『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
秋田から羽越本線を経由して新潟へ行く特急「いなほ」。冬の日本海を車窓から眺めたい
秋田を出発してしばらくすると、進行方向右側の車窓に鉛色した冬の日本海が迫ってくる
新潟駅で買った雪だるま型のかわいい駅弁。中は色とりどりの華やかさ
軽井沢を出たあたりで望む、雪をいただく浅間山。長野新幹線「あさま」グリーン車より
千曲川のほとり、戸倉上山田温泉の宿にて信州牛を陶板焼きで味わう。ちょっと贅沢な気分
戸倉上山田温泉の宿でのんびりと湯浴みした貸切露天風呂。源泉かけ流しの温泉が心地よい
秋田から新潟、高崎と経由して信州の温泉でゆっくりする旅の3日目。秋田9時10分発、羽越本線の特急「いなほ8号」は、気がつくと進行方向右手の車窓に冬の日本海を映し出す。荒々しい波が打ち寄せる海、言葉では聞いていたものの、実際の風景をまのあたりにすると、鉛色の空と海の迫力に圧倒される。日本海に沿って走る羽越本線は酒田、鶴岡を通って新潟県へ。村上の手前、桑川駅付近の海岸線は「笹川流れ」と呼ばれ国の名勝にもなっている。通過時刻はおおよそ11時40分頃だろうか、こちらもぜひ見ておきたい。
新潟で上越新幹線「Maxとき326号」に乗り換えて高崎へ。高崎からは長野新幹線「あさま527号」に接続。軽井沢を過ぎ、今度は雪をいただく浅間山を右手に長野へ走る。今宵は信州の名湯、戸倉上山田温泉の湯で温まろう。
冬、日本海側の天候はかなり荒れることもある。そのような時は、秋田新幹線で大宮に出て長野新幹線に乗り換えて信州へ向かうなど対応は臨機応変に。JR全線が乗り放題できるフルムーンパスならばこそルートの変更は自在にできる。一方で旅費節約型のアレンジも。秋田から新潟を経由して一旦東京に戻り自宅泊に変更すれば宿泊費一泊分が節約できる。その場合、新潟駅で途中下車し、浮くお金で新潟のお寿司を食べて東京へ帰るのも一興かもしれない。翌日、朝の東海道新幹線で新大阪へ行くと元々のプランに“復帰”可能だ。
3日目●乗車距離:638.8km 運賃合計2人分(通常):5万3220円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
秋田~新潟 : @9510円(乗4620円 特グ4890円) 乗車距離273km
新潟~高崎 : @1万260円(乗3890円 特グ6370円) 乗車距離228.9km
高崎~長野 : @6410円(乗1890円 特グ4520円) 乗車距離117.4km
長野~篠ノ井 : @190円(乗190円) 乗車距離9.3km
篠ノ井~戸倉 : @240円(乗240円) 乗車距離10.2km ※「しなの鉄道」
※ 通常期の場合 ※ 距離は運賃計算に用いるキロ数
※ 乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
冬の日本海を眺めつつ信州の温泉へ ( 戸倉上山田温泉泊) | |||
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3日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
秋田 発 | 9:10 | 特急【いなほ8号】グリーン車 | |
新潟 着 | 12:58 | 上越新幹線に乗り換え | |
新潟 発 | 13:11 | 上越新幹線【Maxとき326号】グリーン車 | |
高崎 着 | 14:27 | 長野新幹線に乗り換え | |
高崎 発 | 14:59 | 長野新幹線【あさま527号】グリーン車 | |
長野 着 | 15:48 | 「しなの鉄道」に乗り入れる普通電車に乗り換え | |
長野 発 | 16:13 | 途中の篠ノ井まではJR線 | |
戸倉 着 | 16:38 | 篠ノ井からは「しなの鉄道」線です(別途運賃一人240円) 戸倉上山田温泉でゆっくり過ごします |
観光の問合せ
千曲市観光協会(戸倉上山田温泉) TEL 026-275-1326
スピードもさることながら乗り心地がぐっと良くなり進化の続く新幹線。フルムーンパスで利用できるグリーン車はさらに快適で静かな空間だ。と、富士山付近を走行中、パシャパシャパシャ!と鳴り響くシャッター音。富士山を撮る人の一眼レフだった。人によっては大仰な一眼レフの出す音は不快な音にも感じられ、静かな車内空間にふさわしくないのかもしれない。
私たちが車内等で使っているカメラは、シャツの胸ポケットに入る指定券サイズの軽いコンパクト・デジカメだ。必要十分の画質であり、写したい風景にさしかかった時、さっと手にし、ほとんど音をたてずに撮影。一眼レフはもはや使う場所を選ぶカメラになったのだろう。グリーン車に限らず、周囲に配慮しての撮影を心がけたいと自戒を込めて思う。
東海道新幹線700系グリーン車。大きな音を出すカメラの使用がはばかられる静けさ
名古屋行き特急「ワイドビューしなの」が長野駅で発車を待つ。丸っこいデザインが特徴的
広々とした眺望が楽しめる特急「ワイドビューしなの」グリーン車。長野~名古屋間は約3時間
大阪や京都と南紀を連絡する「スーパーくろしお」。振り子式の381系電車で白浜へ向かう
リゾート地、南紀白浜を代表する観光スポット、白良浜。遠浅の浜に真っ白な砂が美しい
“幻の魚”ともいわれていた「クエ」。鍋でいただくのもいいが、握りで食べても旨い!
