『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
肥薩(ひさつ)線
鎌瀬駅~瀬戸石駅間
「SL人吉」の代表的な撮影地である「球磨川第一橋梁」は、八代側の高台から狙うのが定番カット。だが、雲の表情や川を入れ込むことで夏らしい一枚を撮影することも可能だ。川辺を歩く際は足元に気をつけよう。
鉄道ファンのみならず、誰もが思わず乗りたくなってしまう列車がたくさん走っている九州。平成28年熊本地震では甚大な被害が出た地域もあり、一刻も早い復興を祈念するばかりである。ただその一方で観光客の足が遠のいてしまい、少し困惑している地区があるのも事実だ。そこでここはひとつ、九州に行って観光しながら応援!というのはいかがだろうか。
今回紹介する撮影地は、熊本・鹿児島エリア中心だが、実はどの地も南九州を代表する観光地や温泉地に近い。レンタカーで行く撮影ツアーにはなんとも最適なポイントばかりだ。とくに肥薩線沿線は、球磨川沿いの美しい風景を走る「SL人吉」を撮影したのち、九州新幹線も狙え、効率よく撮影できるエリアだ。さらにこの沿線を通る九州自動車道に乗って少し南下すれば、築100年を超える歴史のある嘉例川(かれいがわ)駅へのアクセスもらくらくだ。肥薩線にはJR九州から新たな観光列車のデビューも発表され、今後ますます魅力的な路線になってゆくだろう。
ちなみに九州を走る観光列車では、車内の乗客が沿線に手を振っている光景がよく見られる。また、沿線に集まる人たちも列車へ手を振っていることも多い。列車を撮影したら、ぜひ恥ずかしがらずに乗客へ大きく手を振ってみよう。きっと笑顔とともに手を振り返してくれるはずだ。このような鉄道旅ならでは素敵な光景との出合いはきっと、あなたの旅をかけがえのないものにしてくれるだろう。
肥薩線
嘉例川駅
築100年を超える木造駅舎の嘉例川駅。例年、七夕の時期になるとみごとな七夕飾りが見られる。短冊も置いてあるので、願いごとをこの歴史ある駅に託してみるのはいかがだろうか。ちなみに車で10分も走れば、国道223号沿いに妙見(みょうけん)温泉など名湯が点在しているのも見逃せない。
九州新幹線
新八代駅~新水俣駅間
高架線と高い防音壁が続く新幹線沿いは、普通に撮影するのもひと苦労だが、この撮影地はのびのびと撮影できる。球磨川を渡る熊本らしい一枚を狙おう。トンネルをまたぐように斜面をやや登る必要があるが、すぐにたどり着ける範囲だ。
鉄道写真の撮影では長時間屋外にいることも多いため、当然、熱中病対策を考えておきたい。こまめな水分や塩分補給、帽子を被るなどして工夫しよう。また、虫刺されにも気をつけたい。虫除けスプレーや携帯用の蚊取り線香なども有効だ。できれば虫刺され薬を携行しておこう。状況によっては草むらを分け入ることもあるかもしれないので、こういうときは夏でも長袖がおすすめ。草木で不用意にケガすることを防いでくれる。
伯備線
井倉駅~方谷駅間
東京から夜を徹して走ってきた寝台特急「サンライズ出雲」を狙う。車体に日光が当たらなくても、かえってそれが早朝の雰囲気を強調してくれる。ただし、構図に空を入れないよう気をつけよう。空が入るとその部分だけ白く飛んでしまい、構図に隙が出る。
全国各地を夜毎走ってきた寝台特急も現在、定期列車として運転されているのは「サンライズエクスプレス」のみとなってしまった。日の出の早い夏季は夜行列車の撮影に適しているが、対象となる列車がほとんどなくなってしまったのはとても残念だ。今回のコースはこの「サンライズエクスプレス」を基本に、山陽・尾道の情景と中国山脈に走るローカル線をめぐるツアーをご紹介しよう。
今回紹介する撮影地のうち、撮影ポイント2は海が入り、遠景を狙う構図だ。そのため晴天かつある程度視界がクリアであることが必須条件。一方で他の撮影ポイントは山の風景なので、晴天はもちろん、悪天候で霧が発生したり雨が降ったりしても、それらがより旅情的な情景を作り出してくれる。鉄道写真は気象条件により作品の仕上がりが大きく左右される。天気予報をしっかりと確認し、臨機応変に撮影地を選択できるように心がけよう。今回の3カ所の撮影地のように、予備として、悪天候時の撮影地を計画に組み込んでおくと効率的に楽しめるはずだ。
また、海が入る構図の場合、PLフィルターを用いると海の青さを強調できることがある。海だけでなく川などにも有効なので、水辺の撮影が多くなる夏にはぜひおすすめしたいアクセサリーだ。そして俯瞰撮影など、列車が小さく雄大な風景を切り取る際は、風景を優先しすぎて列車がどこにいるのかがわからなくならないように気をつけよう。
山陽本線
尾道駅~東尾道駅間
尾道の高台に位置する千光寺公園から撮影。車でも登れるが、麓から出ている千光寺山ロープウェイに乗るのも楽しい。ちなみに撮影ポイントとしては、このロープウェイの山頂側の乗り場付近がおすすめ。晴天時に訪れよう。
芸備線
備後落合(びんごおちあい)駅~比婆山(ひばやま)駅間
雨降る渓谷を行く芸備線の一枚。悪天候時には山間を行く路線を狙うと、湿度なども表現できて印象的な作品になる。運転本数が少ないので、JR時刻表などできちんと確認しよう。最寄りの備後落合駅からは木次線も発着する。
最近のデジタル一眼レフカメラは、高感度に設定しても画質が非常に高い。薄暗い状況下でも高速のシャッタースピードを選択でき、今までは撮影できなかった場面も撮ることができるようになった。フィルム時代から写真に親しんでいると、つい高感度=低画質のイメージが強く、感度を上げることを躊躇しがちだが、写し止めたい列車がブレてしまっては元も子もない。条件に合わせて高感度を選び、より魅力的な一枚を狙おう。