『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
山陽新幹線とも連絡し、四国・山陰方面へ行きやすい岡山は、中国地方の鉄道の要衝
岡山から倉敷を経て、中国山地を貫いて山陰地方へと走る特急「やくも」。381系電車を使用
松江市内では観光スポットをめぐるループバス「ぐるっと松江レイクライン」の利用が便利
山陰地方随一の名城、松江城。現存する天守は堂々たるもの。国の重要文化財に指定されている
宍道湖畔にある松江は堀川の風景がまるで水郷のよう。堀川をめぐる遊覧船も情緒たっぷり
出雲そばの特徴は、普通3段の丸い漆器に蕎麦が盛られ、紅葉おろしなどの薬味で味わうところ
岡山で迎えた旅の朝。3日目の午前中を岡山などで観光にあて、午後は「出雲そば」を求めて山陰、松江へ。
四国へも山陰へも行きやすい交通の要衝、岡山。ここは日本三名園の一つ、大名庭園だった後楽園があり、また烏城(うじょう)とも呼ばれる岡山城も駅からほど近い。一方、隣町には美観地区で知られる倉敷もある。岡山から山陰地方へ行く特急「やくも」は途中、倉敷駅に停車。午前中を倉敷で過ごされるのであれば倉敷駅からご乗車を。ちなみに本プランで利用する特急「やくも11号」の倉敷駅発車時刻は12時16分となっている。
さて、山陰地方、島根県といえば「出雲そば」を食べてみたい。出雲大社の玄関、出雲市駅が終着駅の特急「やくも」。まだ時間も早いので、プランをアレンジして出雲大社へ詣でるのもいい。旧暦の10月は神無月だが、出雲地方においては神在月だ。
宍道湖のほとり、島根県の松江は山陰地方きっての城下町であり、水郷さながらの堀川めぐりにも情緒がある。町のシンボル、松江城の別名は千鳥城。烏城の岡山城と対比させつつの見学は、お城ファンにはきっとこたえられないだろう。
松江のグルメといえば、宍道湖七珍もさることながら、「出雲そば」も独特の味わいをみせる。当地の蕎麦は通常、3段式の漆器に盛った割子そばで、紅葉おろしなどの薬味をのせ、ダシ汁をかけて食べ進む。
市内には松江しんじ湖温泉もある。温泉派の方は湖畔の宿に泊まり、宍道湖に沈む夕陽をぜひぜひ眺めてみよう。
3日目●乗車距離:188km 運賃合計2人分:16,520 円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
岡山~松江:@8,260円(乗3,350円 特グ4,910円) 乗車距離188.0km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
蕎麦めぐりフルムーン 3日目 | |||
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3 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
岡山を観光し、松江で「出雲そば」を味わう (松江泊) |
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岡山 発 | 12:05 | 特急【やくも11号】グリーン車 | |
松江 着 | 14:37 | 「出雲そば」を味わい、この日は松江泊 |
観光の問合せ
■岡山:岡山市観光案内所(JR岡山駅構内)
TEL. 086-222-2912
■松江:松江国際観光案内所(JR松江駅構内)
TEL. 0852-21-4034
長野県がど真ん中に位置している中部地方。日本で蕎麦というと真っ先に「信州そば」が思い浮かぶほど蕎麦のイメージが強いエリア。
長野県はソバの生産量では北海道に次ぐ第2位になったものの、洗練された手打ちそばは本場ならでは。長野市内でも信州産の地粉による十割そばを出す店もあり、ぜひとも味わってみたいもの。
長野のお隣、新潟県の「へぎそば」もユニーク。布海苔でつないだ特有ののど越しは魚沼地方の小千谷や越後湯沢などで味わえる。同じく、お隣の岐阜県では飛騨地方が蕎麦処で、「飛騨そば」は高山市内などで食べられる。
北陸地方では福井の「越前そば」が有名どころ。福井県産のそば粉を用いる店も多く、大根おろしのつゆでいただく「おろしそば」が身体に優しい味わいだ。
信州と並び蕎麦処として知られる岐阜県の飛騨地方。山菜を盛った「山菜そば」が山国らしい
特急「やくも」のグリーン車。大型シートが並び、大山(だいせん)など山陰の自然を車窓から眺めて満喫
松江駅で購入の駅弁は、境港水揚げのベニズワイガニを盛った「かに寿し」。山陰らしい味
東海道新幹線の旅では、車窓に東寺の五重塔が見えてくると京都に着く実感がわいてくる
古都、京都の秋。木々は時に紅く、時に黄色く、まるで錦のじゅうたんのように美しく彩る
京都名物「にしんそば」。甘露煮のニシンが上品なつゆとマッチし、寒い季節には身体も温まる
東海道新幹線「ひかり」も多くがN700系による運転に。快適なグリーン車でくつろぎのひと時を
松江藩七代目藩主、松平治郷(まつだいらはるさと)は風雅な一面を持ち、茶人としても知られ、そして、大の蕎麦好きであったという。和菓子のようにしっとりとした佇まいもみせる松江、当地で食べた「出雲そば」のお味はいかがだっただろうか。
旅の4日目は、風雅さの本家ともいえる京都に立ち寄り、一旦、東京へ。速くて快適な新幹線がフルムーン旅行の主役となった今、途中で一度、東京に戻るのも自由自在。自宅をホテル代わりにすることで、宿泊費や旅の荷物まで減らしていける。
松江から京都への旅路。乗り換え駅の岡山では京都まで直通の東海道新幹線「ひかり」もあって、これの利用が便利だ。乗り継ぎの時間に、駅でランチを食べることもでき、また松江駅などの駅弁を車内ランチにするのもそれは格別と思う。
秋の京都。紅葉が古都を一段と雅に輝かせ、毎年毎年、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン内容が気になる。2014年盛秋のキャンペーン寺院は源光庵(げんこうあん)。金閣寺のやや北にあり、京都駅からは市営地下鉄や市バスを利用して訪ねて行ける。本プランでは京都に約5時間滞在でき、こちらにも出かけてみたい。
山に囲まれた盆地にある京都では、乾燥させた海産物を料理にも巧みに活かしている。今では名物の一つ、「にしんそば」もまた然り。上品なつゆと甘露煮のニシン、そのハーモニーも古都らしいもの。
京都らしいといえば、秋ともなれば千枚漬けの季節。聖護院かぶを薄くスライスした漬物も京都みやげの定番になっている。新米のごはんのお供にも最高ですよ!
