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滝川~根室を結ぶ根室本線のうち、普通列車2429Dは滝川~釧路を走る。使用される車両は日によって異なるが、国鉄時代に首都圏を走った懐かしの朱色塗装のキハ40形が運用される場合も多々ある。
豚肉を甘辛いタレで味付けた豚丼は、帯広発祥。帯広駅構内(改札外)には「炭焼き豚どんのぶた八」の販売店があり、豚どんの駅弁を購入できる。ひも引き加熱式タイプが1200円、加熱なしが650円~
「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」敷地内、北海道三大名橋のひとつとして知られる幣舞(ぬさまい)橋を望む釧路港の岸壁に建つ「岸壁炉ばた」。地元の魚介類などを、炭火で豪快に焼いて食べる。
釧網本線釧路~塘路間の絶景ポイントでは人が歩くくらいの速度まで減速し、景色を味わいながらゆっくりと走る「くしろ湿原ノロッコ号」。雄大な湿原や蛇行する釧路川の眺め、野生動物との出合いが楽しみ。
森と糠平湖の湖水に囲まれたぬかびら源泉郷。「糠平舘観光ホテル」 (写真)は男女別の大浴場・露天風呂のほかに、川に面した混浴の「仙郷の湯」があり、野趣あふれる。
滝川駅を9時36分に出発する根室本線の普通列車(列車番号2429D)は、釧路駅までの308.4kmを8時間27分で運行する、運行距離・時間ともに日本一長い定期普通列車。鉄道ファンなら、ぜひとも一度は完乗したい。
滝川駅を滑り出した2429Dは、車両の増結や列車の交換などで、富良野駅、落合駅に約20分停車。新得駅にも12分停車するので、ホームに降りて名物の駅そばをすするか、容器(別料金30円)に入れてもらって車内に持ち込むのもいいだろう。次にまた約20分停車する帯広駅では駅弁「豚どん」を買い込もう。前進と交換待ちを繰り返しながら進み、厚内(あつない)駅手前から太平洋が見え始める。大海原が見える車窓をおともに約1時間40分列車に揺られ、釧路駅に到着する。
さすがに座っていた時間が長く、歩きたい、ビールが飲みたい! そこで、「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」へ。北海道らしいジンギスカンを楽しめる「釧路霧のビール園」も惹かれるが、釧路港の岩壁に並ぶテントの中で、店頭に魚介類をずらりと並べた各店舗で食材を買い込み、自分で焼いて食べる「岸壁ろばた」で炭火焼を味わうことにする。豪快で楽しさ満点の食事を楽しめる。MOOには釧路らしいつまみを販売している珍味店や海産物店なども多数あるので、買い込んで、ホテルでもう1杯。
2日目は「くしろ湿原ノロッコ号」を楽しんだら、列車とバスでぬかびら源泉郷へ移動して宿泊。最終日は旧国鉄士幌線の鉄道遺産めぐりだ。晩夏から年始頃まで糠平湖の湖底に沈む幻の橋・タウシュベツ川橋梁への林道は通行制限があり、林野庁の許可なくして立ち入ることはできない。そこで、許可を得て開催されている「旧国鉄士幌線アーチ橋見学ツアー」に参加し、古代ローマの水道橋のようなタウシュベツ川橋梁の神秘的な光景とともに、第五音更川橋梁や幌加駅などをめぐる。
午後は独自に士幌線跡に整備されている北海道自然歩道「東大雪の道」を廃線跡ウォーキング。ぬかびら源泉郷にある「上士幌町鉄道資料館」から、タウシュベツ川橋梁を対岸から望むタウシュベツ展望台の先に位置するメトセップ橋まで約8.5km続くが、帰りのバスの時間もあるので、三の沢橋梁までを往復することにする。線路跡を歩き、三の沢トンネルの入口から、暗い隧道内を見やり、列車が通行していた時代に想いを馳せる。その先の三の沢橋梁は長さ40mで、橋梁の上を歩くことができる。かつて鉄道が走っていた橋の上を、自分の足で歩いているかと思うと感慨深い。熊の生息地域内にあたるので、熊除けの鈴(上士幌町鉄道資料館で販売あり)を持参したり、「ひがし大雪自然館」で情報収集するなどして歩き出すといいだろう。
バスで帯広駅に戻り、特急「スーパーとかち」で帰路へ。帰りも普通列車希望なら、5時30分~7時15分の「早朝タウシュベツ橋ツアー」に参加した後、独自に廃線跡をウォーキング。10時15分発のバスで帯広に向かうといい。
