全室A寝台、フランス料理のディナー、展望室があるラウンジカー……、
いままでの寝台列車の常識を打ち破ったスペックとサービスを誇り、
上野~札幌間で夢を運ぶ、日本一デラックスな寝台特急が「カシオペア」です。
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E26系と呼ばれる専用客車が使われる「カシオペア」。いままでの寝台特急とはイメージを一新した最新鋭の豪華車両だ
ラウンジカーは12号車。ハイデッカーの室内からはワイドな車窓が楽しめる。なんといっても前面展望が楽しめる編成端の車両であるところがすごい!
専用に新設計された寝台客車を連ね、上野~札幌間の約1200kmを走破するのが寝台列車「カシオペア」です。そのほかの寝台列車と決定的に違うのが、すべての客室が2人用(3人利用可の客室もある)のA個室寝台というところ。昼行の特急列車に置き換えていえば、全車両がグリーン車の列車ということになるわけです。
そのA寝台ですが、ツインベッドにシャワーやトイレもある「カシオペアスイート」、リビング兼用のベッドルームに洗面台やトイレを完備した「カシオペアツイン」、天井が高いツインルームにシャワーとトイレがある「カシオペアデラックス」など、予算と好みに応じた多彩なルームプランが用意されています。
さて、この寝台列車「カシオペア」の運転日ですが、これは前回ご紹介した「トワイライトエクスプレス」と同じように毎日の運転ではありません。寝台列車「カシオペア」も列車番号が下り「8009」、上り「8010」と8000番台を名乗る臨時列車の仲間です。全国版の大型時刻表『JR時刻表』などのほかは、臨時列車のページに掲載されていますのでご注意ください。
2013年3月現在の運行ダイヤは、札幌行きが上野16時20分発・札幌9時32分着で、上野発、火・金・日曜、上野行きが札幌16時12分発・上野9時25分着で、札幌発、月・水・土曜の運転(ゴールデンウィークや夏休み期間などは曜日に関係なく隔日運転)となっています。
銀色に輝く寝台列車「カシオペア」の客車は、この列車専用に設計されたE26系と呼ばれる最も新しい寝台客車です。
「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」が昔ながらのブルートレイン車両を使用しているのに対して、オールA個室寝台
という贅を尽くした列車として、最新の技術とハイクオリティな接客設備が投入されているのはうれしいですね。
※室内の写真は現状と若干異なる場合があります。
1号車の車端(1号車1番)と1~2号車(2~4番)に3室ずつ設けられた2人用のA個室寝台。1号車1番(写真左)は、車両の先頭部分を独占できるスペシャルルームで、流れ去る前面展望風景を心ゆくまで堪能できます。
なお、寝台列車「カシオペア」は機関車が牽引する列車ですので、編成の最後尾としての展望が得られるのは、札幌行きが青森~函館間を除く全区間、上野行きは函館~青森間のみとなります。上野行きではほとんど区間で機関車とにらめっことなりますが、青函トンネルでは最後尾になりますので、世界一の海底トンネルをじっくり眺めたいという人には逆におすすめです。
一方、2~4番の部屋はメゾネットタイプのスイートルーム(写真右)。1階が寝室、2階がリビングとなっていて、まるで高級コンドミニアムのような室内レイアウトが魅力です。2階席からのワイドな車窓も見逃せません。
展望室タイプ、メゾネットタイプともに、シャワールーム、洗面台、トイレ、テレビ、クローゼットなどを完備。ミニバーセット(ウエルカムドリンク)とアメニティグッズ、部屋着なども提供されます。
4~11号車にそれぞれ8室ずつある2人用個室で、寝台列車「カシオペア」では最も部屋数が多いルームプランです。1階と2階(写真左)の2タイプがあり、室内はリビング兼寝室となっています。洗面台、トイレ、テレビ、BGM放送を完備。ウエルカムドリンク(ソフトドリンク)とアメニティグッズの提供もスイートと同様です。部屋番号は1階が11~14番、2階が21~24番となります。
「カシオペアツイン」にはさらに車端室タイプの部屋もあります。このタイプは2階建てではないので、天井が高く広々とした開放感を味わうことができます。部屋番号は4~11号車の1番と2番で、1番の部屋はエキストラベッドがあって3人での利用もできます(写真右。追加料金:9540円/5号車には1番ルームなし、4号車1番はカシオペアコンパート)。室内設備、サービスは2階建て部屋と同様です。
「カシオペアツイン」のバリアフリータイプで、付添の人のための2段ベッド(上段)が用意されている2人用個室です。平屋タイプで車椅子でも利用しやすいように、室内は広い空間が確保されています。洗面台・トイレルーム(写真右)もあり、出入り口はワンタッチで開閉できる自動ドアになっています。