南紀白浜で冬の味覚の王者ともいえる「クエ」。定番の「クエ鍋」でおいしい白身を堪能
旅の4日目は、信州から冬なお暖かい南紀白浜へのグルメ旅。長野10時ちょうど発の特急「ワイドビューしなの8号」に乗車し、篠ノ井線、中央本線を通って名古屋には13時1分に着く。名古屋からは再び景色を眺めつつ「こだま」の旅。列車接続まで時間に余裕もあり駅弁などを購入できる。
東海道新幹線は名古屋から新大阪までの区間も見どころが多い。名古屋を出てしばらくすると木曽川を渡り、岐阜羽島駅に。岐阜羽島を出発するとすぐに長良川を渡り、かつて天下分けめの戦いといわれた関ヶ原の合戦場にさしかかる。進行方向右手に「古戦場関ヶ原」の看板が見えるだろう。米原からは琵琶湖の気配を感じつつ近江路を京都へ。東寺の五重塔を左手に京都を過ぎれば終点、新大阪はもうすぐだ。
新大阪からは特急「スーパーくろしお17号」に乗り、白浜には17時20分到着。ここ南紀白浜で冬の味覚といえば、“幻の魚”ともいわれた高級魚「クエ」を使った「クエ鍋」となる。近年、当地で養殖技術が確立し、安定的に食べられるようになった「クエ」。南紀では握り寿司でも食べてみたが、脂がのってそれは上品な白身だった。
日本三古湯の一つにも数えられる白浜温泉で迎えた旅の最後の夜、温泉にのんびり浸った後は「クエ鍋」といきたい。鍋でいただく「クエ」も絶品で、締めくくりの雑炊も熱々。身も心も温まった。
4日目●乗車距離:638.5km 運賃合計2人分(通常):5万4000円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
戸倉~篠ノ井 : @240円(乗240円) 乗車距離10.2km ※「しなの鉄道」
篠ノ井~長野 : @190円(乗190円) 乗車距離9.3km
長野~名古屋 : @1万620円(乗4310円 特グ6310円) 乗車距離250.8km
名古屋~新大阪 : @8340円(乗3260円 特グ5080円) 乗車距離186.6km
新大阪~白浜 : @7610円(乗3260円 特グ4350円) 乗車距離181.6km
※ 通常期の場合 ※ 距離は運賃計算に用いるキロ数
※ 乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
冬なお暖かい南紀へ(南紀白浜温泉泊) | |||
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4日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
戸倉 発 | 9:32 | 長野行快速電車 | |
長野 着 | 9:53 | 篠ノ井までは「しなの鉄道」線(別途運賃一人240円)、篠ノ井からはJR線 | |
長野 発 | 10:00 | 特急【ワイドビューしなの8号】グリーン車 | |
名古屋 着 | 13:01 | 東海道新幹線に乗り換え | |
名古屋 発 | 13:47 | 東海道新幹線【こだま649号】グリーン車 | |
新大阪 着 | 14:53 | 在来線に乗り換え | |
新大阪 発 | 15:03 | 特急【スーパーくろしお17号】グリーン車 | |
白浜 着 | 17:20 | 南紀白浜は冬なお暖かなリゾート地 白浜温泉では“幻の魚”ともいわれた「くえ鍋」を |
観光の問合せ
白浜観光協会 TEL 0739-43-5511
景色が楽しい東海道新幹線。座席と座席のピッチにゆとりがあるグリーン車は、その分窓も大きめに作られており、富士山をはじめ車窓を広い視野で堪能できる。東海道新幹線のグリーン車は横に4席。東京から新大阪に向かって進行方向左側(海側)にAB席、通路をはさみ、進行方向右側(山側)にCD席がある。景色がいい窓側はA席とD席となり、富士山が最もよく見えるのはD席、いわば特等席といえる。窓側座席でのアングルはカメラを窓に近づけ、窓の反射を最小限にして風景を写すもの。
しかし、窓側からの写真よりも通路側の席からの方が印象的な写真が写せる。たとえば、B席やC席からD席の窓をまるで額縁のように見立てて写す富士山もよし。また、A席の窓を額縁のようにして長良川を写してみるのもいい。絵になる風景は額に入れてこそ映えるのかもしれない。
東海道新幹線下り、岐阜羽島駅を出てすぐに渡る長良川。C席よりA席の窓を額縁にして撮影
冬なお暖かい南紀の海辺に勢ぞろいした猫たち。春めいた日差しにススキが揺れていた
紀州の郷土料理「めはり寿司」もぜひ食べたい。昔は目を見張るほど大きかったという
南紀観光の玄関口、白浜駅。特急の本数も多く便利だ。温泉街へは駅からバスで10分ほど
暖かい南紀もさることながら冬の京都にも趣がある。南禅寺から哲学の道をぶらりと散策
底冷えの京都で出会った「カレーうどん」。たっぷりの油揚げが京都らしく身体もポカポカ!
