


 旅の初日は二見浦の「夫婦岩」へ。ここほど夫婦旅にふさわしい景勝地もないだろう。新大阪発の「ひかり」に乗車。「フルムーン夫婦グリーンパス」(以下、フルムーンパス)では「のぞみ」は利用できないが快適だ。
 名古屋で乗り換えの快速「みえ」。グリーン車はなく、二見浦駅まで普通車指定席に座る。途中、伊勢鉄道を経由するので片道1人あたり490円が別途必要だ。
 二見浦の町並み。土産物を売る店など、どこか懐かしさが感じられる。夫婦岩をバックに夫婦の記念写真を撮ったら、名物の「大あさり」や「伊勢うどん」を食べてみたい。
 旅の2日目は別府温泉を目指すが早出はしないので、帰路、伊勢に立ち寄ってみてもいいだろう。
 2日目は新大阪10時22分発の「ひかり555号」レールスターに乗車。「ひかりレールスター」はグリーン車こそないが、指定席は「サルーンシート」(2列+2列シート)と呼ばれ、グリーン車に匹敵する座席で好評だ。しかも速い。小倉までの555kmで「のぞみ」との到達時間の差はわずか15分ほどの違いだ。小倉駅で特急「ソニック23号」グリーン車に乗り換え、別府駅には14時26分に到着する。
 かつては団体旅行で賑わった別府。近年では個人客を意識した温泉リゾートとして、露天風呂付き客室を持つ隠れ家的な宿も増えてきている。宿で温泉三昧するもよし、地獄めぐりを楽しむもよし。そして、大分が誇るブランド魚、佐賀関の「関アジ・関サバ」もせっかくのフルムーン旅行なのでぜひ味わってみたい。
 

 旅の3日目は朝寝坊。“いい夫婦”にちなんだわけではないが、別府発11時22分の「ソニック24号」グリーン車で小倉へ。さらに乗り換えて門司港へ向かう。
 九州の鉄道の起点として繁栄し、往時の余韻がそこかしこに感じられる「門司港レトロ」。門司港駅を一歩出れば重厚な洋館が建ち並び、ノスタルジックな過去にタイムスリップしたかのようだ。
 翌日(4日目)は休養日。だから門司港レトロ地区をゆっくりと散策したい。夕方、新大阪行き「ひかりレールスター」に小倉駅から乗車。車内放送が入らない「サイレンス・カー」(4号車指定席サルーンシート)は静かで実にいい。上質な大人の旅にオススメだ。
 5日目、旅の最終日は“弾丸フルムーン”らしい旅をしよう。新大阪6時27分発の「ひかり506号」で東京へ。東北新幹線「はやて」に乗り換えて、杜の都・仙台へと向かおう。仙台駅には名物「牛タン」などを味わえる店が“集結”し、一大グルメステーションになっている。駅でのランチは時間が有効に使え、弾丸フルムーンには最適だ。
 仙石線で松島海岸駅へ行き、日本三景の一つ「松島」を遊覧しよう。観光を終えて仙台に戻っても、まだ時間はある。ここは新鮮な寿司も味わっておきたい。秋はサンマやカキなどがおいしい季節だ。
 旬の幸でおなかも満たし、さあ大阪へ帰ろう。仙台発18時5分。東北と東海道の両新幹線に乗って23時16分に新大阪に到着だ。到着は遅いが快適なグリーン車なので、一眠りもでき、それほど疲れを感じない。この日の移動距離は1854km、運賃は2人分で119360円! まさに“弾丸フルムーン”を象徴する旅だといえる。
 

- ● JR実乗車運賃総額=236020円(通常期運賃で算出。伊勢鉄道分1960円含む)
- ● 総費用=82460円(フルムーン5日間パス80500円+伊勢鉄道分1960円)
- ● 乗車倍率=2.90倍(JR運賃総額234060円÷フルムーン5日間パス80500円)
- ● JR総乗車距離=3830.8km(JR総乗車距離3786.2km+伊勢鉄道分44.6km)
		
				| 《1日目》伊勢、二見浦へ「夫婦岩」を訪ねる旅 | 
		
				| (乗車距離●602.8km 通常期運賃合計●44080円)※1 | 
		
		
		
