01/12
GOURMET
安倍川餅
かつて安倍川上流には金山があり、江戸幕府の御用金山として金の採掘が行われていた。その検分にやってきた家康に、黄な粉を砂金に見立ててまぶした餅を「金粉餅」として献上したところ、家康自ら「安倍川餅」と命名したという。
明治初期には8軒ほどあったという安倍川餅を出す茶屋も、現在は「石部屋(せきべや)」(静岡市葵区)ただ1軒。15代目当主がその味を守る。安倍川餅1皿600円。
※2014年4月1日以降の価格です。
02/12
地元でとれた自然薯(じねんじょ)を旅人に振るまったのがいつしか丸子宿の名物に。峠の難所として知られる宇津ノ谷を目前に精をつける意味合いもあったという。
とろろ汁定食1,440円~の他、揚げとろ900円、切りとろ490円など、さまざまな自然薯料理を堪能できる。
※2014年4月1日以降の価格です。
03/12
OLD TOWN
宇津ノ谷
丸子宿を過ぎると、宇津ノ谷(うつのや)峠の手前の集落に出る。
名物の十団子(とうだんご)は、この地にあった梅林院という寺の小僧が旅人を食べる鬼になってしまったところ、旅僧により小さな玉に変えられ、10の粒に砕かれて退治されたという伝説にちなんだもの。慶龍寺の縁日で売られるほか、現在では豊臣秀吉ゆかりの「お羽織屋」でも販売。
04/12
WORLD HERITAGE
三保松原
約7kmの海岸線に、3万本以上の松並木が続く、日本三大松原のひとつ。三穂津彦命(みほつひこのみこと)と三穂津姫命(みほつひめのみこと)を祀る御穂(みほ)神社から、「羽衣伝説」を伝える羽衣の松までの並木道は「神の道」と呼ばれる美しい道。
05/12
MOUNTAIN PASS
薩た峠
由比宿と興津宿をつなぐ街道は海沿いにあり、波にさらわれるなど危険な道であったため、薩た峠に安全な峠道を開いたという。とはいえ、崖上の道。富士山を望む景色は美しいが、命がけの道であったことを示すように、広重の浮世絵に描かれる旅人は少々へっぴり腰をして、富士山を拝んでいる。
ページ上部のタイトル部分写真は、現在の薩た峠。
06/12
GOURMET
桜エビ
由比、蒲原で3月中旬~6月初旬、旬を迎えるのが桜エビの春漁。蒲原の富士川沿いの河川敷では、干した桜エビで一面がピンクに染まる。どんぶり、かき揚げなど、ぜいたくに楽しみたい。
07/12
清水エスパルスなどにちなんだ「清水サッカーショップ」や「ちびまる子ちゃんランド」、「清水すしミュージアム」に「駿河みやげ横丁」など、清水名物が一堂に会するエンタテインメント型複合商業施設。「清水すし横丁」には8店の寿司屋が並び、港直送のネタを存分に味わえる。
08/12
駿河国総社として、古く朝廷・武家からの崇敬が厚い。元服式を行った家康はその後、幕府の祈願所と定め、厚く庇護した。写真の大拝殿は、「浅間造り」とも呼ばれる、高さ約25mにもなる三層二階建て楼閣造り。一見の価値あり。
9/12
遺言どおり家康の遺体は久能山に埋葬され、その地に1年7カ月を要して、久能山東照宮が造営された。当時最高の建築技術が結集した社殿は「権現(ごんげん)造り」と呼ばれ、その後の寺社建築に多大な影響を与えた。2010年、国宝に認定。
10/12
明治28年(1895)、現在の静岡市葵区に生まれた芹沢銈介は型染めを中心とした染色の道を進み、のち人間国宝に認定された。没後30年記念となる今年は『ふるさとへの思い ―芹沢銈介の日本―』展を開催中(~5月11日)。日本の風景を愛し、モチーフとした芹沢の思いが伝わる作品を多数展示している。
美術館は弥生時代の登呂遺跡がある公園の一隅にあり、芹沢が過ごした東京・蒲田の家も移築されている(日・祝のみ公開。8月のみ土も公開)
写真:芹沢銈介作『型染小品集第二』(1955)より「富士の日の出」
11/12
地場産業として、戦前の木製模型時代からの歴史を誇る静岡の模型。「タミヤ」「ハセガワ」をはじめ、全国シェアの大半を占めている。その模型をより広く楽しんでほしいと、各社最新モデルなどの展示やイベントコーナーなどを備えた施設として、静岡駅前に2011年に誕生。模型ファンの聖地となっている。
12/12
SHINKANSEN
東海道新幹線
静岡駅へは、東京方面から東海道新幹線「こだま」で約1時間半(静岡に停車する一部の「ひかり」で約1時間)。グループで旅するなら、回数券を活用しておトクに利用したい。
※自動表示のほか、スライド左右にマウスを置くと表示する矢印をクリックすると前後の画像へ移動します。
