01/12
傘松公園の展望台から望む、天橋立が昇り龍のように見える「昇龍観」。股の間からのぞき、天地が逆の風景を楽しむ「股のぞき」発祥の地でもある。例年6月中旬頃には、展望台までのケーブルカーからアジサイも楽しめる。
02/12
「天と地を往来する神様の通い道が海に落ちたため、龍神がひと晩で土を盛ってつくり上げた」という伝説も残る天橋立。その中ほどにある天橋立神社の手水は、贅沢なことに「昭和の名水百選」にも選ばれている「磯清水」(写真)。海に囲まれた場所から湧き出ているにもかかわらず、塩分を含まない不思議な清水だ。
03/12
丹後国一之宮。社殿は伊勢神宮と同じ唯一神明造。社殿を囲む高欄に施された五色の座玉(すえたま。青、黄、赤、白、黒の五色)は伊勢神宮と元伊勢 籠神社にしか許されておらず、社格の高さを物語っている。
奥宮の真名井(まない)神社は、主祭神の彦火明命(ひこほあかりのみこと)が天降られたとき、豊受大御神(とようけのおおみかみ)を最初に祀った場所と伝わる。
04/12
古墳時代前期(4世紀後半)に多くの古墳が造られた丹後半島。この神明山古墳は、蛭子山(えびすやま)古墳、網野銚子山(あみのちょうしやま)古墳と並ぶ「丹後三大古墳」と呼ばれる。
神明山古墳の近くには、第9代・開化天皇に嫁いだ竹野媛(たかのひめ)が晩年、郷里に戻り、天照大御神を祀ったと伝わる竹野(たかの)神社がある。
『古事記』によると、竹野媛の孫の娘は「迦具夜比売命(かぐやひめのみこと)」とあり、第11代・垂仁天皇に嫁いだという。
05/12
洞爺湖有珠山(北海道)、糸魚川(新潟県)、島原半島(長崎県)につづく、国内4例目に「世界ジオパークネットワーク」に認定された「山陰海岸ジオパーク」。
丹後立岩は、周囲約1km、高さ約20mにもなる玄武岩の巨岩。第31代・用明天皇の第三皇子の麻呂子親王がこの地で鬼を退治し、この立岩に封じ込めたとの伝説が残る。
用明天皇といえば、聖徳太子の父。この地は太子の母である間人(はしひと)皇后が天皇崩御の後、身を寄せたと伝えられ、立岩のそばには間人皇后と太子の母子像が立つ。
06/12
海に面して230軒以上もの舟屋が建ち並ぶ伊根町。1階は舟の格納庫、2階部分は二次的な住居という形態をもつ舟屋集落は江戸時代の記録にもその姿を残す。現在の木造2階建てとなったのは昭和に入ってからというが、潮の干満の差が少ないこと、急激に深い海となっていることなどの条件が幸いし、伊根町独特の風景となっている。宿として営業している施設もある。
1993年には、NHK朝の連続テレビ小説『ええにょぼ』の舞台にもなった。
07/12
奈良時代、高僧の行基が発見したと伝えられる温泉。京都府内で最古といわれるその湯は、今も湧き続けている。
源泉かけ流し100%が堪能できる「丹後の湯宿 ゑびすや」は、松本清張が『Dの複合』を執筆した宿としても有名。大正ロマンの落ち着いた空間で、極上の湯と、丹後の海の幸を味わいたい。
基本プラン平日1泊2食(2名1室)1名、1万3650円~
08/12
奈良時代初期に編纂された『丹後国風土記』。現在は散逸し、『釋(しゃく)日本紀』などに引用された部分しか残っていないが、その中のひとつに『浦島説話』がある。
丹後三大古墳のひとつである網野銚子山(あみのちょうしやま)古墳近く、海岸沿いにある嶋児神社は、『丹後国風土記』に登場する水江浦嶋子(みずのえのうらしまのこ)を祀った神社。水江浦嶋子とは、風土記に伝わる浦島太郎の名。
9/12
『丹後国風土記』には羽衣を隠されてしまった天女にまつわる伝説も見られる。京丹後市の磯砂山(いさなごさん)に鎮座する乙女神社は、その伝説を伝える神社。近くには、天女が水浴びをしていたとされる女池(めいけ)も残る。
10/12
丹後の織物といえば「丹後ちりめん」。与謝郡与謝野町の「ちりめん街道」は歴史的建造物の宝庫で、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。
しかし、それよりも遥か以前、縄文時代から人々が身にまとっていたのが藤の繊維を織り上げた藤布。
遊絲舎では、化学薬品などを使わない昔ながらの製法で、今も藤布を織り上げている。藤布しおり織り(800円)、繊維を分離させる灰汁(あく)炊き+はた織り(3000円)などの体験もできる(要事前問合せ)。
TEL.0772-72-2677(受付時間10:00~16:00)
11/12
丹後では2年近くかけてトリ貝を生育するため、大型の天然トリ貝が漁獲できる。しかし、年によって豊凶の差が激しく、全く獲れないこともあったため、京都府が育成に着手。2008年、「丹後とり貝」は「京のブランド産品」として認定された。大きさ、厚みに目を見張るトリ貝は、歯ごたえ、甘みも格別。
12/12
2013年2月にデビューした東海道・山陽新幹線N700A「のぞみ」。安定した強いブレーキ力を実現した「ブレーキディスク」や台車のわずかな故障も検知する「台車振動検知システム」などを兼ね備え、安全性・安定性をより一層“Advanced”させた最新の新幹線。