				| 新大阪発 | 8:13 | 東海道・山陽新幹線「ひかり」462号 | グリーン車利用 | 
		
				| 名古屋着 | 9:21 |  | 関西本線に乗換え | 
		
				| 名古屋発 | 9:35 | 快速「みえ」1号 | グリーン車はないので、普通車指定席を利用 | 
		
				| 二見浦着 | 11:09 |  | 夫婦岩を訪ねた後、名物の「大あさり」も賞味! | 
		
				| 二見浦発 | 14:10 | 快速「みえ」14号 | 普通車指定席を利用 | 
		
				| 名古屋着 | 15:59 |  | 東海道・山陽新幹線に乗換え | 
		
				| 名古屋発 | 16:11 | 東海道・山陽新幹線「ひかり」475号 | グリーン車利用 | 
		
				| 新大阪着 | 17:03 |  | 翌日はゆっくりの出発です! | 
		
				| 《2日目》名湯・別府温泉1泊と門司港レトロ散歩(1) | 
		
				| (乗車距離●675.9km 通常期運賃合計●34440円)※2 | 
		
		
				| 新大阪発 | 10:22 | 山陽新幹線ひかり555号 (ひかりレールスター)
 | 快適な普通車指定席「サルーンシート」を利用 | 
		
				| 小倉着 | 12:48 |  | 日豊本線に乗換え | 
		
				| 小倉発 | 13:08 | 特急「ソニック」23号 | グリーン車利用 | 
		
				| 別府着 | 14:26 |  | 別府温泉で湯めぐりするもよし。のんびりしましょう | 
		
				| 《3日目》名湯・別府温泉1泊と門司港レトロ散歩(2) | 
		
				| (乗車距離●697.9km 通常期運賃合計●38140円)※3 | 
		
		
				| 別府発 | 11:22 | 特急「ソニック」24号 | グリーン車利用 | 
		
				| 小倉着 | 12:32 |  | 快速列車に乗換え(普通列車も本数が多いので安心) | 
		
				| 小倉発 | 12:42 | 快速列車 |  | 
		
				| 門司港着 | 12:55 |  | 駅周辺は関門海峡を望む門司港レトロ地区。洋館が独特な雰囲気 | 
		
				| 門司港発 | 16:24 | 普通列車 | 快速列車も運行(普通列車ともに本数が多い) | 
		
				| 小倉着 | 16:37 |  |  | 
		
				| 小倉発 | 16:55 | 山陽新幹線ひかり572号 (レールスター)
 | 快適な普通車指定席「サルーンシート」を利用 | 
		
				| 新大阪着 | 19:21 |  | 4日目は休養日! | 
		
				| 《4日目》完全休養日!!(乗車距離●0.0km 通常運賃合計●0円) | 
		
				| 《5日目》杜の都・仙台、日本三景・松島へ“弾丸フルムーン” | 
		
				| (乗車距離●1854.2km 通常期運賃合計●119360円)※4 | 
		
		
				| 新大阪発 | 6:27 | 東海道新幹線「ひかり」506号 | グリーン車利用 | 
		
				| 東京着 | 9:40 |  | 東北新幹線に乗換え | 
		
				| 東京発 | 9:56 | 東北新幹線「はやて」13号 | グリーン車利用 | 
		
				| 仙台着 | 11:37 |  | ランチに名物の「牛タン」はいかがでしょう? | 
		
				| 仙台発 | 13:21 | 普通列車 | 仙石線の各駅停車でローカル線の旅を | 
		
				| 松島海岸着 | 14:00 |  | 観光地らしい賑わいが楽しい。日本三景の一つ「松島」を遊覧船から眺める | 
		
				| 松島海岸発 | 16:33 | 快速列車 |  | 
		
				| 仙台着 | 17:08 |  | 乗換え時間にさくっと美味しい「お寿司」を! | 
		
				| 仙台発 | 18:05 | 東北新幹線「はやて」24号 | グリーン車利用 | 
		
				| 東京着 | 19:47 |  | 東海道新幹線に乗換え | 
		
				| 東京発 | 20:03 | 東海道新幹線「ひかり」487号 | グリーン車利用 | 
		
				| 新大阪着 | 23:16 |  | 快適なグリーン車で一眠りするうちに到着 | 
※1=新大阪~二見浦間の合計運賃。運賃・乗車距離には伊勢鉄道分を含む ※2=新大阪~別府間の乗継割引適用運賃 ※3=別府~新大阪間の合計運賃 ※4=新大阪~松島海岸間の合計運賃
 
 
 フルムーン夫婦グリーンパスは、新幹線「のぞみ」が利用できないなど一部に例外はあるものの、JR全線のグリーン車と宮島航路が乗り放題できる。中でも価値があるのが「東海道新幹線」だろう。一般に購入できる「トクトクきっぷ」で、東海道新幹線を、しかもグリーン車で乗り放題できるものは他にないように思う。そして、寝台特急「北斗星」のB寝台2人用個室「デュエット」も追加料金なしで乗車でき、第三セクター区間(盛岡~八戸駅間)の料金もかからない。
 夫婦の合計年齢が88歳以上で利用できるフルムーンパス。一方が70歳以上なら5000円引きで購入でき、さらに、購入時に渡されるアンケートに答えれば、全夫婦に次の利用(今季または来季)の際に5000円引きとなる割引証が送られてくる。
 フルムーンパスは国内最強の鉄道優待制度だと思う。リッチで、お得で、快適なグリーン車の旅をして、夫婦の思い出をたくさん残してほしい。
  
- ● 旅人(著者)紹介 相澤秀仁&相澤京子
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写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で2巡している。“弾丸フルムーン”の旅はこれまでに60日以上、JRの路線も60000km以上乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫的旅情』『ねこめぐり』『猫ヶ島』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年にわたって連載。 ●ホームページ http://www.aizawa22.com