01/23
SANCTUARY
稲佐の浜
出雲大社の神在祭、その最初の神事である「神迎神事」が行われる。『国譲(ゆず)り』神話において、「国を譲れ」という天照大御神(あまてらすおおみかみ)の使者がやってくる浜であり、中世の仏教信仰では「極楽浄土の入り口」とされたこともあった聖なる場。
02/23
推古天皇2年(594)開山。神仏習合の時期は出雲大社の別当寺でもあった。武蔵坊弁慶にまつわる逸話が多く、弁慶が大山寺(だいせんじ・鳥取県)から一夜にして盗んだという釣鐘は国の重要文化財。南北朝時代は、当寺の北院・南院がそれぞれ北朝・南朝を支持し対立。隠岐に流された南朝・後醍醐天皇の宸筆(しんぴつ)の願文も残されている(国重文)。
出雲市別所町
03/23
NATURE/SHRINE
日御碕(ひのみさき)
島根半島の最西端、日本海を一望する岬。鎮座する日御碕神社は、伊勢神宮が「日の本(日本)の昼を守る」のに対し、「日の本の夜を守れ」との神勅(しんちょく)を得、「日沈宮(ひしずみのみや)」として天照大御神を祀ったと伝わる。
日御碕神社
04/23
明治36年(1903)設置、海面から63.30mという日本一の高さから、今も現役で夜の海を照らし続けている。美しい白い外壁の石は、松江市美保関町から切り出してきたもの。内壁はレンガ造りとなっていて、上部展望台に上がることができる(参観料200円)。
05/23
BRIDGE
願い橋
八俣大蛇公園の前、斐伊(ひい)川にかかる80mほどの人道橋。「目を閉じたまま渡り切ると願いが叶う」との説があり、島根県出身の映画監督、錦織(にしこおり)良成(『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010)、『渾身 KON-SHIN』(2013)など)の島根三部作のひとつ『うん、何?』(2008)のロケ地となった。
目を閉じたままで渡るのはさすがに危険なため、現在では「後ろ向きのまま渡り切ると願いが叶う」とされているとか。
八俣大蛇公園ほかヤマタノオロチ伝説地
06/23
奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)とともに、宮を造るにふさわしい場所を探していた素戔嗚尊(すさのおのみこと)がこの地を「我が心を清々し」と気に入り、“八雲立つ 出雲八重垣 妻籠(つまご)みに 八重垣作る その八重垣を”と日本初とされる和歌を詠んだ。そして、「日本初之宮」となる「須賀宮」を造営したと伝える。
社から北東約2kmの八雲山には、夫婦神と御子神を祀る大中小の岩から成る磐座(いわくら・写真)があり、須我神社の奥宮として篤い信仰を集めている。
雲南市大東町
07/23
雲南地域では、昭和40年代から養鶏が盛んで、年間約6,000万個もの卵が生産される。
昼時には「卵かけごはん専門店」が行列するなど、卵人気を背景に、現在「うんなんたまごプロジェクト」が進行中。市内20店舗で工夫を凝らした「うんなんオムライス」が提供されている。
08/23
GOURMET
オロチの爪
唐辛子の一大産地である雲南地域。中でも、実が20cm近くにまで成長する大型品種をヤマタノオロチ伝説にひっかけ「オロチの爪」と命名。同じく地産の山椒、ニンニクなどとともに「うんなんスパイスプロジェクト」をスタート。「オロチの爪」を使った「スパイス鍋」「うんなんオロチの焼きタンタン」など、さまざまなメニューを開発している。
うんなんスパイスプロジェクト
09/23
出雲大社とともに「出雲国三大社」のひとつとされてきた(残る一社は時代により、熊野大社〔松江市〕、または日御碕神社)。
御祭神の佐陀(さだ)大神は、佐陀地方の祖神とも猿田彦大神ともいわれる。伊弉冉尊(いざなみのみこと)の神陵を遷し祀ったと伝わり、旧暦10月には御子神である八百万の神々が母神をしのんで集まる「神在の社」である。
「佐陀神能(写真)」は、出雲神楽の源流とされ、国の重要無形民俗文化財に指定。2011年にはユネスコ無形文化遺産に登録されている。
松江市鹿島町
10/23
美保神社の御祭神、事代主神(ことしろぬしのかみ)は「ゑびす様」とされ、全国3,385社の「ゑびす社」の総本社とされている。出雲大社の御祭神・大国主大神が「だいこく様」とされることから、江戸時代、「出雲だけでは片詣り」といわれるようになった。
毎年4月に行われる「青柴垣(あおふしがき)神事」、12月に行われる「諸手船(もろたぶね)神事」(写真)はともに、『国譲り』神話を伝えるもの。
松江市美保関町
11/23
松江城東側の松江歴史館内にある喫茶処(入場無料)。約100坪の日本庭園と松江城を眺めつつ、「現代の名工」と呼ばれる和菓子職人・伊丹二夫氏が実演する創作上生菓子をいただける。知る人ぞ知る、ぜいたくな空間だ。
12/23
GOURMET
出雲そば
出雲名物といえば、出雲そば。殻つきのソバをひいたそば粉を使用し、黒みがかったやや太めのそばで、三段の漆器に盛られた「割子そば」(写真)が定番のスタイル。
出雲松江藩主・不昧公のそば好きは有名で、『不昧公夜話』という落語まで作られている。
13/23
GOURMET
津田かぶ漬