基本的な室内設備は「カシオペアツイン」と同様で、テレビやBGM放送が完備され、下段のベッドをたたむとソファになります。このタイプは1室のみで部屋番号は4号車1番。
2号車の車端に1室だけの2人用個室寝台です(部屋番号は2号車1番)。2階建てではない広い空間にリビング兼ツインベッドが並んだ部屋で、ベッドをたたむと1人掛けソファ2脚と長いソファ1脚となり、ゆったりと過ごすことができます。シャワールームとクローゼット、洗面台・トイレも完備され、カシオペアスイートの雰囲気も味わえるお得なルームプランといえそうです。もちろん、ミニバーセットやアメニティグッズ、部屋着なども提供されます。
また、エキストラベッド(寝台料金:9540円)の設備もあるので、3人での利用もOKです。
12両編成の客車を連ねて東北本線を快走する「カシオペア」。機関車は銀色のカシオペアカラーか、青い北斗星カラーのどちらかが牽引を担当している
北海道内は重連のディーゼル機関が牽引。その力強い雄姿もまた魅力的だ
全室A個室寝台の豪華列車とはいえ、きっぷの購入方法はそのほかの寝台特急列車と同じです。たとえば「○月○日のカシオペア号で上野から札幌まで大人2名、寝台はカシオペアスイート、それも1号車1番!」などと窓口で頼みましょう。発売は全国の駅のみどりの窓口のほか、JRの旅行センターなど旅行会社の窓口となります。
とくに車端の展望を独占できるカシオペアスイートの展望室タイプは、たった1室のみ。1カ月前の発売と同時に売り切れることも多いですので、きっぷの確保には気合いを入れて(!?)臨みたいところです。
運賃+料金の一例(1人分)を示しますと、上野~札幌間でカシオペアスイートが4万6360円、カシオペアツインが3万4220円、カシオペアデラックスが3万8050円となります。
ドーム形天井のシックな室内のダイニングカー。客席は車両の2階部分となり、食事はもちろん、ワイドな車窓も感動的な旅を演出してくれる
ディナータイムで楽しめるフランス料理のコース(7800円/要予約)。こうした本格的な食事が列車内で提供されるのは本当にうれしい!
※写真はディナーの一例で現在のものとは異なります。
ディナータイムではカシオペア懐石御膳も提供される(5500円/要予約)
※写真は現在のものとは異なります。
さて、豪華寝台特急の旅といえば、その車内での楽しみを抜きには語れません。お待ちかねのディナーの前に、まずはラウンジカーへ行ってみましょうか。「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」のラウンジが編成の中ほどの車両であるのに対して、「カシオペア」のラウンジは編成端の12号車にあります。つまり、下り列車では力走する機関車を、上り列車では流れ去る展望風景(青森~函館間は逆編成)を、快適なソファに身を任せながら堪能できるのです。さらに室内はハイデッカー(高床)構造になっていて見晴らしも抜群。飲み物とおつまみの自動販売機もあります。
フランス料理のコースメニュー(7800円)または懐石御膳(5500円)が楽しめるディナータイムは、3号車のダイニングカーで17時15分、18時30分、20時10分からの3回。17時15分からの1回目は懐石御膳のみの提供となります。ディナーは予約制になっていますので、きっぷの手配と同時に食事予約券を購入しましょう。
現在のメニューは、フランス料理のコースがオードブルに帆立貝柱とサーモンのマリネ、魚料理に牡丹海老と白身魚のワイン蒸し、肉料理に牛フィレ肉のソテー 大地の野菜添え、そしてデザートとパン・コーヒー。懐石御膳が蛸、小鯛、海老のお造り、サーモン味噌漬焼き、烏賊と鮭の麹和え、じゃが芋餅照り焼きなどの口変わり、烏賊ステーキ、帆立醤油焼きなどの組み肴、槍烏賊、蒟蒻、筍、蓮根などの煮物、ずわい蟹蓑揚げ、海老天ぷら、炊き込みご飯、お吸い物などとなります。
また、部屋で食事をしたい人には、和風のお重になったカシオペアスペシャル弁当(3500円/要予約)もあります。
ディナータイム終了後は予約不要のパブタイムの営業となり、豊富なドリンクメニューと各種おつまみが楽しめます。2階に位置するダイニングカーの窓に映る街の灯りを眺めながらのひとときは、きっと素敵な思い出になるはずです。
そして、すがすがしい朝日に迎えられた翌朝には、モーニングタイムの営業も。メニューは和朝食と洋朝食の2種類で、どちらもコーヒーが付きます(各1600円)。朝食は予約不要ですが、数に限りがあります。
最新鋭の車両に快適なホスピタリティ、まさに世界に誇れる豪華寝台列車特急「カシオペア」。そこには料金を超えた別世界が待っています。今宵、あなたの夢の中では、どんな星座が描かれるのでしょうか。
一度は乗りたい、味わいたい、寝台列車「カシオペア」の旅へぜひ!
■「カシオペア」に乗れる便利なきっぷ&旅行商品
文=坂本達也 写真協力=結解 学
※掲載されているデータは平成25年2月現在のものです。