徳島駅から乗った列車はJR四国ご自慢のエコ車両1500系気動車。佐古駅から高徳線と分岐して徳島線はほぼ「四国三郎」の異名を持つ吉野川に沿って走る。途中の蔵本駅前に鮎喰(あくい)川の伏流水が湧く「蔵清水」が、西麻植(にしおえ)駅の近くには名水百選「江川の湧水」があり、名水の旅を続ける私をはじめ、名水ファンには魅力ある途中下車の旅が楽しめる路線でもある。
西麻植から2つ先の「学(がく)駅」は、その名前から受験生に縁起の良い駅として知られる。駅舎は古風な櫓が建つ「寺子屋」風で、こちらも受験生でなくとも途中下車の価値はある。
吉野川のほとり、穴吹駅で下車してみる。改札口を出て振り返ると駅舎は和のたたずまいで、うだつの町並み「脇町」への期待が一気に高まる。
町並みから少し歩き、大谷川沿いの柳並木あたりに、レトロな映画館「脇町劇場」が現存している。昭和9年に建てられた回り舞台付きの芝居小屋兼映画館で、戦後は歌謡ショーや大衆芝居が公演され、昭和30年代の映画全盛時には地域の娯楽の殿堂として賑わった。
平成7年に閉館され、取り壊される運命にあったが、映画『虹をつかむ男』(平成8年、西田敏行主演、山田洋次監督)では「オデオン座」としてロケの舞台となり、一躍有名になって、現在は観光名所として公開されている。
穴吹駅から再び徳島線に乗り、2つ目の貞光駅で途中下車する。ホームは、昭和の面影を残すレトロな雰囲気で懐かしい。貞光は一宇(いちう)街道と旧国道が交わる交通の要衝として栄え、街道に沿って今も二層うだつの古い建物が多く残り、そこには住民の生活ぶりが感じられる町並みがある。
この町にもレトロ映画館がある。それも現役の映画館だ。「貞光劇場」は、昭和7年に開業以来、建物の外観も内装もほぼ当時のままで、今も上映を続けている全国屈指のレトロ映画館だ。映画館の玄関先には共同井戸の懐かしい手押しポンプがあり、今も打ち水などに使われている。
- アクセス
- 徳島線の起点・徳島駅へは、岡山駅から特急「うずしお」で約2時間10分。穴吹へは徳島駅から約1時間の穴吹駅下車、貞光へは徳島駅から約1時間15分の貞光駅下車
- 主な観光スポット
- 脇町劇場(オデオン座)⇒穴吹駅からバス10分
- 美馬市観光文化資料館⇒穴吹駅からバス10分
- 貞光劇場⇒貞光駅から徒歩5分
- 二層うだつの町並み⇒貞光駅から徒歩10分
- 旧長井家庄屋屋敷⇒貞光駅から徒歩10分
- 観光の問合せ
- 美馬市商工観光課 TEL.0883-52-2644
- つるぎ町商工観光課 TEL.0883-62-3114
- 1月18日
- 東大闘争。安田講堂占拠の学生と攻防戦
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- タブロイド紙『夕刊フジ』創刊
- 5月10日
- 国鉄にグリーン車・普通車が登場(等級制の廃止)
- 5月26日
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- 日米共同声明で沖縄返還を表明
- 12月1日
- 日本初の現金自動支払機設置
四国の大河「四国三郎」こと吉野川を車窓に見て走る1500系エコ気動車 (徳島線阿波加茂~辻駅間)
貞光のうだつは、前面に寿福を祈念する絵模様が装飾されている二層式が特徴
穴吹駅は脇町への玄関口。和風駅舎には「うだつ」のイメージがシンボライズされ、旅情を感ずる駅だ
脇町劇場は内部も公開されている。回り舞台と芝居絵が華やかな時代を思わせる
受験生に人気のある「学駅」は櫓のある昔の校舎風の駅舎。縁起にあやかろうと駅名標との記念写真が人気
脇町の街道に沿った一角は伝統的建造物群保存地区として守られ、懐かしい町歩きが楽しめる