平成23年3月14日、名古屋市港区金城ふ頭に「リニア・鉄道館」がオープンした。東海道新幹線や山梨リニア実験線を有するJR東海が運営する鉄道展示館として、館内では鉄道高速化の変遷を中心に、実物車両と各種展示物などによる多彩な展示を楽しむことができる。さっそく館内へご案内しよう。
狭軌のSLでは世界最高速度を記録した
C62形式17号機
700系やN700系へとつながる
貴重な試験データを提供した300X
超流線型の車体が特徴の超電導リニア
MLX01-1は581km/hを達成
エントランスを抜けると、C62形式蒸気機関車、955形式新幹線試験電車、超電導リニアMLX01-1の3両が展示されたシンボル展示が来館者を迎えてくれる。これらの3両は、狭軌鉄道の蒸気機関車、新幹線、超電導リニアのそれぞれの分野で、世界最高速度を記録した記念すべき車両たちだ。
C62形式蒸気機関車「C62 17」は、優等旅客列車牽引用として製造された日本で最大・最速の蒸気機関車で、昭和29年に東海道本線の木曽川橋梁で129km/hの速度記録を達成。これは狭軌鉄道における蒸気機関車の世界最高速度記録だ。
955形新幹線試験電車「955-6」は、「300X」と呼ばれるJR東海が製作した高速化試験車両で、平成8年に電車方式の車両では、当時世界最速となる443km/hを記録。その後の新幹線車両開発に多大な技術的貢献を果たしている。
超電導リニア「MLX01-1」は、車体を浮上させて走行する山梨実験線用の車両。ダブルカスプ形と呼ばれる超流線型の先頭形状が特徴のマグレブ車両で、平成15年に鉄道による世界最高速度記録となる581km/hを達成した。
鉄道高速化の歴史を築いてきた
名車両たちが並ぶ車両展示エリア
メイン展示エリアとなる車両展示エリアでは、0系、100系、300系と、まさに新幹線の歴史を築いてきた名車両たちがずらりと並び、“ドクターイエロー”の愛称でおなじみの新幹線電気軌道総合試験車も展示。時速220kmの食事が楽しめた100系の2階建て食堂車も懐かしい。
一方、在来線車両の展示では、日本で初めての振子制御式車両として特急「しなの号」などで活躍したクハ381形式電車、都市圏の近郊型電車のスタンダードとして君臨したクハ111形式電車、特急「ひだ号」として山深い高山本線を力走したキハ181形式気動車などの比較的最近の車両のほか、モハ1形式電車、クモハ12形式電車など大正~昭和初期に活躍した旧型電車も展示。美しい流線型をひっさげて京阪神の急行電車としてスピードアップに貢献したモハ52形式も見逃せない。
さらに、ED11形式、ED18形式などの電化黎明期の輸入電気機関車や、C57形式蒸気機関車、絶大な人気を誇る“ゴハチ”ことEF58形式電気機関車、客車と蒸気機関車が合体したような珍しい蒸気動車なども展示されている。
展示エリアには、余計な装飾などもなく、まるで車両基地をタイムトラベルしているかのような雰囲気を味わえるのも魅力的だ。
新幹線車両は0系から
300系までが勢揃い
新幹線線の栄光の歴史の
出発点となった0系
0系タイプの“ドクター
イエロー”も懐かしい
日本で初めての
振子式電車となったクハ381形式
鉄道愛好家からも
絶大な人気を誇るEF58形式
車内にボイラーがある
ホジ6005形式蒸気動車
独特の流線型が印象的な
モハ52形式電車
迫力の前面展望シーンが楽しめる
新幹線シミュレータ「N700」
運転台は本物とまったく同じだ!
N700系新幹線の実物大の運転台を使用して、あこがれの新幹線の運転を体験! リアルなCG風景を見ながら、3段階の難易度の運転操作が楽しめる(料金500円/約15分間)。
在来線の運転シミュレータは
211系と313系の2タイプ
実物大の313系乗務員室で
ドア扱いなどを体験できる車掌
シミュレータは日本でここだけ!
211系タイプの2ハンドル仕様と313系タイプのワンハンドル仕様の運転台を4台ずつ設置。前方映像はCGと実写があり、難易度は3段階。見習い編ではガイダンス機能もあるので、初めての人でも安心だ(料金100円/約10分間)。
また、日本の鉄道展示施設では初お目見えの車掌シミュレータにも注目したい。このシミュレータでは、停車時のドア扱いや、駅間での車内放送を体験。実際の車掌業務を3段階の難易度によって知ることができる(料金500円/約15分)。
東京~大阪の東海道新幹線沿線の
風景を再現したジオラマ
まるで本物のような精緻な風景は必見!
ジオラマ内には表情豊かな
2万5000体のフィギュアも
約220m2もの面積を誇る日本最大級の鉄道模型ジオラマ。JRセントラルタワーズがそびえる名古屋駅や東海道新幹線の沿線などが再現され、リニア、新幹線、在来線の約400両もの車両が走り回る。
「鉄道の24時間」を20分間で演出しており、夜間作業の様子も見ることができる。
用途的にも珍しい車両が
数多く並ぶ収蔵車両エリア
381系パノラマ車両や
急行型165系などの懐かしい姿も
車両展示エリアの奥には、新幹線から在来線の電車、客車まで、それぞれの時代を代表する13両の実物車両が並んだ収蔵車両のエリアがある。
ここに展示された車両は、技術的や用途的に特徴のある車両たちで、車内に入ることはできないが、外観を見学することができる。
超電導リニアの開発の歴史が
一望できる展示室
実物車両の展示のほかにも館内には、鉄道の仕組みなどを楽しく学べる展示がいっぱい。
「超電導リニア展示室」では、開発が進む磁気浮上式鉄道の原理や仕組みを、体験型も含めたさまざまな模型や展示パネルによってわかりやすく解説している。
新幹線に採用されているノーズ可動型分岐器やパンタグラフの動作の実際など、鉄道システムのさまざまな仕組みを知ることができる「鉄道のしくみコーナー」、新幹線の軌跡をはじめ、鉄道の歴史や技術を紹介する「映像シアター」、東海道本線の発展を中心に鉄道の歴史を振り返る「歴史展示室」なども見逃せない。
また、現存する最古の国産バスとなる国鉄バスの第1号車(1930年製造)や、屋外には“東海ライナー”に使用された117系電車と軽便蒸気機関車も展示。館内には飲食コーナーも2カ所設けられている。
リニアの仕組みがよくわかる
体験型の展示物も多い
磁極の切替で推進する
仕組みを模型で再現
東海道本線を中心とした鉄道の歴史が総覧できる歴史展示室
屋外には117系電車なども
展示されている