東京から京都方面へ向かうなら、次はN700A「のぞみ」で。
※自動表示のほか、スライド左右にマウスを置くと表示される矢印をクリックすると前後の画像へ移動します。
丹後半島といえば、天橋立。陸奥の松島(宮城県)、安芸の宮島(広島県)とともに「日本三景」として名高い特別名勝です。長い年月をかけて運ばれた砂礫(されき)が堆積して現れた砂浜は、全長約3.6km。およそ8000本もの松が並木をつくる海を分かつ道は、北は傘松公園、南は天橋立ビューランドから見事な眺望が楽しめます。
天橋立ビューランドから見る天橋立は、天に舞い上がる龍のように見えることから「飛龍観(ひりゅうかん)」、傘松公園からは昇り龍のように見えることから「昇龍観(しょうりゅうかん)」と呼ばれます。眺めるだけでなく、歩いて渡ることができるのもうれしいところ。途中には八大龍王をお祀りする天橋立神社があり、龍伝説が残るこの地の、龍との深い関係を感じさせます。
天橋立を北へと渡り切ると、鎮座しているのは元伊勢 籠(この)神社。天照大御神(あまてらすおおみかみ)が現在の伊勢神宮内宮(ないくう)に鎮座する前、お祀りされていたのがこの地。そして奥宮にお祀りされていた豊受大御神(とようけのおおみかみ)が、天照大御神のお告げにより、現在の伊勢神宮外宮(げくう)に遷(うつ)されたことから、「元伊勢」と呼ばれます。
元伊勢籠神社の主祭神は、彦火明命(ひこほあかりのみこと)。天照大御神の孫神である邇邇芸命(ににぎのみこと)が、天照大御神の御魂である鏡をはじめとした三種の神器とともに地上に天降(あまくだ)られたように、彦火明命は豊受大御神の御魂である鏡とともに丹後に天降られ、豊受大御神を祀ったと伝わります。
古伝には、邇邇芸命の兄神であることしか記されていない彦火明命ですが、天照御魂神(あまてるみたまのかみ)、天照国照彦天火明櫛玉饒速日命(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)など、いかにも重要そうな別名が多数あり、その正体についてもさまざまな説が噴出している謎の神様です。「丹後、丹波から大和までを開拓し、君臨した」という説もあり、初代・神武天皇が即位する以前より、ここ丹後を中心とした一大勢力が存在していたのではないか。そんな、多くの古代史ファンの胸を高鳴らせる「丹後王国論」を立証するように、大和に大型古墳が造られるより先に、ここ丹後に神明山(しんめいやま)古墳などの大型古墳が造られたともいわれています。
なぜ、この地がそれほどの力を得られたのか? その理由のひとつには、日本海に面している地の利が挙げられます。弥生時代には海を越え、大陸からの新しい文化が伝わってきました。また丹後の「丹」という字は古来、水銀の原料となる朱砂(しゅしゃ)を表すもの。一説には、朱砂で富を得たのではないかとも考えられています。
歴史を見つめてきた丹後半島より以西の日本海に面した地域は「地形・地質の博物館」と呼ばれるほど変化に富み、「山陰海岸ジオパーク」とよばれています。鬼退治伝説が残る丹後立岩といった巨岩や琴引浜の鳴き砂など、見どころが満載です。
時代が下り、江戸時代になると、丹後半島の与謝郡伊根町は北前船の寄港地としても栄えました。海との密接な暮らしを物語るように、伊根町には海に面して230軒以上もの舟屋が建ち並び、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。
京都府最古の温泉である木津温泉、浦島太郎伝説を伝える嶋児(しまこ)神社、羽衣伝説を伝える乙女神社、さらに前述の神明山古墳はかぐや姫とのゆかりも語られるなど、単に歴史が古いだけでなく、日本建国の根幹をなす謎を秘めていると思わせる丹後半島。縄文時代より人々が身にまとっていたといわれる藤布(ふじふ)。この布が現在も織られているのはこの地だけ、ということも偶然ではないのかもしれません。
これからの時期は、一般のトリ貝の倍以上もの大きさと厚みを誇るブランド貝「丹後とり貝」や岩ガキが旬。あふれる海の恵みとともに、丹後半島の魅力を味わい尽くしに行きましょう。
写真協力: 天橋立観光協会、京丹後市観光協会、京都府漁業協同組合、遊絲舎、ゑびすや
※掲載されているデータは、2014年6月現在のものです。
※イベントや催事等は変更される場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。
文= 秦 まゆな(はた・まゆな)
PROFILE
日本文化コンシェルジュ、文筆家。歴史と伝統文化に裏打ちされた、真の日本の楽しみ方を提唱すべく、日本全国を駆け回り中。その土地ならではの食、酒、温泉、祭りが大好物。
著書『日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々』(マイナビ)。
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