300系「ひかり」グリーン車の窓を染める夕焼け。センチメンタルな旅情も乗せ一路、東京へ
旅の最終日、春のように暖かな南紀を離れ東京に帰るその途中、まだ冬の装いの京都に立ち寄ってみよう。
白浜10時29分発の特急「スーパーくろしお12号」に乗車。新大阪には12時49分に到着。ここから京都へは東海道新幹線利用のプランとしてみたが、在来線の新快速電車も本数が多く便利。フルムーンパスならどちらのルートもお好みしだいで利用できる。
千年の都、京都。春の桜、秋の紅葉は言うに及ばず、雪化粧した金閣寺など、寒さ厳しい冬さえも趣がある。歴史に彩られた社寺、冬にしか出会うことのできない風景…、南禅寺界隈から哲学の道にかけても冬は観光客で混み合いもせず落ち着いた散策の時が持てる。また、京都では3月21日まで「京の冬の旅」キャンペーンが行われており、普段は非公開になっている文化財の特別公開に出かけてみるのもおすすめだ。
さて、散策で冷えた身体を熱々の「カレーうどん」で温めたい。実は京都は「カレーうどん」がおいしい町で、刻んだ油揚げが使われているのも特徴の一つ。なかなか冷めない「うどん」をすすればポカポカになる。
プランでは京都16時56分発「ひかり480号」で東京に帰るが、自由な旅が得意なフルムーンパスを活かし、もっと長く京都に滞在して夜遅く帰るプランに変更してもいいだろう。ゆったりとしたグリーン車のシートに座り、5日間の旅を二人語らううちに列車は東京駅に到着する。
5日目●乗車距離:734.2km 運賃合計2人分(通常):5万7860円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
白浜~新大阪 : @7610円(乗3260円 特グ4350円) 乗車距離181.6km
新大阪~京都 : @ 3460円(乗540円 特グ2920円) 乗車距離39km
京都~東京 : @1万7860円(乗7980円 特グ9880円) 乗車距離513.6km
※ 通常期の場合 ※ 距離は運賃計算に用いるキロ数
※ 乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
冬の京都を散策し、東京へ | |||
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5日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
白浜 発 | 10:29 | 特急【スーパーくろしお12号】グリーン車 | |
新大阪 着 | 12:49 | 東海道新幹線に乗り換え | |
新大阪 発 | 13:13 | 東海道新幹線【ひかり518号】グリーン車 | |
京都 着 | 13:27 | 東寺の五重塔を右手に京都着 冬の京都を散策し、熱々の「カレーうどん」を食べます |
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京都 発 | 16:56 | 東海道新幹線【ひかり480号】グリーン車 | |
東京 着 | 19:40 | 旅の終わりもグリーン車で快適に |
京都市観光協会 TEL 075-752-0227
私たちが旅の記録カメラとして愛用しているのは重さ200g足らず、指定券ほどの大きさのコンパクト・デジカメ。しかし、一眼レフにさほど負けないくらいよく写る。ただ、コンパクト・デジカメはシャッターのタイムラグ(シャッターを押してから実際に画像が写るまでの時間差)があり、一眼レフに俊敏さでは及ばない。それでも通過待ちの「こだま」のすぐそばをトップスピードで追い越す「のぞみ」だってとらえることができる。
シャッター優先の撮影モードで高速のシャッタースピードをセットし、あらかじめ線路にピントを合わせておく。そして、「のぞみ」が見えた次の瞬間、シャッターを切っている。カメラのタイムラグもだんだんわかり、試行錯誤のうちにタイミングがつかめるだろう。コンパクト・デジカメだからと侮ってはいけないと思う。
米原駅で追い越す「のぞみ」。グリーン車内から通過の一瞬をコンパクト・デジカメで激写
<東京発5日間全体の金額と距離>
運賃総額:27万40円 ( JR賃総額:26万9080円に「しなの鉄道」960円を合算)
総乗車距離:3315km (JR総乗車距離3294.6km+「しなの鉄道」20.4kmを合算)
乗車倍率:3.34倍 (JR運賃総額÷フルムーン5日間パス定価8万500円)
※運賃は2名分 ※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
※運賃・距離は、JR東日本「えきねっと 乗換・運賃案内」で表示されるものです
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。これまでに80日以上「フルムーン旅行」をし、JR路線も約8万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。 ●ホームページ http://www.aizawa22.com
安芸の宮島、大鳥居をバックに“夫婦撮り
文・撮影:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成23年1月現在のものです。