
高田梅は大粒で肉厚、美しい紅色がかかり、風土に適した優良品種だと評価されました。このとき、南部高校園芸科の生徒たちが調査・研究に協力したため、南部高校と高田梅の頭文字をとり、「南高梅(なんこううめ)」と名付けられたそうです。
果皮が薄いので漬物に最適で、青梅は梅ジュースや梅酒に、黄色く熟した梅は最高級の梅干しとして全国で販売されています。近年の健康食ブームで塩分を控えめにしたり、生産拡大のために品種改良したりと、まだまだ進化中です。
和歌山のお土産に贈り物に、梅干しや梅製品はいかが?
みなべ町で生産される南高梅は、国内生産量の7割以上を占める
非常に大粒で果肉が厚く、果皮が柔らかいため、最高品種の梅干しになる
お土産に梅商品を買える事業者一覧も。
みなべ町役場 うめ課観光係TEL.0739-72-4949
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