お茶請けとして和菓子とともに欠かせない漬物。中でも、松江の冬の伝統野菜の漬物として親しまれているのが「津田かぶ漬」だ。名産の勾玉(まがたま:玉造温泉のある玉湯町近辺では古来、多くの勾玉が作られていた)を思わせる形と甘みの強さが特徴。出回るのは、11月~3月頃まで。
14/23
奈良時代に編纂された『出雲国風土記』にもその名を残す玉造温泉。
明治元年(1868)創業の老舗という当旅館の名物は、120坪という日本随一の広さを誇る混浴露天風呂「龍宮の湯」。女性には入浴用の巻物が用意されており、安心して混浴を楽しめる。
そのほか男女別露天風呂、内風呂、客室内風呂にいたるまで源泉かけ流しというのもうれしい。
15/23
料理は、「七珍(しっちん)」と呼ばれる、宍道湖でとれるシジミやシラウオ、ウナギなど7種の食材をはじめ、旬の食材が並ぶ。
11月から来春3月までは、島根の冬の三大味覚のひとつである松葉ガニがたっぷり3杯つくプランがあるうえ、その他のプランでも半身以上はつくという大サービスぶりだ。
この期間、七珍を味わい尽くす「宍道湖七珍会席」、「ふぐ会席」付きのプランも加わり、いっそう充実している。
1泊2食付12,850円~(平日2名1室利用時の1名料金)
16/23
NATURE
国賀(くにが)海岸
隠岐諸島を代表する景観を誇る、西ノ島にある国賀海岸。アーチ状の通天橋や摩天崖など大断崖や奇岩のオンパレード。馬や牛が放牧されている丘をのんびり散策するもよし、景勝地を巡る遊覧船から望むのもよし(定期観光船運航期間外は要問合せ)。どちらも違った表情が楽しめる。
隠岐世界ジオパーク
17/23
日本武尊(やまとたけるのみこと)の父宮としても名高い第十二代・景行(けいこう)天皇が隠岐国に遣わした皇子 ・大酢別命(おおすわけのみこと)の御子である玉若酢命をお祀りする古社。玉若酢命は隠岐の島開拓の神ともされ、神社北西には古墳群も残されている。
境内の樹齢2000年ともいわれる八百杉(やおすぎ)の中には、大蛇が生きたまま閉じ込められているとの伝承がある。幹に耳をあてると大蛇のいびきが聞こえるとか……。
本殿、随神門、社家億岐(おき)家住宅は、国の重要文化財に指定されている。
18/23
ENTERTAINMENT
隠岐の牛突き
承久の乱(1221)で隠岐へ配流(はいる)された後鳥羽上皇を慰めるために始まったとされる。現在は、隠岐の島内の「隠岐モーモードーム」などで観光用に開催されるほか、年3回の大会や、1月の「初顔合わせ」ともいわれる「初場所」なども実施。
隠岐モーモードーム(隠岐の島町観光協会)
19/23
隠岐の島の玄関口、菱浦港を見下ろす丘の上に建つ。全室オーシャンビューの客室では海に抱かれたようなひとときが過ごせる。
1泊2食付15,500円〜(平日2名1室利用時の1名料金)
20/23
隠岐の島内の施設では、唯一の天然温泉。ナトリウム・カルシウムー塩化物泉のサラリとした湯に浸かりながら、窓外に広がる海を眺めれば、心の底からゆったりとできる。
21/23
1984年に発見された神庭荒神谷(かんばこうじんだに)遺跡(出雲市)からは、銅鐸6点、銅剣358点、銅矛16点が出土。銅鐸は近畿地方、銅剣・銅矛は九州地方由来というそれまでの定説を覆す大発見となり、出雲の古代国家が独自の高い文化をもっていたと見直されるきっかけとなった。当館には、そんな出雲の歴史を示す遺物が展示されている。
2000年に発掘された、出雲大社が高さ16丈(約48m)もの巨大神殿だったことを証明する大発見である「宇豆柱(うづばしら)」の現物もある。
写真は「青木遺跡復元模型」。
22/23
東京発、唯一西へ向かう寝台特急列車。
夜22時に東京を出発、出雲市へは翌日10時ごろ到着。「サンライズ瀬戸」と併結しており、岡山駅で分割する。食堂車はないが、住宅メーカーと共同開発した居住性の高い快適な車両で、個室寝台が中心のほか、カーペット敷きで読書灯などを備えた「ノビノビ座席」も人気。
23/23
木次(きすき)線の木次~備後落合間を走るトロッコ列車。
出雲坂根駅から三井野原駅間は三段式スイッチバック、その後に見事な眺めの「奥出雲おろちループ」が続き、秋は紅葉で色づいた山間を走るとあれば感動もひとしお。
※一部列車で出雲市〜備後落合間の運転あり。運転日は事前にご確認ください。
※自動表示のほか、スライド左右にマウスを置くと表示する矢印をクリックすると前後の画像へ移動します。
全国の神々が年に一度の「神議(かみはかり:国中の神々が集い、話し合いをすること)」を行うため、出雲大社に鎮まる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)のもとに集まると言われている神無月、10月。神在月(かみありづき)となる出雲地方では、旧暦の10月にあたる11月に、出雲大社をはじめ数々の神社で厳かな神迎(かみむかえ)神事が行われます。
11月12日午後7時、出雲大社からほど近い稲佐の浜では、全国の神々をお迎えする「神迎神事」が行われます。そして神々がお帰りになられる19日まで、実にさまざまな神事が行われるのです。今年、60年ぶりの御遷宮を終えた真新しいお社で、神々はどんな話し合いをされるのでしょうか?
