人間はさまざまだ。江戸時代に大流行した“マツサカ”を着れば粋人(すいじん)のような気分になり、武家屋敷が建ち並ぶ通りを歩けば作法を身に着けた娘のように背筋をのばす。隠れ家風の一軒家でフレンチを食べれば五感が刺激され、数奇屋造りの登録有形文化財に泊まれば文士みたいに日本酒をたしなむ。粋人や藩士の娘になりきれば、松阪でいろいろな人生ドラマを味わった気分。“なりきり”に付き合ってくれる友人と一緒なら、なおさらだ。
江戸時代、親や夫に無断で出かけても許されたといわれる「おかげ参り」。今はそこまで寛容でもないし、そこまでする必要もないけれど、伊勢神宮はやはり特別だ。宇治橋を渡れば、そこは聖なる世界。身も心も清められ、清々しい気持ちで満たされる。だからもう一度橋を渡って日常に戻ってきても、充足感とともに感謝の気持ちが沸き起こる。今自分がいることに感謝。側にいてくれる友達に感謝。がんばっている自分をいたわれる。おかげさま。すべてこの言葉に集約される。