歌川広重(1797〜1858)の浮世絵『東海道五十三次』、弥次さん喜多さんの珍道中、『東海道中膝栗毛』などで知られる東海道。起点のお江戸日本橋から京都・三条、大阪をつなぐ街道を「一度は歩いてみたい!」と思いつつも、踏破するのはなかなか厳しい……。そんな方におすすめしたいのがこれからの時期の静岡、1番目の品川宿から数えて15番目の蒲原(かんばら)宿~20番目の丸子(まりこ。鞠子とも書く)宿の辺りです。
JR静岡駅周辺は、19番目の府中宿に当たります。東海道を整備した徳川家康が子供時代と晩年を過ごした地であり、『東海道中膝栗毛』の作者、十返舎一九(1765〜1831)の生誕地でもあるという、東海道とはなかなか縁の深い地といえます。
この府中宿から西に進み、丸子宿へと至る道のりは、東海道屈指のグルメエリア。まず登場するのは、全国的にも有名な安倍川餅です。弥次さん喜多さんが肩車に乗って渡った安倍川の渡し場には、文化元年(1804)創業の「石部屋(せきべや)」があり、多くの旅人が舌鼓を打った味を今に伝えています。
そして丸子宿の名物と言えば、とろろ汁。広重の浮世絵にも「名物 とろろ汁」と看板を出した店が描かれていますが、「元祖 丁子屋」の創業は広重の時代よりも250年ほど遡った慶長元年(1596)。その浮世絵さながらの佇まいの中で、とろろ汁を味わえば、旅人気分が盛り上がること間違いなしです。
その先、バス停のある宇津ノ谷(うつのや)まで進むと、この地の伝説に由来する「十団子(とおだんご)」がお待ちかね。色とりどりの10種の団子は目を楽しませてくれます。
一転、府中宿から東は、世界遺産にも登録された「三保松原」はじめ、富士山の絶景を楽しめるポイント尽くし。17番目となる興津(おきつ)宿から薩(さっ)た峠を越えた由比宿(16番目)、蒲原宿(15番目)は、この時期、駿河湾を代表する名物・桜エビが旬を迎えています。
駿河の海の幸を手軽に満喫したいなら、清水港のエスパルスドリームプラザへ。個性的な寿司店が軒を連ねる「清水すし横丁」では「春の清水 まぐろまつり」も開催中(2014年3月15日~4月6日)です。
静岡市の中心部に当たる、JR静岡駅周辺はその昔、駿河国の国府があった場所。そのため「駿府」または「府中」と呼ばれるようになったといいます。
子の秀忠に将軍職を譲り、この地に隠居してきた家康が全国の大名に命じて建てた駿府城は、築城まもない江戸初期に焼失し、現在は駿府公園となっています。静岡駅から駿府公園一帯の地図を見ると、ここが駿府城を中心に造られた城下町であることが一目瞭然。道が整然と区画された様は、家康という人が都市づくりの天才であったことを改めて知らせているようです。
駿府公園の近くにある静岡浅間(せんげん)神社は、幼少期に今川氏のもとに人質となっていた家康が元服式を行った社。駿河湾側へ南下すれば、己の死を悟った家康が「久能山に埋葬すべし」との遺命を残したことから建てられた久能山東照宮があります。ここにきて思いが及ぶのは、家康が残した功績の大きさ。弥次喜多のような庶民が旅を楽しめたのも、街道が整備されていればこそ、そして徳川三百年、泰平の世であればこそ。
現代に目を移せば、人間国宝である染色家・芹沢銈介(けいすけ 1895~1984)の美術館があったり、「タミヤ」や「ハセガワ」(焼津市)など、世界中にファンをもつ模型メーカーが集まった“模型の世界首都”という顔ももつ静岡。弥次喜多が1週間かけた道程も、今では東海道新幹線「こだま」で東京〜静岡間は1時間半ほどのお気軽さ。春の風に誘われ、ふらりと訪れてみたいものです。
写真協力:
久能山東照宮、静岡観光コンベンション協会、静岡市観光・シティプロモーション課、
静岡浅間神社、石部屋、静岡ホビースクエア、静岡市立芹沢銈介美術館、裏辺研究所
※掲載されているデータは、2014年3月現在のものです。
※イベントや催事等は変更される場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。
文= 秦 まゆな (はた・まゆな)
PROFILE
日本文化コンシェルジュ、文筆家。歴史と伝統文化に裏打ちされた、真の日本の楽しみ方を提唱すべく、日本全国を駆け回り中。その土地ならではの食、酒、温泉、祭りが大好物。
著書『日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々』(マイナビ)。
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