「それはぜひとも行ってみたい!」というところですが、せっかくなら、出雲大社のみで満足せずに、島根を楽しみ尽くしたいもの。そうです、初代・神武天皇が即位される、ずっとずっと以前から、独自の高い文化を誇る一大勢力が存在していた島根。長く奥深い歴史をもつこの地には『古事記』『日本書紀』に語られる神話が今なお息づき、素晴らしい社寺・景色、おいしい食べ物にあふれているのです。
まずは出雲大社のある出雲市から。紅葉の名所としても名高い鰐淵寺(がくえんじ)はこの時期、外せません。また、出雲市の最西端・日御碕(ひのみさき)は、「日沈宮(ひしずみのみや)」という別名をもつ日御碕神社が鎮座するとおり、見事な夕景が拝める場所。その岬に立つ出雲日御碕灯台は110年の歴史と日本一の高さを誇り、「世界の歴史的灯台百選」にも選ばれています。
出雲市のお隣、雲南市は「ヤマタノオロチ」伝説の舞台となった地。伝説の冒頭、高天原(たかまのはら)を追放された素戔嗚尊(すさのおのみこと)は川の上流から箸が流れてきたのを見つけ、「人が住んでいるのだな」と思います。そうして訪ねて行った先で、伴侶となる奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)と出会うのですが、その箸を見つけたとされている付近は現在、八俣大蛇(やまたのおろち)公園となっています。また、そばには「願い橋」という新たな観光スポットがあり、注目を集めています。
その他、ヤマタノオロチがすんでいたと伝える天が淵(あまがふち)、オロチを酔わせるための酒を造った釜跡と伝える御室山(みむろやま)の釜石。また、素戔嗚尊が奇稲田姫命と暮らすために造ったという「日本初乃宮」なる須我神社などなど。市内をまわれば、素戔嗚尊とヤマタノオロチの闘いが「現実にあった」としか思えないほどです。
県庁所在地である松江は、松江城や玉造温泉、小泉八雲ゆかりの場所など、既に人気観光地ですが、魅力的なスポットはまだまだ隠れています。神社で挙げるとするならば、「神在月、出雲大社へ向かう前に神様が集う」といわれている神魂(かもす)神社。出雲大社とともに、古来「出雲国三大社」のひとつとされてきた佐太神社。出雲大社と対となり、「出雲だけでは片詣り」といわれる美保神社。
また、茶の湯を広め、粋人としても名高い出雲松江藩主、松平不昧公(ふまいこう)のおかげで、松江は歴史ある和菓子の宝庫でもあります。その他、「出雲そばの店は断トツで松江に多い」など、グルメな話題にも事欠きません。
そして、今年9月に「世界ジオパーク」に認定されたばかりの旬な観光地、隠岐諸島にも、ぜひとも足を延ばしてみたいもの。日本海形成の痕跡を今なお残すといわれ、ダイナミックな断崖や巨岩・奇岩が広がる景観は感動的です。
さらには美食も魅力。隠岐ならではのとれたて新鮮魚介類が訪れる人の舌を唸らせます。なかでも海藻類は種類も多く、食感・味わいなど「これまで自分が食べてきたものは何だったのか?」と思うほど。
既に高い人気を誇る、島根の冬の三大味覚「松葉ガニ」「寒ブリ」「しまね和牛」もこれからの時期、島根県内のホテル、飲食店で盛大に供されます。
……と、出雲大社から東だけで、このボリューム。「日本で47番目に有名な県」などと自虐的なPRも話題になりましたが、南下すれば、世界遺産・石見(いわみ)銀山や小京都・津和野、「どんちっち」と呼ばれる魚介が人気の浜田など、見どころは数知れず。あらためて島根県は広く、深いのです。
写真協力=雲南市商工会、喫茶きはる、島根県観光協会、
島根県立古代出雲歴史博物館、松江市観光協会、マリンポートホテル海士
※掲載されているデータは、2013年10月現在のものです。
※イベントや催事等は変更される場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。
文= 秦 まゆな (はた・まゆな)
PROFILE
日本文化コンシェルジュ、文筆家。歴史と伝統文化に裏打ちされた、真の日本の楽しみ方を提唱すべく、日本全国を駆け回り中。その土地ならではの食、酒、温泉、祭りが大好物。
著書『日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々』(マイナビ) 。
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