『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
「青春18きっぷ」誕生の頃から活躍する415系電車に乗って下関へ。門司付近では電源方式が直流(本州側)から交流(九州側)に変わるが、415系は双方に対応したオールマイティな交直両用近郊形電車だ。
下関といえば「フク」。なかでも高級なトラフグを本場で味わってみたい。たくさんの人で賑わう唐戸市場、ここで食べたトラフグの握りは、きれいな身もさることながら、シコシコとして美味だった。
源平の合戦、壇ノ浦の戦いで幼くして亡くなった安徳天皇を祀る赤間神宮。関門海峡を間近に建ち、平家一門の塚もある。そして、芳一堂では「耳なし芳一」が祀られている。
関門海峡をまたぐ春の関門橋。この海が壇ノ浦だ。源平の合戦ははるか昔、今では、青い空、春の海が広がる。潮流は最大で時速18km(10ノット)にもなり、いささかこじつけだが、青、春、18となる。
門司駅ホームの「かしわうどん」(立ち食い)。ブルートレインの時代も今もおいしさは変わらない。いかにも北部九州らしい鶏肉(かしわ)入りのうどんは、まさに「食べる鉄道遺産」の一つだろう。
博多駅からの「30駅さんぽの小旅行」。『JR時刻表』の「さくいん地図」で駅を数えると、ちょうど下関が30駅目になっていた。
下関といえば、関門海峡、壇ノ浦。平清盛をはじめとする平家興亡を描く『平家物語』の舞台にもなり、また、“フク”(下関では魚のフグをフクという)の本場でもある。あの繊細な味もぜひ堪能したい。
下関へ向かう時、普通、小倉ないし門司で電車を乗り継ぐが、ここは門司で乗り継ぎを。
駅周辺の再開発が進む門司。「青春18きっぷ」が誕生した昭和57年当時は、ブルートレイン(寝台特急列車)もまだ全盛期。「あさかぜ」「さくら」等、朝、続々とやってくるブルートレインは門司駅に停車し、九州用の機関車に付け替える。この作業もあって、門司は鉄道の要衝として活気にあふれていた。
『平家物語』に流れる盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)。時代の変化から本州と九州を結ぶブルートレインは姿を消し、かつてあれほど賑わった門司駅ホームも夢のあとのよう。しかし、今にもブルートレインが走ってきそうな余韻をたたえており、この余韻を感じてほしい。門司駅の長いホームに立つと、『平家物語』の言葉が頭をかすめていく。
「青春18きっぷ」誕生の頃から活躍し、そして、門司駅の変遷も見つめてきた415系電車。関門トンネルの“主”といえる電車に乗って下関着。
腹ごしらえに関門海峡のほとり・唐戸市場(路線バスで約10分、運賃190円)へ行き、“フク”を味わってみよう。市場には福を招くという「福招金」(フクマネキン)も設置。“フク”と福。いいことがありそうな気分に。
食後は関門海峡ウォーキング。清く盛んに歩こう。まず立ち寄る赤間神宮には、平家が滅亡した壇ノ浦の戦いで亡くなった安徳天皇(平清盛の孫にあたる)が祀られている。
赤間神宮を後にさらに関門橋方面へ歩くと、源平合戦の舞台、壇ノ浦にさしかかる。ここがかつて戦いの舞台になったとは想像できないほど風景は穏やかだ。
歴史散策の帰り、やはり門司で乗り継ぎを。平成7年春の「青春18きっぷ」パンフレットでは、とある駅のホームで若者たちが立ち食いうどんをすすっていたが、門司駅ホームの立ち食いうどんもブルートレイン時代から続く伝統の味。
ここは北部九州らしく、鶏肉入りの「かしわうどん」を食べて旅を締めくくろう。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
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1日目 | 博多発 | 8:41 | 鹿児島本線の普通電車29駅。門司へ(土休日は8:33発) |
門司着 | 10:25 | 乗り換え。下関は次の駅(土休日は10:22着) | |
門司発 | 10:34 | 合計30駅めとなる下関へ | |
下関着 | 10:41 | 関門海峡の唐戸市場や赤間神宮、壇ノ浦など歴史散歩 | |
下関発 | 16:20 | 普通電車1駅。門司へ | |
門司着 | 16:27 | 鹿児島本線に乗り換え。門司駅の「かしわうどん」は伝統の味! | |
門司発 | 16:41 | 普通電車で29駅。博多へ | |
博多着 | 18:45 | 往復とも「30駅さんぽ」達成! |
昭和57年の社会を振り返ってみれば、500円硬貨が発行(4月1日)され、音楽CDが登場。「ネクラ」という言葉が流行語となり、本では『窓ぎわのトットちゃん』や『積木くずし』がベストセラーになった。流行歌は『渚のバルコニー』などなど、ちなみにレコード大賞は『北酒場』だった。
移動式の売店もあった上越新幹線暫定開業直前の上野駅、特急「とき」が発着するホーム。(昭和57年撮影)
写真家、パズル作家。「青春18きっぷ」歴はちょうど18年、日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。●ホームページ http://www.aizawa22.com
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成24年2月7日現在のものです。