『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
鎖国時代に唯一、海外に開かれた窓口として発展した長崎の町には、日本の「和」、中国の「華」、オランダやポルトガルなど西洋の「蘭」がミックスされた「和華蘭(わからん)文化」が息づきます。また日本の産業革命先駆けの地として、近代化産業遺産が数多く残り、キリスト教「信徒発見」の奇跡を伝える教会など、旅心をかき立てる物語がたくさんあります。この秋、ストーリーある旅を求めて、さあ、「旅さきは、ながさき」へ。
白とグレーのかもめが九州の
大地と海沿いを舞う
鹿児島本線・長崎本線を経由して博多駅~長崎駅間を運転。車両は白いボディが爽やかな885系と洗練されたメタリックグレーの787系。白とグレー色のふたつの「かもめ」が佐賀平野や有明海ののどかな景色を車窓に映して走る。787系には「4人用グリーン個室」、885系には「アートギャラリー」などが備わり、魅力ある設備とともに高級感のあるしつらえで優雅な旅を演出する。
展望抜群のパノラマ列車で
ハウステンボスへGO!
キャラクター「くろちゃん」の愛らしいイラストがあちこちで出迎え、子ども向けの遊び場や親子シートのあるファミリー車両が特徴の特急列車。平成28年度10~12月には長崎デスティネーションキャンペーン(DC)の開催に伴って運転区間を変更し、10・11月の特定日に博多駅~ハウステンボス駅間を走る。長崎・佐世保(させぼ)の旅に便利なJR九州「ENJOY!ハウステンボスフリーきっぷ」も発売中。
廃墟の島で異様な
魅力を放つ世界遺産を体感
採炭のために岩礁を拡張して造られた端島は、通称「軍艦島」と呼ばれる。大正時代から鉄筋コンクリートの高層アパートが建てられるなど、最新の建築技術で形成された町であったが、炭坑閉山後は無人島となった。上陸ツアーでは坑口へと続く階段や現存する日本最古の7階建て鉄筋コンクリート造りアパートなどを見学。異様な魅力を放つ廃墟の光景を目の当たりにできる。
戦艦「武蔵」を造った
歴史を伝える
明治31年(1898)、鋳物工場に併設する木型場として建造。原爆投下の爆風にも耐えた、長崎造船所に現存する最古の建物だ。館内天井部には、木型の運搬で使ったクレーン用レールが残るなど、往時の雰囲気を伝える。現在は史料館として、戦艦「武蔵」や造船技術の進歩を物語る機械などを年代順に展示。
「信徒発見」の舞台となった
日本最古の教会堂
慶応元年(1865)献堂。翌年、厳しいキリシタン禁制のなかで約250年間、信仰を守り伝えてきた浦上キリシタンが、プチジャン神父に信仰を告白した「信徒発見」の劇的な舞台となった。旧羅典(らてん)神学校などの関連施設とともに、世界遺産暫定リスト登録の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」構成資産のひとつとなっている。
写真提供=長崎県観光連盟
記載・掲載に当たってはカトリック長崎大司教区の許可をいただいています。
教会は信者の方にとって大切な祈りの場です。マナーを守って見学しましょう。
坂本龍馬直筆の書もある
料亭で味わう長崎名物
円卓に並ぶ大皿料理を皆で取り分ける、中国風の食事様式を採り入れた長崎名物料理。和食をベースに中華・オランダ料理のエッセンスが加わった多彩なメニューが特徴だ。寛永19年(1624)創業の史跡料亭「花月」は豪華な卓袱料理に加え、坂本龍馬や江戸時代の儒学者・頼山陽(らいさんよう)が足繁く通ったという歴史も興味深い。昼(12~14時)、夜(18~20時)ともに完全予約制。
山頂駅直前のゴンドラ
からの景観に息をのむ
