『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
広島駅の115系電車。115系電車は昭和57年の「青春18きっぷ」誕生前から現在まで活躍を続けている。広島地区には同じ昭和57年に2ドア&転換クロスシートの115系3000番台(右側の編成)が投入されている。
春夏秋冬それぞれに美しい姿を見せる岩国の錦帯橋。錦帯橋がかかる錦川では、夏、天然のアユが名物になっている。川面を渡る涼やかな風に吹かれて、五連の端正なアーチ橋を眺めるのも風情満点だ。
元は合戦に備えた保存食という「岩国寿司」。大きな木枠に酢飯と具材を積み整えて作る。見た目も華やかな伝統の押し寿司はテイクアウトも可能。写真は事前に予約をし、テイクアウトした「岩国寿司」。
こちらは同じく岩国の郷土料理「大平」。名産のレンコンをはじめ、たっぷりの野菜と鶏肉を煮込み、大きく平たいお椀(大平椀)に盛りつけた和の料理。これが優しい味わいで本当においしい。
徳山港と大津島を結ぶ定期船。大津島は人間魚雷「回天の島」として知られ、徳山の沖、10kmほどのところに浮かぶ。JR徳山駅(南口)下車すぐの徳山港を発着する定期船は便数も多く、とても行きやすい。
「回天」の発射訓練基地跡。ここで「回天」を海面に揚げ降ろし、訓練が行なわれた。大津島の海が穏やかなほど訓練施設のコントラストが際立つ。平和への感謝の気持ちを胸に抱きたい。
日本地図を広げると、たくさんの島が描かれた瀬戸内海に目が留まる。大小3,000もの島があるという瀬戸内海、その多島美はいかにも日本的だ。されど、灯台下暗し。瀬戸内にお住まいの方とて、小さな島々まで訪ねる機会はそうそうあるものでもないという。
「青春18きっぷ」は日帰りの場合、片道1,150円以上の乗車で元が取れ、ほどよい距離の旅にももってこい。味めぐり&島めぐりのこのコース、「青春18きっぷ」なら広島発着で1,080円、岡山発着で6,750円もおトクになります。広島や岡山から、おいでませの山口へ、日帰り旅行に出かけませんか?
まずは錦帯橋(きんたいきょう)で知られる岩国へ。端正で風格ある五連の木造アーチ橋は「日本一美しい橋」と言われるほど。錦帯橋が架かる錦川は、夏ともなれば天然のアユが釣れ、川面を渡る風も涼やか。錦帯橋周辺ではアユもさることながら、やはり名物の「岩国寿司」や「大平」(おおひら)を味わっておきたい。
「岩国寿司」は酢飯と具材を何層にも押し重ねて作る目にも鮮やかな押し寿司で、元は合戦に備えた保存食。「大平」は岩国名産のレンコンをはじめ、野菜や鶏肉を煮込んだ風味豊かなお椀。いずれも伝統の郷土料理だけに、錦帯橋の「和」のたたずまいともよくマッチしている。
午後は一転、島へ。「回天の島」として知られる徳山沖の大津島を訪ねたい。「回天」とは太平洋戦争末期、劣勢な戦局を打開、逆転させるべく誕生した人間魚雷で、大津島に発射訓練基地があった。基地跡は今も残され、間近に立つことができる。
今、どこまでも穏やかな大津島の海。かつてここで特攻兵器の訓練が行なわれ、出撃していったとはにわかに信じがたいほど。しかし、耳を澄ませば隊員の声なき声が聞こえてくるようだ。
原爆投下、終戦の日と、夏は日頃忘れかけている平和について思いをめぐらす季節でもある。国は8月15日を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」としたが、この閣議決定がなされたのは、くしくも「青春18きっぷ」発売開始と同じ年、昭和57年(1982)のことだった。
戦時中は自由勝手な旅行などとてもできなかっただろう。「青春18きっぷ」で自由に旅行できるのも、平和な国の礎(いしずえ)となった幾多の人々あってこそ。時折、猫が姿を見せ、のんびりとくつろぐ大津島。平和な時間がいつまでも続くよう願いながら帰路につこう。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
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1 日 目 |
岡山発 | 6:17 | 山陽本線、広島経由、岩国行き普通列車 |
広島発 | 9:08 | (同上) | |
岩国着 | 10:00 | バスに乗り換え | |
岩国発 | 10:10 | バス(運賃240円) | |
錦帯橋着 | 10:28 | 錦帯橋周辺を散策&ランチ | |
錦帯橋発 | 12:18 | バス(運賃240円) | |
岩国着 | 12:35 | JR線に乗り換え | |
岩国発 | 12:55 | 岩徳線、徳山行き普通列車 | |
徳山着 | 14:20 | 新幹線口(南口)下車すぐ(徒歩約2分)の港へ | |
徳山港発 | 14:40 | 定期船(運賃690円) | |
大津島 (馬島港)着 |
15:14 | 大津島を散策 ※船舶によっては15:17着 |
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大津島 (馬島港)発 |
16:40 | 定期船(運賃690円) ※海水浴ダイヤ時は16:50発で徳山港17:27着 |
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徳山港着 | 17:14 | JR線に乗り換え ※船舶によっては17:17着 |
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徳山発 | 17:34 | 山陽本線、岩国行き普通列車 | |
岩国着 | 18:43 | 乗り換え | |
岩国発 | 18:50 | 山陽本線・呉線、広行き普通列車 | |
広島着 | 19:44 | 広島発の方は、旅の終わり | |
広島発 | 20:23 | 山陽本線、糸崎行き普通列車 | |
糸崎着 | 21:37 | 乗り換え | |
糸崎発 | 21:39 | 山陽本線・赤穂線、備前片上行き普通列車 | |
岡山着 | 23:05 | 岡山発の方も、旅の終わり |
「青春18のびのびきっぷ」の名で誕生した「青春18きっぷ」。当時は普通列車がない北海道の石勝線(楓~新得間)は乗車できなかった。現在はグリーン車自由席なら別途グリーン券の購入で乗車でき、普通列車がないなど一部区間は特例で特急の普通車自由席にも乗車できるよう便利になった。
発売開始30年の「青春18きっぷ」。30年の間に、1日券5枚から、5回(人)分を1枚の券片に“集約”したタイプに変わった。写真はJR線のない沖縄県那覇市、JR九州沖縄支店で購入の「青春18きっぷ」。
写真家、パズル作家。「青春18きっぷ」歴はちょうど18年、日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。
著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。
ホームページ http://www.aizawa22.com
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成24年7月5日現在のものです。