渓谷沿いを走った旧国鉄士幌線には音更川を渡る数々の鉄道橋が架けられていた。いずれも渓谷美に似合うアーチ橋で、なかでも季節によって見え隠れするタウシュベツ川橋梁は神秘的な雰囲気をたたえる。全国に数ある鉄道遺産のなかでも有数の美しさ。
夏休み期間に1日1往復運転されている臨時列車の快速「ムーンライトながら」。青春18きっぷで乗車の場合は、0時をまたいで最初に停車するのが小田原駅のため、東京~小田原駅までの乗車券を別途購入しておくべきなのは、鉄道ファンには言わずもがなだろう。
東京駅は、改札内には「グランスタダイニング」など、改札外にも「黒塀横丁」など数々のレストラン街があり、飲食を十分楽しんでから夜行列車に乗り込める。「グランスタ」の惣菜店でつまみを買い、列車に持ち込むのもいい。日本酒総合ステーション「はせがわ酒店」や泡をテーマにした「LE COLLIER MARUNOUCHI」などで、洒落た酒も手に入る。
アイマスクやエアークッションを持参し、食料・飲料を買い込んだら、いよいよ快速「ムーンライトながら」に乗車。約6時間40分、うつらうつらの睡眠ながら、大垣駅に降りれば、鉄道旅の楽しさから意気揚々。まずは、東海道本線の支線、通称・美濃赤坂線を探訪。終点の美濃赤坂駅まではたった2駅、6分の乗車。しかしながら、レトロな木造駅舎の美濃赤坂駅は旅情をかき立て、終着駅のムードが満点だ。中山道の56番目の宿場・赤坂宿まで徒歩10分弱で行くことができ、早朝の町歩きも楽しい。
美濃赤坂から大垣駅に戻ったら、東海道本線・高山本線経由で美濃太田駅から長良川鉄道の「ゆら~り眺めて清流列車」に乗車。名前の通り長良川に沿って走る長良川鉄道は、特に湯の洞温泉口~郡上八幡の区間に大きな橋梁が7つ架かり、川の眺めを存分に楽しむことができる。列車は終点・北濃駅まで行くが、郡上八幡駅で途中下車して観光。7月11日~9月5日(一部日程を除く)は郡上おどり開催中なので、宿泊して楽しむのもいいだろう。
郡上八幡駅も昭和4年開業当時のままの木造駅舎。まずは郡上八幡城へ向かい、天守から吉田川や、その両岸に広がる城下町を見下ろす。町に下り、古い町並みや環境省「日本名水百選」の第1号に認定された湧水「宗祇水」、道端の水路に澄んだ水が流れるいがわこみちややなか水のこみちを歩く。そこかしこで清らかな水の眺めを目にすることができ、清涼感で満たされる。
高山本線で戻れば、岐阜市は10月15日まで国指定重要無形民俗文化財「ぎふ長良川鵜飼」のただなか。昨晩から濃厚に旅を楽しんできており、さらに鵜飼観覧はハードすぎるだろうか。ならば、「泉屋物産店」の高島屋岐阜店などで岐阜名物のアユの加工品をつまみに買い、名古屋から新幹線に乗って帰ろう。ハード上等という向きは、「川原町泉屋」などで鮎弁当を調達し、鵜飼を観覧。名古屋から新幹線か、鵜飼後しばらく時間をつぶし、岐阜駅から再び「ムーンライトながら」に乗って帰路につこう。鵜飼は増水のため中止される日もある。事前確認と予約を忘れずに。
長良川に沿って走る長良川鉄道は車窓からの清流の眺めが楽しみ。湯の同温泉口~郡上八幡の川景色が特に見事で、「ゆら~り眺めて清流列車」は川が眼下に迫る福野~美並苅安、相生~郡上八幡などで走行速度が落とされ、川の眺めを心ゆくまで満喫できる。
快速「ムーンライトながら」は、下り7月24日~8月22日、上り7月25日~8月23日運転。全車指定席で、乗車券のほかに指定席券520円が必要。人気が高いため、乗車日の1カ月前10時に席を確保したい。
周辺で産出される石灰石・大理石輸送のため、大正8年(1919)に開業した東海道本線の支線。美濃赤坂駅は、現在も金生(きんしょう)山から産出する石灰石を輸送する西濃鉄道に接続し、勇壮な貨物列車の姿も。
天守から城下町や奥美濃の山並みが一望できる郡上八幡城。子どもたちが橋の上から飛び込むことで知られる吉田川は、天守の上からでも川底の石が見えそうなほど、澄んで見える。
郡上八幡は、町中に張り巡らされた水路に清らかな水が流れる名水の街。「やなか水のこみち」は柳が風に揺れ、玉石を敷いた道と水路の光景がベストマッチ。周辺にはこだわりの小さな博物館も多い。
鵜飼の町・岐阜の「泉屋物産店」で佃煮(写真)や紅梅煮、昆布巻きなど、アユのみやげ品を購入。「鮎ピザ」や「鮎のリエット」「白熟クリーム」といったワインに合う洒落た品も販売している。
