函館本線は、不思議な路線である。幹線ながら、小樽~長万部駅間を結ぶ列車は、1日10本程度しかなく、海あり山ありの車窓風景はもはやローカル線。だからこそ、旅程をきちんと組めば旅情溢れる列車旅を楽しめるのだ。
札幌を出て、銭函近辺に差しかかると石狩湾が目に飛び込んでくる。雄大な海景を楽しんだら、小樽で乗り継ぎ時間を利用し、駅弁「北海手綱」と「石原裕次郎23回忌 記念入場券」を購入した。石原裕次郎が3歳から9歳までを過ごした小樽は彼の第二の故郷でもあり、ホームには等身大のパネルも立つ。
余市あたりから、車窓の主役は山に変わり、小樽~長万部駅間が通称“山線”と呼ばれているのを実感する。ニセコ駅で下車したら、バスで昆布温泉へ行き「鯉川温泉旅館」で外来入浴。明治32年(1899)開湯の同館は昆布温泉最古参だ。緑がかった白濁湯は、やや温めで長湯にぴったり。創傷や神経痛などに効能があるという。温泉好きなら、列車の待ち時間に「ニセコ駅前温泉 綺羅乃湯」でもう一風呂なんてのも乙だ。
ニセコ駅からは、開港150周年で活気付く函館へ。夜は、夏旬の真イカで一杯もいいし、夜景を眺めるもいい。一泊後は、地元ガイドと一緒に「開港150周年記念散策コース」を散策! 旧函館区公会堂などをめぐり、函館の歴史をお勉強する。小腹が空いたら、“日本最古のラーメン”と言われ、開港150周年を記念して復活した「南京そば」をズズーッとやろう。
函館本線の復路の楽しみは長万部温泉。「丸金旅館」の湯はナトリウム-塩化物泉。浴後に肌をコーティングしてくれる美肌の湯だ。湯冷めしにくく、帰りの車中もポカポカ。心地よい電車の揺れに、まどろみの中、旅の充実感を味わっていた。