4日目●乗車距離:920.9km 運賃合計2人分:75,520 円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
松江~岡山:@8,260円(乗3,350円 特グ4,910円) 乗車距離188.0km
岡山~京都:@11,120円(乗3,670円 特グ7,450円) 乗車距離219.3km
京都~東京:@18,380円(乗8,210円 特グ10,170円) 乗車距離513.6km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
蕎麦めぐりフルムーン 4日目 | |||
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4 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
京都で「にしんそば」を食べ、一旦、東京へ (自宅泊) ~ N700,700系に乗車 ~ |
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松江 発 | 8:58 | 特急【やくも10号】グリーン車 | |
岡山 着 | 11:38 | 乗り換え | |
岡山 発 | 12:24 | 山陽・東海道新幹線【ひかり470号】グリーン車(700系) | |
京都 着 | 13:55 | プチ観光と「にしんそば」を味わう | |
京都 発 | 19:33 | 東海道新幹線【ひかり534号】グリーン車(N700系) | |
東京 着 | 22:10 | この日は自宅泊 |
観光の問合せ
■京都:京都総合観光案内所(JR京都駅構内)
TEL. 075-343-0548
歴史の深い近畿地方。どちらかといえば、うどん好きの感じが濃いものの、京都ではニシンの甘露煮をのせた「にしんそば」が名物となり、お隣の滋賀県には「日吉そば」(大津市)がある。神戸などでは、熱いもりそばで、平安時代末期の武将・平敦盛(たいらのあつもり)にかけた「敦盛そば」があって、実際に須磨浦には平敦盛の供養塔といわれている敦盛塚が建っており、そのすぐ“そば”でも「敦盛そば」が食べられる。兵庫県では但馬地方の「出石(いずし)そば」も知られ、こちらは数枚の皿に盛って提供するスタイルが独特だ。
中国地方ではなんといっても「出雲そば」だろう。出石は皿そばだが、出雲そばでは丸い漆器を用いた割子そば。出雲大社周辺や松江などでも堪能できる。
平敦盛にかけた「熱いもりそば」。写真は神戸、敦盛塚の“そば”で味わった「敦盛そば」
東北新幹線の主役となったE5系。モダンで落ち着いた雰囲気のグリーン車に乗って行こう
会津地方の蕎麦処、山都の玄関となるJR山都駅は、見た感じ「そば店」のような佇まいだ
「山都そば」をシンプルに味わうなら「もりそば」が一番。10月中旬以降は新蕎麦が堪能できる
山都駅に着いた磐越西線の列車。フルムーンパスの旅は新幹線もよし、ローカル列車もよし
秋の風景が広がる磐越西線の旅。新津を経て新潟まで、車窓を眺めながらのんびり旅をしよう
越後・魚沼地方の名物「へぎそば」。波状に小分けされる盛り方「ぼっち盛り」もユニーク
旅の最終日は日帰りで。東北新幹線、磐越西線、上越新幹線などに乗り、会津や越後の蕎麦処をぐるっと廻ってみたい。日帰りだから旅装は少なくて済み、身軽な出で立ちで蕎麦をじっくり味わおう。フルムーンパスなら日帰り旅行も泊まりがけの旅行も自在に楽しめる。
東京から東北新幹線の顔、E5系新幹線グリーン車で郡山へ。この先、磐越西線の列車に乗り換え、会津きっての蕎麦処、山都(やまと)へ向かう。
まるで蕎麦店のような駅舎を出れば、そこはもう蕎麦の里。駅周辺でも「山都そば」が食べられる。ここ山都は標高が高く、寒暖の差が大きい気候。それゆえ良質のソバが実り、香り高い手打ちそばが人気だ。10月中旬ともなれば、さらに風味が増す新蕎麦のシーズンに。
山都ではそういった蕎麦を水だけでいただく「水そば」もぜひお試しを。水だけとは思えない豊かな味わいにびっくりするだろう。
おいしい蕎麦でお腹を満たし、秋の磐越西線、色づく木々を車窓にのんびり眺め、新津を経て新潟へ。新潟と聞くとコシヒカリを思い出すが、当地ならではの蕎麦「へぎそば」もある。上越新幹線で越後湯沢へ行き、へぎそばの店へ。
「へぎ」とは四角い木の器、そこに布海苔をつなぎに用いた蕎麦を「ぼっち盛り」にした「へぎそば」。波のように小分けにされた蕎麦は食べやすく、つなぎに布海苔でツルツルとしたのど越しが新鮮だ。
日本の伝統食である蕎麦を満喫する旅。細く長く末永く、身体にも良いとされている蕎麦。蕎麦を食べると夫婦仲まで良くなるような気がしてくる。
5日目●乗車距離:751.4km 運賃合計2人分:58,700 円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
東京~郡山:@10,770円(乗4,000円 特グ6,770円) 乗車距離226.7km