日豊本線では小倉~鹿児島を結ぶが、大分と宮崎の県境にあたる山間部を走る佐伯~延岡間は普通列車の本数が少ない。大分県には多くの木造駅舎が点在。暘谷(ようこく)駅付近では別府湾の眺望も楽しみ。
こぢんまりと美しい下ノ江駅。大正4年(1915)開業当時築のままと思われるが、駅舎内の内壁は塗り直されたようで清潔感がある。駅前には鉄道の安全を祈願するための稲荷神社がある。
大正6年(1917)開業当時の駅舎そのままの上臼杵駅。駅舎入口の両側にそびえるカイヅカイブキが印象的。映画『なごり雪』では「臼杵駅」として描かれた。今春から無人駅になった。
昭和13年築の建物が重厚感漂う竹瓦温泉へは、別府駅から徒歩10分。レトロな建物内での入浴は感慨深く、砂湯を体験できるのもうれしい。砂かけさんが足元から砂をかけてくれ、15分ほど温まると、体がぽかぽかに。
瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかり合う豊後水道で一本釣りされる関アジ・関サバは、うま味、歯ごたえが別格。県内料理店で通年食べられるが、関アジは3~10月が旬。焼酎や日本酒の肴にしたい。
日豊本線の、特に大分県内には趣深い木造駅舎が残る。そこで、木造駅舎をめぐる旅を楽しむため、小倉から日豊本線に乗車し、まずは「東中津駅」で下車。大正4年(1915)改築の大きな駅で風格漂う。数十年タイムスリップしたような感覚に襲われながら、改札を出る。ICカード「SUGOKA」も利用できるのが、なんとも不思議だ。駅舎入口の木枠のガラス戸、立派な二重屋根など、木造駅舎の趣を存分に堪能したら、線路沿いを隣の駅へ歩き出す。実は隣の「今津駅」も木造駅舎。列車を降り、ホームから改札を抜けて木造駅舎を目にするのもいいが、町を歩いてきて、最初に正面から木造駅舎に出合うのも、また楽しい。歩かずに、東中津駅で次の列車を待ち、1本ずつ遅い列車を利用しても、大分駅での滞在時間を短くすれば挽回できる。ただ、東中津駅での待ち時間が長いので、ウォーキング嫌いでなければ、地図をしっかり用意して歩くのもオススメだ。
再び、木造駅舎「西大分駅」を楽しむ。ひと駅乗った大分駅は、逆にピカピカの新駅。新駅ビル「JRおおいたシティ」が今春開業したばかりで、様々な商業施設が一体となり、現代的な魅力が満載。タワー19~21階の天然温泉施設「シティスパてんくう」の屋上露天風呂は、テレビCMでもお馴染みのシンガポールのホテル「マリーナベイ・サンズ」の天空プールを彷彿とさせる。極上の入浴体験や大分名物「とり天」などのランチ、「シティ屋上ひろば」に鎮座する鉄道神社を参拝するなど、最新の駅でしばし憩う。
木造駅舎めぐりを再開し、「下ノ江(したのえ)駅」そして、ひと駅おいた「上臼杵(かみうすき)駅」へ。ともに無人の木造駅舎。上臼杵駅は大林宣彦監督の映画『なごり雪』のロケ地となったため、鉄道ファンだけでなく、映画ファンも訪れる。
木造駅舎めぐりで大満足だが、今晩宿泊する別府でも美酒や美食など、もうひと遊び。第2・4金曜ならば、流しの「はっちゃん・ぶんちゃん」の案内で歩くガイドツアー「竹瓦・夜の路地裏散歩」に参加するのもおもしろい。
翌日は、竹瓦温泉の砂湯や入浴、地獄めぐりなどを存分に楽しみ、別府冷麺などの名物を昼食にとり、別府駅から日豊本線下りに乗車。隣の東別府駅は東中津駅と似た造りだが、さらに歴史が古く、明治44年(1911)開業当時そのままの建物。別府市指定の有形文化財として、開業当時を再現するような形で改修されているため、全体から照明などの細部に至るまで見応え十分。
帰帰路の上り列車の途中、福岡県内に入ったところで、最後の木造駅舎「豊前松江(ぶぜんしょうえ)駅」に下車。駅舎内には鉄道唱歌の歌詞が掲げられ、舎内の角に設けられたきっぷ売り場の窓口は木枠とガラス戸、やはり、どこもかしこもカッコいい。小倉へと向かう列車内で、数々の木造駅舎をめぐった充足感に包まれる。
季節の花に彩られた「西大分駅」。隣の東別府駅は市の有形文化財として改修されているが、西大分駅は、明治44年(1911)年に開業した当時のまま。大がかりな改修がなされていないぶん、まさに年月を経た深い味わいが感じられる。JR貨物の駅でもあり、コンテナや貨物列車の眺めもいい。