「雲仙ロープウェイ」で昇る妙見岳(みょうけんだけ)では、コミネカエデ、ウリハダカエデ、ドウダンツツジなどが紅葉し、「普賢岳紅葉樹林」として国の天然記念物にも指定されている。平成28年10月28日~11月6日には、仁田峠(にたとうげ)循環道路開通後初となる夜間運転ロープウェイを楽しむツアー「雲仙仁田峠プレミアムナイト」(写真)が開催。ライトに照らされ、妙見岳の森に浮かぶ、燃えるような紅葉をゴンドラから眺めたい。
池と山並みを望み、美肌に
評判の自家源泉に浸かる
雲仙は元来、「温泉」と書いて「うんぜん」と読まれていた地域。大宝元年(701)開湯の雲仙温泉は、いわば温泉の中の温泉だ。なかでも「東園」はおしどりの池の畔に建つ、絶好のロケーション。大浴場や露天風呂からは池と雲仙連山を望め、ゆっくりと寛げる。単純酸性温泉の自家源泉は、保湿に有効で美肌効果に評判が高いといわれるメタケイ酸を多量に含んでいる。
生地とカスタードクリーム、
生クリームとフルーツが絶妙
ケーキといえば、全国的にはイチゴのショートケーキを思い浮かべる人が多いかもしれないが、長崎市でケーキといえば「シースクリーム」。スポンジ生地の間にカスタードクリームを挟み、上には生クリームと黄桃、パイナップルのシロップ煮がのる。「梅月堂(ばいげつどう)」が発祥店だが、現在は市内の数多くの洋菓子店で提供する。
天草四郎が率いた
島原・天草一揆終焉の地
三方を有明海に囲まれていた原城は、明応5年(1496)、肥前国のキリシタン大名・有馬貴純により築城されたという。その後、寛永14年(1637)年に起こった「島原・天草一揆」の終焉の地となり、2万数千人を超える領民が最期を遂げた。現在残る城址は、同じく有馬氏の城であった日野江城跡などとともに、世界遺産暫定リスト登録の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産となっている。
変化に富んだ九十九島の
海の環境を再現した大水槽
「海きらら」は九十九島の海の世界を表現した地域密着型の水族館。なかでも「九十九島湾大水槽」は、国内でも珍しい屋外型の大水槽で、太陽の光がキラキラ降り注ぐ様子を見ることができる。岩礁や磯、砂地など九十九島の海の環境を再現した水槽には、約120種13000匹の生き物たちが展示され、さまざまな角度から観察できる。
世界最大級の
光のアートに包まれる
ハウステンボスの町並みが、世界最大級のLED1300万球による幻想的なイルミネーションで包まれる。シンボルタワー「ドムトールン」から流れ出る「光の滝」は、広大な青い海「光のアートガーデン」へ流れ込むなど、パーク内各所で圧倒的な光の芸術を展開。「光の観覧車」や高さ65メートルの「ドムトールン展望室」から見下ろす眺めは夢のよう。
石垣と水路が印象的な
鉄砲組の居住地帯
島原城築城とともに西側に形成された武家屋敷の町。一帯は鉄砲を主力とした徒士部隊約700戸の居住地だったことから「鉄砲町」とも呼ばれる。往時の面影をよく留める下ノ丁通りでは、山本・篠塚・鳥田邸の3棟が無料公開されている。町筋にのびる石垣や生活用水に使われていた中央の水路が趣深い。
コスモス咲き乱れる高原
見頃は例年10月下旬まで
標高1057メートルの五家原岳(ごかはらだけ)の中腹に位置し、有明海や雲仙岳を望む高原。秋にはピンク・白・赤・赤紫のコスモス約20万本が鮮やかに咲き乱れ、春には約10万本の菜の花が斜面一帯を黄色に染める。隣接する「白木峰高原コスモス花宇宙館」では、大型天体望遠鏡による天体観測やコスモスの絵画を鑑賞できる。
市街地の明かりや九十九島、
佐世保湾の漁火が印象的
標高364メートルの弓張岳展望台からは、西側に五島灘と九十九島、南側に深い入り江の佐世保港、そして東側には市街地の美しい町並みと、三方のパノラマを見渡せる。夜には町の明かりやオレンジ色に輝く米軍基地、漆黒の海に点在する漁火(いさりび)が非常に印象的だ。九十九島の浮かぶ海に夕日が沈む光景も素晴らしい。