郡山~会津若松:@1,140円(乗1,140円) 乗車距離64.6km
会津若松~山都:@500円(乗500円) 乗車距離26.5km
山都~新津:@1,490円(乗1,490円) 乗車距離84.5km
新津~新潟:@320円(乗320円) 乗車距離15.2km
新潟~越後湯沢:@6,920円(乗2,270円 特グ4,650円) 乗車距離134.7km
越後湯沢~東京:@8,210円(乗3,350円 特グ4,860円) 乗車距離199.2km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
蕎麦めぐりフルムーン 5日目 | |||
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5 |
発着駅 | 時間 | メモ |
会津で「山都そば」、 越後で「へぎそば」を味わう ~ E5,E4,E2系に乗車 ~ |
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東京 発 | 9:40 | 東北新幹線【やまびこ45号】グリーン車(E5系) |
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郡山 着 | 10:58 | 乗り換え | |
郡山 発 | 11:41 | 磐越西線普通列車 | |
会津 若松 着 |
13:00 | 乗り換え | |
会津 若松 発 |
13:06 | 磐越西線普通列車 | |
山都 着 | 13:34 | 「山都そば」を味わう | |
山都 発 | 15:01 | 磐越西線普通列車 | |
新津 着 | 17:10 | 乗り換え | |
新津 発 | 17:15 | 信越本線普通列車 | |
新潟 着 | 17:34 | 乗り換え | |
新潟 発 | 17:51 | 上越新幹線【とき342号】グリーン車(E2系) | |
越後 湯沢 着 |
18:39 | 「へぎそば」を味わう | |
越後 湯沢 発 |
20:09 | 上越新幹線【Maxとき348号】グリーン車(E4系) | |
東京 着 | 21:20 | 旅の終わり |
観光の問合せ
■山都(喜多方市):そばの里の山都観光案内所
TEL. 0241-38-3000
■越後湯沢:湯沢町観光協会
TEL. 025-785-5505
四国といえば、うどん県こと香川県が一際目立ち、九州も福岡の「ごぼう天うどん」や「かしわうどん」などが名物となり、いずれ劣らぬ「うどん文化圏」の印象が強い。とはいえ、蕎麦食も根付いており、四国では徳島県の山里・祖谷地方の「祖谷そば」が最も有名。地元で収穫されたそば粉を打つ蕎麦は太く短く軟らかいのが特徴で、平家の落人が潜んでいたという祖谷だけに、昔の時代の蕎麦食を今に伝えている感じがする。
九州といえば、この頃、蕎麦が盛んになってきており、特に熊本県の阿蘇地方が新たな蕎麦処として注目のスポットに。他には大分県の「豊後高田そば」や、宮崎県椎葉村の「椎葉そば」もある。また、熊本県の人吉も蕎麦処であり、球磨川に沿って走る肥薩線に乗って出かけてみたい。
四国とともに「うどん文化圏」と思う九州。しかし、駅の立ち食いうどん店でも蕎麦がある!
<東京発 蕎麦めぐりフルムーンの運賃総額、総乗車距離>
JR運賃総額:259,480円 (2名分合計 通常期で算出)
JR総乗車距離:3015.4km
お得になった金額:176,680円 (JR運賃総額-フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用])
乗車倍率:3.13倍 (JR運賃総額÷フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用]
)
※運賃計算キロは、JR東日本のサイト、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示のものです。
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡している。これまでに130日以上フルムーンパスでの旅をし、JR路線も約12万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、
『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。
夫婦旅ブログ http://fullmoon.aizawa22.com
文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは2014年10月現在のものです。
※時刻は、JR時刻表2014年9月号、えきねっと「乗換・運賃案内」、JRおでかけネット「マイ・ダイヤ」等のものを使用。
※運賃は2014年10月4日をモデルに算出しました。