JR境線は鳥取県第2の都市・米子と日本有数の漁獲水揚量を誇る境港を結ぶ17.9kmのローカル線だ。美保湾と中海に挟まれた幅約4kmの砂洲のほぼ中央を線路が延びている。沿線は平坦で車窓の変化は乏しいけれど、この路線には老若男女の心を鷲づかみにしてしまう魅力がある。漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する鬼太郎ファミリーをペインティングしたディーゼルカー「妖怪列車」が単行で運転されているのだ。
山陰本線や伯備線など鉄道の拠点となる米子駅。その0番線が境線の乗り場だ。“霊番線”に「妖怪列車」が発着するというストーリで、妖怪の町への冒険がすでに駅から始まっている。
休日ともなると、列車も駅も子供からお年寄りまでいっぱい。目をキョロキョロさせながら、みんな妖怪たちを探している。おなじみのキヨスクまで鬼太郎仕様になっていて、鬼太郎グッズから山陰の特産品まで販売中だ。境線は、“昭和の妖怪”が集う妖怪テーマパークへ誘うタイムマシンのようでもある。
妖怪たちが描かれた昭和の名車・キハ40系のラッピングトレインは子供たちに大受けだ。車内では、天井から壁までいっぱいに描かれた鬼太郎ファミリーが乗客を迎えてくれる。さらに、沿線の各駅には全国に語り継がれる妖怪の名前が愛称としてつけられている。米子駅は「ねずみ男駅」、大篠津町駅は「砂かけばばあ駅」、境港駅は「鬼太郎駅」といった具合。だから、妖怪道中は退屈することがない。
境港駅は頭端(行き止まり)式の旅情漂う終着駅で、灯台のシンボルタワーが建ち、駅前には鬼太郎ファミリーと作者・水木しげるさんのブロンズ像がある。また、至る所に妖怪たちのブロンズ像が立っていて、駅前通りの「水木しげるロード」はさながら妖怪の棲み家のようだ。
全国の商店街や駅前通りがシャッター通りに変わっている中で、境港の商店街は鬼太郎効果もあり、「ゲゲゲ」と驚くほど元気に活性化している。
境港でぜひ立ち寄りたいのが「水木しげる記念館」。水木少年を妖怪の世界に誘った「のんのんばあ」が、水木少年に妖怪の話をする光景が表現されていて興味深い。
水木しげるロードには、昭和レトロな商店が今なお息づいている。妖怪たちが居座るその街は、鬼太郎世代(昭和世代)に不思議と居心地の良さを感じさせてくれた。“昭和の妖怪”たちも、さぞかし暮らしやすいに違いない。
- アクセス
- 境港へは、岡山駅から伯備線特急で約2時間10分の米子駅で境線に乗換えて約50分の境港駅下車
- 主な昭和スポット
- 水木しげる記念館⇒境港駅から徒歩約10分
- 観光の問合せ
- 境港市観光協会 TEL.0859-47-0121
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終着駅ムードの境港駅。1面2線の頭端式ホームには山陰本線からの直通列車も到着する
境線を走る妖怪列車は「鬼太郎列車」「ねずみ男列車」「ねこ娘列車」「目玉おやじ列車」の4パターン
今では珍しい扇風機付きの懐かしい車内。天井にまで描かれた鬼太郎ファミリーが妖怪ワールドに誘う
境港駅舎は港町らしく灯台をイメージ。駅前には30~40代の頃の水木氏をモチーフにしたブロンズ像も
駅から延びる「水木しげるロード」沿いには昭和の面影を残す商店が健在。沿道には約130体ものブロンズ像が立つ